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38.女の花道?①

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誕生から50年経っての待ちに待ったララルーアの㊗変化をひとしきりに喜んだマオは、『父上と母上にも早く知らせなくては』と急いで部屋を出て行こうとした。そんな兄の服の裾を掴みララは慌てて引き留める。

「待って、お兄様。私の相談はまだ終わってないわ、まだ聞いて欲しいことがあるのよ」
「ああ、ごめんな。ララの変化が嬉し過ぎて浮かれてしまった。まだ何かあるなら聞くぞ」

マオがララの方を向いて『さあ、お姫様続きをどうぞ』とウィンクをすると、ララも『では遠慮なく、ホッホッホ』と近くにあった扇を口の前で広げてお姫様ポーズで話し出す。
別にこれはお姫様ポーズではないが、華奢な美少女がやると不思議とお姫様に見えてしまうものである。

「初恋は実らないと世間では言われているけど、私はぜひ実らせたいの!」
「そうか、いいんじゃないか。ララはこんなに可愛いから告白したらあの馬鹿王子はすぐにOKすると思うぞ」
「いいえ、お兄様それでは駄目です!私から絶対に告白はしません。『女は思われてなんぼ、男を手玉に取ってこそ女の花道』なんですから。私もそれでいきます!」
「………」
(誰だララに変な事を吹き込んだ奴は…)

ララの間違った認識を聞きマオは眩暈がしてきたが、『これはララのせいではない、お喋りな侍女達が変な事を吹き込んだのだろう』と考え、まずは男女の恋愛の正しい知識を教えることにした。

「ララ、それは誰が言ったのかな?ちょっと個性的な意見だけど」
「お母様ですよ。私が小さい頃からしっかりと教えてくれの♪それに【恋愛のバイブル これで貴女も一流の女】も貰ってるので完璧よ」
「………」
(母上なにをララに教えてたのですかっ!)

マオは笑顔で額に青筋をたてるという器用な芸当を見せ、ララから【恋愛のバイブル】なる本を受け取りパラパラと中を確認してみる。

『男に告るな、告らせろ』
『男は跪かせてなんぼ…』
『いい男は育てて愛でて貢がせる』etc.
そこに書かれてあったのは恋愛指南ではなく、お水の花道指南であった。これを読んでいるのならララの恋愛知識は偏っているのではなく完全に間違っている…。そのうえ、実母のから直接的な教えがあったのなら矯正は難しいだろう。

(どうする、間違っていると言ってララは納得するか…。母上を尊敬しているから素直に聞かないだろうな。まったく母上はなんでこんな間違った事をララに教えていたんだ。これには何か深い意味があるのか…?)

マオがどうするべきか真剣に悩んでいるが無駄な事だった、母ミアの教えに深い意味など存在しないのだから。母もそのまた母からそのように教わっており、代々女の子に個性的な教育を施すちょっと残念な家系だっただけだ…。
『結構ミアは肉食女子なんだぞ、知らなかったか。ハッハッハ』byサイガ


やる気満々の可愛い妹を見て、『はぁ~』とため息を吐きマオは諦めることにした。こういう時のララは決して引かないのを50年間一緒に育っているので知っているからだ。

「ふー…、分かった。じゃあ王子が跪いてララに愛の告白をする作戦を一緒に考えようか」
「はい!私、頑張るもん。真の女王になって愛を貢がせるわ♪」

やる気とトカを好きな気持ちは認めるが、完璧に間違っていることだけは確かだった。

『もう仕方がないじゃん、母上仕込みなんだから…』byマオ


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