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19.ちょっと休憩①
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モグモグモグ、モグモグモグ。
ゴクゴクゴク、ゴクゴク。
お皿の真ん中には残り一つとなったフルーツサンドがある、『食べて食べて』と訴えているかのように中に入っている苺がキラリと輝いている。その訴えを聞いたのか、テーブルの両端から二つの手が我先にと伸びてくる。
「ウッキーーー!」
「いやーん、最後の一個なのに~」
にんにんの勝利の雄たけびとララの悲壮な叫びが重なり合って食堂に響いている。
---なぜそんな状況になっているかといえば---
実はララ達はバイザルの言いつけをちゃんと守り、お茶会終了後真っ直ぐ部屋に戻っていた。ドウリアから『部屋で昼食にしますか』と聞かれ、部屋で二人だけの昼食は味気ないので王宮の食堂に連れてきてもらったのだ。
ここは王宮で働いている者などは誰でも利用できる食堂なのでいつでもワイワイと賑わいでいる。
南の辺境地ではいつでも家族や城の者達と食事をしていたララにとって、食事は楽しく賑やかに頂くものなのでこの食堂の雰囲気はまさに求めていたものだった。
『こんな広い食堂初めて。何食べようかな♪』
ドウリアから食券の買い方を教わり、ララとにんにんは飲み物とフルーツサンドを注文し至福の食事タイムを楽しんでいた。だがララは残り一つのフルーツサンド争奪戦に負けてしまったのである。
---そして雄叫び&叫びに繫がるのである---
ララは『フルーツサンドの神様が~』と訳の分からんことを言って沈んでいる。その隣でにんにんは嬉しそうに最後のフルーツサンドを堪能していた。
「アッハッハ!嬢ちゃん落ち込むなって、そのミニ猿が一枚上手だったんだからな。ほれ、これでも食べて元気出しな」
近くに座っていた大男が落ち込んでいるララの前に苺のケーキをヒョイと差し出した。もちろんにんにんにも同じものを渡してきた。
「うぁ、キラキラ苺のケーキだ。有り難う!」
「ウッキッキーキー!」
二人はお礼と同時にパクついている。『モグモグモグ、モグモグモグ』口いっぱいに頬張ってリスのようになっている。その様子にララ達の周りにいる人達から『あの二人凄く可愛い!癒される~』と高評価を受けている。
気をよくしたララは『これはファンサービスの為だもん』と言い訳をしながら、苺のケーキを完食していた。---胸やけはどうした?『喉元過ぎれば熱さを忘れる』の典型例だぞ。
「まあまあ、ゴンザレスさん有り難うございます。気を遣ってもらって」
二人に付き添っている侍女ドウリアが知り合いの大男にお礼を言う。
「いいって事よ。こんな美味しそうに食べられたら、料理人としても嬉しいからよ。それにしても可愛いコンビだな、名前はなんて言うんだ?」
ケーキを食べてご満悦のララが元気よく挨拶をする。
「私はララルーア・ミファンよ。暫く王宮にいるの、よろしくね!そしてこの子の名前はにんにん、ミニ猿だけど元忍びの凄い子なの」
「ララルーアか、嬢ちゃんにぴったりな可愛い名前だな。それに相棒が元忍びとは大したもんだ。俺はここで料理人をしているゴンザレスだ、よろしくな」
「はい、よろしくです♪ゴンさんは大きいですね、なんの種族ですか?」
「俺は熊獣人だよ、大きい図体しているが気のいい熊だぞ。ところで嬢ちゃんは竜人か…?」
「ちびっこだけど立派な竜人だもん!」
ゴンザレスの疑問形の問いにララは少しムッとしたが、椅子の上に立ち上がって胸を張って答える。
「アッハッハ、可愛いちびっこ竜人か。今はまだ蕾なんだな、これから大輪の花を咲かせるのか将来が楽しみだな!」
「さすがゴンさん、分かってる~♪なかなか凡人にはそこが理解できないのよね。お隣に住んで人は私のことジュゴンと間違えたんだよ!」
「どこにも原石の価値が分からん馬鹿はいる。嬢ちゃん気にするなよ、そんな奴は頭に水でも被せて目を覚まさせな!」
「そうなの、私もそう思ってそれをやったんだけど駄目だったの…」
「馬鹿は死んでも直らんって言うからな、アッハッハ」
「フフフ、ララ様。『馬鹿につける薬なし』ですよ」
「ウッキキイー、ウキウウキ」
「そうだね、みんな有り難う!」
みんな『馬鹿、馬鹿』と連呼しているが、その馬鹿とはこの国の王子の事だ。ゴンザレスは馬鹿が誰かは知らないが、残りの三人は馬鹿=王子と断定して言っている。
この国には不敬罪が存在しないのだろうか、それともこの三人が怖いもの知らずなのか…。---違います、ちびっこ竜人とスーパー侍女は無敵なんです。
ララ達の可愛いさに悶えていた周りの人達も『この可愛さが理解できない奴は馬鹿ね(だ)』と口々にララを慰め、ピンクのぷにぷにを撫でてうっとりしている。
『エヘヘ、そうかな♪そんなに言われたら照れるな~』と言いながらもララの気分はアゲアゲだ。
嬉しついでに椅子から飛び降りて『お礼に喜びの踊りしま~す♪』と張り切って踊りだす。
右にヘロヘロ、尻尾ぱたん (ちょいプルン)
左にフラフラ、尻尾ぶるん (ちょいプルン)
♬ちゅるっちゅ、ちゅちゅちゅー♬
お気づきだろうか、今日のララは腹筋に力を入れて踊っているためほとんどお腹が揺れていないのである。
『私だってやれば出来るもん。もうその音楽を卒業する日は近いもん!』byララ
なんとも奇妙なダンスだったが可愛いちびっこ竜人が踊っていたので『きみょ可愛い♡』と周りから大絶賛を受け、その日のお昼休みには【ララファンクラブ】まで結成されていた。
そして数日後にはタイオン帝国で『きみょ可愛い』という新しい言葉が流行するようになっていた。
『私ってインフルエンサーかも。なんか困っちゃうな~♪』
ゴクゴクゴク、ゴクゴク。
お皿の真ん中には残り一つとなったフルーツサンドがある、『食べて食べて』と訴えているかのように中に入っている苺がキラリと輝いている。その訴えを聞いたのか、テーブルの両端から二つの手が我先にと伸びてくる。
「ウッキーーー!」
「いやーん、最後の一個なのに~」
にんにんの勝利の雄たけびとララの悲壮な叫びが重なり合って食堂に響いている。
---なぜそんな状況になっているかといえば---
実はララ達はバイザルの言いつけをちゃんと守り、お茶会終了後真っ直ぐ部屋に戻っていた。ドウリアから『部屋で昼食にしますか』と聞かれ、部屋で二人だけの昼食は味気ないので王宮の食堂に連れてきてもらったのだ。
ここは王宮で働いている者などは誰でも利用できる食堂なのでいつでもワイワイと賑わいでいる。
南の辺境地ではいつでも家族や城の者達と食事をしていたララにとって、食事は楽しく賑やかに頂くものなのでこの食堂の雰囲気はまさに求めていたものだった。
『こんな広い食堂初めて。何食べようかな♪』
ドウリアから食券の買い方を教わり、ララとにんにんは飲み物とフルーツサンドを注文し至福の食事タイムを楽しんでいた。だがララは残り一つのフルーツサンド争奪戦に負けてしまったのである。
---そして雄叫び&叫びに繫がるのである---
ララは『フルーツサンドの神様が~』と訳の分からんことを言って沈んでいる。その隣でにんにんは嬉しそうに最後のフルーツサンドを堪能していた。
「アッハッハ!嬢ちゃん落ち込むなって、そのミニ猿が一枚上手だったんだからな。ほれ、これでも食べて元気出しな」
近くに座っていた大男が落ち込んでいるララの前に苺のケーキをヒョイと差し出した。もちろんにんにんにも同じものを渡してきた。
「うぁ、キラキラ苺のケーキだ。有り難う!」
「ウッキッキーキー!」
二人はお礼と同時にパクついている。『モグモグモグ、モグモグモグ』口いっぱいに頬張ってリスのようになっている。その様子にララ達の周りにいる人達から『あの二人凄く可愛い!癒される~』と高評価を受けている。
気をよくしたララは『これはファンサービスの為だもん』と言い訳をしながら、苺のケーキを完食していた。---胸やけはどうした?『喉元過ぎれば熱さを忘れる』の典型例だぞ。
「まあまあ、ゴンザレスさん有り難うございます。気を遣ってもらって」
二人に付き添っている侍女ドウリアが知り合いの大男にお礼を言う。
「いいって事よ。こんな美味しそうに食べられたら、料理人としても嬉しいからよ。それにしても可愛いコンビだな、名前はなんて言うんだ?」
ケーキを食べてご満悦のララが元気よく挨拶をする。
「私はララルーア・ミファンよ。暫く王宮にいるの、よろしくね!そしてこの子の名前はにんにん、ミニ猿だけど元忍びの凄い子なの」
「ララルーアか、嬢ちゃんにぴったりな可愛い名前だな。それに相棒が元忍びとは大したもんだ。俺はここで料理人をしているゴンザレスだ、よろしくな」
「はい、よろしくです♪ゴンさんは大きいですね、なんの種族ですか?」
「俺は熊獣人だよ、大きい図体しているが気のいい熊だぞ。ところで嬢ちゃんは竜人か…?」
「ちびっこだけど立派な竜人だもん!」
ゴンザレスの疑問形の問いにララは少しムッとしたが、椅子の上に立ち上がって胸を張って答える。
「アッハッハ、可愛いちびっこ竜人か。今はまだ蕾なんだな、これから大輪の花を咲かせるのか将来が楽しみだな!」
「さすがゴンさん、分かってる~♪なかなか凡人にはそこが理解できないのよね。お隣に住んで人は私のことジュゴンと間違えたんだよ!」
「どこにも原石の価値が分からん馬鹿はいる。嬢ちゃん気にするなよ、そんな奴は頭に水でも被せて目を覚まさせな!」
「そうなの、私もそう思ってそれをやったんだけど駄目だったの…」
「馬鹿は死んでも直らんって言うからな、アッハッハ」
「フフフ、ララ様。『馬鹿につける薬なし』ですよ」
「ウッキキイー、ウキウウキ」
「そうだね、みんな有り難う!」
みんな『馬鹿、馬鹿』と連呼しているが、その馬鹿とはこの国の王子の事だ。ゴンザレスは馬鹿が誰かは知らないが、残りの三人は馬鹿=王子と断定して言っている。
この国には不敬罪が存在しないのだろうか、それともこの三人が怖いもの知らずなのか…。---違います、ちびっこ竜人とスーパー侍女は無敵なんです。
ララ達の可愛いさに悶えていた周りの人達も『この可愛さが理解できない奴は馬鹿ね(だ)』と口々にララを慰め、ピンクのぷにぷにを撫でてうっとりしている。
『エヘヘ、そうかな♪そんなに言われたら照れるな~』と言いながらもララの気分はアゲアゲだ。
嬉しついでに椅子から飛び降りて『お礼に喜びの踊りしま~す♪』と張り切って踊りだす。
右にヘロヘロ、尻尾ぱたん (ちょいプルン)
左にフラフラ、尻尾ぶるん (ちょいプルン)
♬ちゅるっちゅ、ちゅちゅちゅー♬
お気づきだろうか、今日のララは腹筋に力を入れて踊っているためほとんどお腹が揺れていないのである。
『私だってやれば出来るもん。もうその音楽を卒業する日は近いもん!』byララ
なんとも奇妙なダンスだったが可愛いちびっこ竜人が踊っていたので『きみょ可愛い♡』と周りから大絶賛を受け、その日のお昼休みには【ララファンクラブ】まで結成されていた。
そして数日後にはタイオン帝国で『きみょ可愛い』という新しい言葉が流行するようになっていた。
『私ってインフルエンサーかも。なんか困っちゃうな~♪』
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