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37.ララ悩む
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初デートは散々な結果で終了した。最初は可愛い洋服を山ほど買ってもらいルンルン気分で食べ歩きを楽しんでいたが、あの団子事件後からララは泣き止むことはなかった。なぜララが泣いているか分からないトカタオは途方に暮れるだけで役に立たず、にんにんから『乙女心の分からない駄目な奴!』とジェスチャー付きで駄目だしされる始末だった。
そしてララは王宮に帰るなり自分の部屋に閉じ籠ってしまった。専属侍女のドウリアや相棒のにんにんさえ部屋から出されてしまい、部屋の扉には【デレデレトカタオ絶対入室禁止!】という張り紙までつけられていた。
トカタオをはじめドウリア達は扉の前で入ることも出来ずにどうしたものかと考えていると、みんなを掻き分け扉の前に立ちノックをする者が現れた。
コンコンコン。
「俺の可愛いララルーア。まだ起きているんだろ、開けてくれ。たまには寝顔以外を見せておくれよ」
そのセリフを聞いたトカタオは『なんだこの馴れ馴れしい男は!ララはお前のララではない』とノックをしている赤毛赤目の竜人を睨みつけた。だがその顔はどこかで見たことのあるような顔だった。ドウリアが小声で『あの方はミファン家の長男のマオ様で、ララ様の兄上でございます』と言った。
確かにその優し気で整った顔立ちは人型になったララによく似ている、ララが人型になった自分の顔を女装した兄と間違えたのも納得できるほどだった。
(こいつがララと一緒に王宮に来たという兄か。ララに似ているが、なんだかいけ好かない奴だ。兄だろうと入室出来んぞ、ふんっ)
トカタオはララの兄であるマオに対してライバル心むき出しの態度を取って睨みつけ、マオもそれに気づきながら完璧に王子の存在を無視している。
ギッギーー。
ララの部屋の扉が少しだけ開き、【お兄様だけ入室フリー】という紙がその隙間から差し出されてきた。それを満面の笑みで受け取ったマオは、崩れ落ちているトカタオの方を見てフンッと鼻で笑ってからララの部屋へと入っていった。
部屋の中にいるララは竜体に戻っているが泣きはらした目は真っ赤になっていて、久しぶりに会えた起きているララの悲惨な様子にマオは怒りを覚えた。
「ララ、俺の可愛い妹。こんなにララを悲しませたのは誰なんだ。教えてくれ!そしたらちゃんとお兄様がそいつを殺るからね、安心しろ」
ララを優しく抱き締めながら、マオは笑顔で物騒なことをさらりと言っている。拗らせたシスコンには善悪の区別はつかないらしい。
『ララが正義だ!世界の中心だ』byマオ
「あのねお兄様、相談があるの。聞いてくれる?」
「もちろんだよ。ララの悩みはお兄様が全部解決してやるから、なんでも言ってごらん」
「うん、有り難う。私もよく分からないんだけど最近変なの。トカといるとドキドキしたり、イライラしたり、嬉しくなったり、悲しくなったり、気持ちがぐちゃぐちゃになってしまうの。今日は一緒に出掛けたんだけど、途中で女性に囲まれてトカが私を見てくれなかったの、そしたらなぜか涙が止まらなくてこんな風になっちゃったの。私どうしたのかな…」
マオはララの話をうんうんと相槌を打ちながら黙って最後まで聞き、『頑張ったね』と言いながらララの頭を優しく何度も撫でる。ララが落ち着いたのを感じるとマオは優しい口調でララに話し出した。
「きっとそれは恋だよ。ララは王子に恋しているんだね」
「えっ、でも私はまだフェロモンも出していないし『番』のフェロモンを感じ取ることも出来ないよ」
ララは即座に否定する。卵の時は竜力が強くトカタオに何かを感じることができたが、今はそんなことはないからだ。
「うん、ララはまだ竜力が弱く幼いから『番』を認識出来ないし、相手に認識させることはないね。だからこそ恋なんだよ。『番』なんて関係なく、ただ単にララルーアが王子を好きになっただけだ」
「………」
「どうしたのララ。混乱させちゃったかな」
「私、これからどうすればいいのかな。『番』のトカタオなんて認めないって思ってたのに…」
ララは自分の気持ちをマオに指摘され戸惑っていた。あれほど『番』としてのトカタオを毛嫌いしていたので、自分から好きになるなんて信じられなかった。けれども『あの気持ちが恋というものなんだな』と納得できる思いもあった。
「俺はララを苦しめた奴なんて可愛い妹の『番』として認める気はさらさらない!」
マオがきっぱりと言い切り、なんならすぐにでも殺るぞという顔をしている。
「やっぱりお兄様もそう思っているよね…。私の恋は祝福されないよね…」
「そんなことはないよ、ララ。アイツが一方的に『番』と認識して迫り、ララを苦しめるようなら迷うことなく俺は奴を殺るだろう。
だけどそうじゃなくてララが一人の男を好きになっているだけだろう。兄として可愛い妹の初恋を認めるのは正直なところ複雑だけど、俺はララが大切でいつでもお前の味方だ。だからララの恋を応援してあげるよ」
マオは優し気だけど眉間に皺を寄せた渋い表情でララルーアの気持ちを優先させると言ってくれた。
「お兄様~!大好き、有り難う♪」
「うん、俺もララが大好きだ」
ララは嬉しさのあまりギュッーとマオに抱きつきこれでもかと尻尾を豪快に揺らしている。ララを久しぶりに抱き締めて可愛いお肉をマオが堪能していると。
ポッポッーーーン!
マオの腕の中で閃光が走り抱き心地の良い竜体のララは消え、腕の中には華奢な美少女が真っ裸で登場していた。
「いや~ん、お兄様のエッチ」
ララは器用に足を使って近くにあったシーツを引き寄せて身体にくるくると巻き付けた。マオは腕の中で器用にシーツを体に巻いた美少女を凝視して、口をパクパクさせて何かを言おうとしている。
「なーに、お兄様。金魚の真似しているの?でも似てないよ、ぷっぷっぷ」
「ラ、ラ、ララルーアが変化したーー!」
「あれ、お兄様に言ってなかったけ?私今日から変化出来る様になったのよん♪凄いでしょ~う」
「ララルーア!そんな大切な事は最初に言ってくれーー!」
その通り、恋愛相談より人生初変化という大事件を先に報告するべきである。
『ごめーん。すっかり忘れてた、てへぺろ♪』byララ
そしてララは王宮に帰るなり自分の部屋に閉じ籠ってしまった。専属侍女のドウリアや相棒のにんにんさえ部屋から出されてしまい、部屋の扉には【デレデレトカタオ絶対入室禁止!】という張り紙までつけられていた。
トカタオをはじめドウリア達は扉の前で入ることも出来ずにどうしたものかと考えていると、みんなを掻き分け扉の前に立ちノックをする者が現れた。
コンコンコン。
「俺の可愛いララルーア。まだ起きているんだろ、開けてくれ。たまには寝顔以外を見せておくれよ」
そのセリフを聞いたトカタオは『なんだこの馴れ馴れしい男は!ララはお前のララではない』とノックをしている赤毛赤目の竜人を睨みつけた。だがその顔はどこかで見たことのあるような顔だった。ドウリアが小声で『あの方はミファン家の長男のマオ様で、ララ様の兄上でございます』と言った。
確かにその優し気で整った顔立ちは人型になったララによく似ている、ララが人型になった自分の顔を女装した兄と間違えたのも納得できるほどだった。
(こいつがララと一緒に王宮に来たという兄か。ララに似ているが、なんだかいけ好かない奴だ。兄だろうと入室出来んぞ、ふんっ)
トカタオはララの兄であるマオに対してライバル心むき出しの態度を取って睨みつけ、マオもそれに気づきながら完璧に王子の存在を無視している。
ギッギーー。
ララの部屋の扉が少しだけ開き、【お兄様だけ入室フリー】という紙がその隙間から差し出されてきた。それを満面の笑みで受け取ったマオは、崩れ落ちているトカタオの方を見てフンッと鼻で笑ってからララの部屋へと入っていった。
部屋の中にいるララは竜体に戻っているが泣きはらした目は真っ赤になっていて、久しぶりに会えた起きているララの悲惨な様子にマオは怒りを覚えた。
「ララ、俺の可愛い妹。こんなにララを悲しませたのは誰なんだ。教えてくれ!そしたらちゃんとお兄様がそいつを殺るからね、安心しろ」
ララを優しく抱き締めながら、マオは笑顔で物騒なことをさらりと言っている。拗らせたシスコンには善悪の区別はつかないらしい。
『ララが正義だ!世界の中心だ』byマオ
「あのねお兄様、相談があるの。聞いてくれる?」
「もちろんだよ。ララの悩みはお兄様が全部解決してやるから、なんでも言ってごらん」
「うん、有り難う。私もよく分からないんだけど最近変なの。トカといるとドキドキしたり、イライラしたり、嬉しくなったり、悲しくなったり、気持ちがぐちゃぐちゃになってしまうの。今日は一緒に出掛けたんだけど、途中で女性に囲まれてトカが私を見てくれなかったの、そしたらなぜか涙が止まらなくてこんな風になっちゃったの。私どうしたのかな…」
マオはララの話をうんうんと相槌を打ちながら黙って最後まで聞き、『頑張ったね』と言いながらララの頭を優しく何度も撫でる。ララが落ち着いたのを感じるとマオは優しい口調でララに話し出した。
「きっとそれは恋だよ。ララは王子に恋しているんだね」
「えっ、でも私はまだフェロモンも出していないし『番』のフェロモンを感じ取ることも出来ないよ」
ララは即座に否定する。卵の時は竜力が強くトカタオに何かを感じることができたが、今はそんなことはないからだ。
「うん、ララはまだ竜力が弱く幼いから『番』を認識出来ないし、相手に認識させることはないね。だからこそ恋なんだよ。『番』なんて関係なく、ただ単にララルーアが王子を好きになっただけだ」
「………」
「どうしたのララ。混乱させちゃったかな」
「私、これからどうすればいいのかな。『番』のトカタオなんて認めないって思ってたのに…」
ララは自分の気持ちをマオに指摘され戸惑っていた。あれほど『番』としてのトカタオを毛嫌いしていたので、自分から好きになるなんて信じられなかった。けれども『あの気持ちが恋というものなんだな』と納得できる思いもあった。
「俺はララを苦しめた奴なんて可愛い妹の『番』として認める気はさらさらない!」
マオがきっぱりと言い切り、なんならすぐにでも殺るぞという顔をしている。
「やっぱりお兄様もそう思っているよね…。私の恋は祝福されないよね…」
「そんなことはないよ、ララ。アイツが一方的に『番』と認識して迫り、ララを苦しめるようなら迷うことなく俺は奴を殺るだろう。
だけどそうじゃなくてララが一人の男を好きになっているだけだろう。兄として可愛い妹の初恋を認めるのは正直なところ複雑だけど、俺はララが大切でいつでもお前の味方だ。だからララの恋を応援してあげるよ」
マオは優し気だけど眉間に皺を寄せた渋い表情でララルーアの気持ちを優先させると言ってくれた。
「お兄様~!大好き、有り難う♪」
「うん、俺もララが大好きだ」
ララは嬉しさのあまりギュッーとマオに抱きつきこれでもかと尻尾を豪快に揺らしている。ララを久しぶりに抱き締めて可愛いお肉をマオが堪能していると。
ポッポッーーーン!
マオの腕の中で閃光が走り抱き心地の良い竜体のララは消え、腕の中には華奢な美少女が真っ裸で登場していた。
「いや~ん、お兄様のエッチ」
ララは器用に足を使って近くにあったシーツを引き寄せて身体にくるくると巻き付けた。マオは腕の中で器用にシーツを体に巻いた美少女を凝視して、口をパクパクさせて何かを言おうとしている。
「なーに、お兄様。金魚の真似しているの?でも似てないよ、ぷっぷっぷ」
「ラ、ラ、ララルーアが変化したーー!」
「あれ、お兄様に言ってなかったけ?私今日から変化出来る様になったのよん♪凄いでしょ~う」
「ララルーア!そんな大切な事は最初に言ってくれーー!」
その通り、恋愛相談より人生初変化という大事件を先に報告するべきである。
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