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21.王子観察~午後の部①~
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ララの部屋は午後の陽射しが水槽の表面を宝石のように輝かせ、なんとも幻想的な雰囲気になっている。その部屋にそぐわない表情をして『うーん』と唸っている二人がいた。
ララとにんにんは腕を組みながら眉間に皺を寄せて悩んでいる。二人の前にはドウリアが渡してくれた王子の予定表の午後の部が広げられていた。王子の詳細な予定にベスト観察スポットまで書き込まれているドウリア作の完璧な予定表を前に二人は考え込んでいるのである。
「ねぇ、やっぱりこれおかしいよね…」
「ウキ、ウッキー」
「にんにんもそう思うか。よし、一緒にドウリアに確認してみよう」
「私がどうかしましたか?」
「「ギャーー!!」」
真剣に悩んでいた二人はいつの間にか後ろにいたドウリアにびっくりして叫んでしまった。
「もう、驚かさないでよ。心臓が一瞬止まった~」
「ウッキッキイー、ウンキー」
「まぁそれは失礼しました。でも私は心肺蘇生法を学習済みなのでいつでも止まっても大丈夫ですよ」---そういう問題ではない!
危ない発言をさらりと言ってくるドウリアに二人は若干引いてしまっている。
「それでどうしたんですか。何かお困りでも?」
「実はこの午後の部のベスト観察スポットが間違っているみたいなの…」
ドウリアは先ほどララ達が見ていた予定表を『ちょっと拝借します』と手に取り再度確認してみる。
「これで合ってます。大丈夫ですよ」
「でも観察スポットが王子の半径五メートル以内っておかしいよ。丸見えじゃん。全然隠れられない!」
「ウッキーー!」
そうなぜかベスト観察スポットが観察対象の半径五メートル以内と指定されているのだ。つまり王子の側に張り付くことになる。見つからないように観察したいのにこれではこっそり観察は無理だ。
「王子の午後の予定はタイオン帝国騎士団での訓練です。我が国の騎士団は最強なので訓練も危険が伴います。そんな場所にララ様達が近づいたら危険です、でも安全圏まで離れると距離的に観察は難しくなります。だから騎士団の中で最も強い者の側にいて安全に観察に励むのが一番良いのです」
「でも、それじゃ王子にばれちゃうよ」
「大丈夫です『灯台下暗し』という諺もあります。案外自分の足元は注意してみないものです。それに王子はあれですからきっと観察に気づきません。それよりララ様達の安全第一です」
ドウリアがまた無茶苦茶なことを言ってくる。半径五メートル以内で観察されて気づかない者など絶対にいない、どんな馬鹿でも分かることである。ララとにんにんは騙されるものかと反論を試みる。
「でもさ、勝手に騎士団の訓練中に王子の側をウロチョロしたら駄目だよね?捕まっちゃうじゃない?」
「安心してください。騎士団の方にはすでに手を回してありますから咎められることは絶対にありません」
「キキウー、キッキー」
「大丈夫。サルの丸焼きは騎士達は食べませんよ、にんにんも安全です。ほら何の問題もありませんね?」
「「………」」
「観察にいってらっしゃいませ」
「う、うん。行ってきます…」
「ウ、ウキ。キキキウ…」
ララとにんにんはやはり丸め込まれてしまった…。スーパー侍女ドウリアにかかれば黒も白に、近くも見えないになってしまうのである。ドウリアには侍女よりもっと能力が発揮できる適職があるのではないだろうか、ぜひ転職をお勧めしたいものである。
たくさんの疑問と不安を胸いっぱいに溜めこんで、ララとにんにんは午後の観察に行くことになった。
(本当に大丈夫なのかな…)
とりあえず、王子観察午後の部出発ー!?
『…ウキッキー!?』
ララとにんにんは腕を組みながら眉間に皺を寄せて悩んでいる。二人の前にはドウリアが渡してくれた王子の予定表の午後の部が広げられていた。王子の詳細な予定にベスト観察スポットまで書き込まれているドウリア作の完璧な予定表を前に二人は考え込んでいるのである。
「ねぇ、やっぱりこれおかしいよね…」
「ウキ、ウッキー」
「にんにんもそう思うか。よし、一緒にドウリアに確認してみよう」
「私がどうかしましたか?」
「「ギャーー!!」」
真剣に悩んでいた二人はいつの間にか後ろにいたドウリアにびっくりして叫んでしまった。
「もう、驚かさないでよ。心臓が一瞬止まった~」
「ウッキッキイー、ウンキー」
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危ない発言をさらりと言ってくるドウリアに二人は若干引いてしまっている。
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「実はこの午後の部のベスト観察スポットが間違っているみたいなの…」
ドウリアは先ほどララ達が見ていた予定表を『ちょっと拝借します』と手に取り再度確認してみる。
「これで合ってます。大丈夫ですよ」
「でも観察スポットが王子の半径五メートル以内っておかしいよ。丸見えじゃん。全然隠れられない!」
「ウッキーー!」
そうなぜかベスト観察スポットが観察対象の半径五メートル以内と指定されているのだ。つまり王子の側に張り付くことになる。見つからないように観察したいのにこれではこっそり観察は無理だ。
「王子の午後の予定はタイオン帝国騎士団での訓練です。我が国の騎士団は最強なので訓練も危険が伴います。そんな場所にララ様達が近づいたら危険です、でも安全圏まで離れると距離的に観察は難しくなります。だから騎士団の中で最も強い者の側にいて安全に観察に励むのが一番良いのです」
「でも、それじゃ王子にばれちゃうよ」
「大丈夫です『灯台下暗し』という諺もあります。案外自分の足元は注意してみないものです。それに王子はあれですからきっと観察に気づきません。それよりララ様達の安全第一です」
ドウリアがまた無茶苦茶なことを言ってくる。半径五メートル以内で観察されて気づかない者など絶対にいない、どんな馬鹿でも分かることである。ララとにんにんは騙されるものかと反論を試みる。
「でもさ、勝手に騎士団の訓練中に王子の側をウロチョロしたら駄目だよね?捕まっちゃうじゃない?」
「安心してください。騎士団の方にはすでに手を回してありますから咎められることは絶対にありません」
「キキウー、キッキー」
「大丈夫。サルの丸焼きは騎士達は食べませんよ、にんにんも安全です。ほら何の問題もありませんね?」
「「………」」
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「う、うん。行ってきます…」
「ウ、ウキ。キキキウ…」
ララとにんにんはやはり丸め込まれてしまった…。スーパー侍女ドウリアにかかれば黒も白に、近くも見えないになってしまうのである。ドウリアには侍女よりもっと能力が発揮できる適職があるのではないだろうか、ぜひ転職をお勧めしたいものである。
たくさんの疑問と不安を胸いっぱいに溜めこんで、ララとにんにんは午後の観察に行くことになった。
(本当に大丈夫なのかな…)
とりあえず、王子観察午後の部出発ー!?
『…ウキッキー!?』
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