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閑話~裏王子視点のお茶会~
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---お茶会前の会話---
「おい、カイ。今日はよろしく頼むな!」
「嫌ですよ、トカ様。なんで俺が助けなくてはいけないんですか。お茶会は王子の公務です、自分で対処してください」
「するさっ!だが、あのハイエナ嬢達には常識が通じない。俺が生きる屍寸前の時は必ず助けろ!」
「はいはい、分かりました。出来る範囲で助けますがあまり期待はしないでください。俺もハイエナ嬢は苦手ですから」
「俺は苦手どころか大嫌いだ。お前だけが頼りなんだ、約束したからな!信じてるぞ、カイ」
「トカ様必死ですね、なんか哀れな王子になってますよ……」
「うるせぇー。なんとでもいえ」
******************************
俺の午前中の予定は、王子妃の地位を狙っているハイエナ嬢達とお見合いパーティーだ。
まだ110歳と若いが竜力が高いせいか俺は早熟で、見た目も子供ではなく青年になっている。
自分で言うのも何だが容姿端麗な美丈夫で外面の良い優秀な王子だ、そのうえ次代の竜王とくればモテないわけはない。王子である俺と結婚したい様々な種族のハイエナ嬢達がけばけばしく着飾ってこのお茶会に臨んでいるのだ。
もう本当に怖すぎる…。これから王宮の庭園で1対200の壮絶なバトルが始まるのだ。
俺の前にはハイエナ嬢達がズラリと一列に並んで、挨拶の順番を待っている。列の最後のハイエナ嬢ははるか遠くにいるので見る事はできない、すでにうんざりしている。
とりあえずは、流れ作業に徹する事にする。王子様スマイルを浮かべハイエナ嬢一人一人に効率よく話し掛けていく。
「アマン嬢の今日のドレスは庭園の花のように色鮮やかですね」
(なんてド派手なドレスなんだ。こっちの目が疲れるぞ!)
「まあ、有り難うございます。トカタオ様に褒めていただけて嬉しいですわ」
早く次に進みたいのにアマンハイエナは動かずこちらをうっとりとした表情で見つめ続けている。俺は『さっさとどけ』と目で訴えるが、まったく通じない。
(だから嫌なんだ、空気を読めって!はぁーこの馬鹿どうすればいいんだ。カイにどうにかさせようか)と考えていたらタイミング良く次のハイエナ嬢が飛び出してきた。
「お久しぶりでございます。トカタオ様に会える今日のお茶会をとても楽しみにしておりました」
「私もです。ヒスイ嬢は素敵な髪型をしていますね、宝石が散りばめられて輝いてます」
(俺は永遠に会いたくない。なんで頭がギラギラしている、お前の頭はカラスの巣なのか)
「トカタオ様のために頑張りました。気に入ってもらえて嬉しいですわ」
俺は早く解放されたくてハイエナ嬢達が喜ぶセリフを吐き続けた。だが200人もいるのでまだ終わらない…。
この地獄が永遠のように思えて、途中から何を言ったかも覚えていなかった。あまりの苦行に途中何度か意識が飛んでいたようで、背中をカイに小突かれて現実に戻ることが出来た。
なんとか全てのハイエナ嬢と挨拶が終わりバックレようとしたが、手強いハイエナ五人に捕まってしまった。
渋々テーブルに座り、どうこの場から逃げようかと考えていると、『逃がさない』とばかりのギラギラする目で五人のハイエナ達からロックオンされていた。
(怖い、怖すぎる。何を食ったらこんな肉食嬢になるんだ!)
そしてアマンハイエナとヒスイハイエナが仕掛けてきた。
俺の右隣の席をゲットしたアマンハイエナがついてもない糸くずを取るふりする。
「あら、トカタオ様髪に糸くずがついてますわ」
「優しいですね、有り難う』
(ベタベタ触るなこの痴女が!気持ち悪いんだよ、さっさと離れろ)
不必要に身体を触られて、俺は怒りで顔が赤くなるのが分かった。後少しでアマンハイエナが蹴り倒すところだったが、『これは公務、俺は王子』と心の中で繰り返し唱えて乗り切ってみせた。
そして次はヒスイハイエナが馬鹿なことをしてきた、あろうことか俺に抱き着いてきたのだ!
「トカタオ様、私なんか眩暈がします。あ~れ~」
ドッサ、ガッシ!
「ヒスイ嬢は華奢なんですね」
(ハイエナ、骨が当たって痛い!それに臭い、早くどけ)
もう俺は限界だった。無様に俺にしがみついているハイエナを殴り飛ばさなかったのが奇跡なくらいだ。俺の後ろで控えている護衛のカイに必死で『助けろ!』と目で合図を送るが気づかないふりをされた。
(約束を破るのかー。カイ、許さん!お前も同じ目に合わせるからなっ!)
「ヒスイ嬢は少し体調が悪いようだ。誰か彼女を休憩室まで運んであげてくれ。そうだな、カイにやらせよう。お前の憧れのヒスイ嬢をお姫様抱っこするチャンスだ。ヒスイ嬢構いませんか?」
「もちろんです。カイ様が私に憧れてるなんて光栄です。ぜひお願いします♪」
俺を助けなかったカイを嵌めてやった。カイがぷるぷると顔を横に振って涙目でいるが、そんなことは知らん。乳兄弟ならば苦しみも分け合って当然だ、俺の地獄を体験してみろ。
ヒスイハイエナは生贄カイを捕獲し、キャッキャウフフと休憩室に消えていった。王子の護衛を務める竜人の背中は可哀想なくらい哀愁が滲み出ていた。俺はせめてもの情けで、捕獲され去っていくカイの背中に向かってエールを送ってやった。
(カイよ、健闘を祈る)
なんとか一匹のハイエナは駆除できたが、この広い王宮庭園にはまだまだハイエナ嬢達がうじゃうじゃいる。
俺は『頼むから消えてくれ』と心の底から願いながらハイエナ嬢達を眺めていると、なぜかピンクのちびっこ竜人の生意気な姿が思い出された。
こんな時にあんなちびっこを思い出すなんて、なんか俺疲れているのか…。
「おい、カイ。今日はよろしく頼むな!」
「嫌ですよ、トカ様。なんで俺が助けなくてはいけないんですか。お茶会は王子の公務です、自分で対処してください」
「するさっ!だが、あのハイエナ嬢達には常識が通じない。俺が生きる屍寸前の時は必ず助けろ!」
「はいはい、分かりました。出来る範囲で助けますがあまり期待はしないでください。俺もハイエナ嬢は苦手ですから」
「俺は苦手どころか大嫌いだ。お前だけが頼りなんだ、約束したからな!信じてるぞ、カイ」
「トカ様必死ですね、なんか哀れな王子になってますよ……」
「うるせぇー。なんとでもいえ」
******************************
俺の午前中の予定は、王子妃の地位を狙っているハイエナ嬢達とお見合いパーティーだ。
まだ110歳と若いが竜力が高いせいか俺は早熟で、見た目も子供ではなく青年になっている。
自分で言うのも何だが容姿端麗な美丈夫で外面の良い優秀な王子だ、そのうえ次代の竜王とくればモテないわけはない。王子である俺と結婚したい様々な種族のハイエナ嬢達がけばけばしく着飾ってこのお茶会に臨んでいるのだ。
もう本当に怖すぎる…。これから王宮の庭園で1対200の壮絶なバトルが始まるのだ。
俺の前にはハイエナ嬢達がズラリと一列に並んで、挨拶の順番を待っている。列の最後のハイエナ嬢ははるか遠くにいるので見る事はできない、すでにうんざりしている。
とりあえずは、流れ作業に徹する事にする。王子様スマイルを浮かべハイエナ嬢一人一人に効率よく話し掛けていく。
「アマン嬢の今日のドレスは庭園の花のように色鮮やかですね」
(なんてド派手なドレスなんだ。こっちの目が疲れるぞ!)
「まあ、有り難うございます。トカタオ様に褒めていただけて嬉しいですわ」
早く次に進みたいのにアマンハイエナは動かずこちらをうっとりとした表情で見つめ続けている。俺は『さっさとどけ』と目で訴えるが、まったく通じない。
(だから嫌なんだ、空気を読めって!はぁーこの馬鹿どうすればいいんだ。カイにどうにかさせようか)と考えていたらタイミング良く次のハイエナ嬢が飛び出してきた。
「お久しぶりでございます。トカタオ様に会える今日のお茶会をとても楽しみにしておりました」
「私もです。ヒスイ嬢は素敵な髪型をしていますね、宝石が散りばめられて輝いてます」
(俺は永遠に会いたくない。なんで頭がギラギラしている、お前の頭はカラスの巣なのか)
「トカタオ様のために頑張りました。気に入ってもらえて嬉しいですわ」
俺は早く解放されたくてハイエナ嬢達が喜ぶセリフを吐き続けた。だが200人もいるのでまだ終わらない…。
この地獄が永遠のように思えて、途中から何を言ったかも覚えていなかった。あまりの苦行に途中何度か意識が飛んでいたようで、背中をカイに小突かれて現実に戻ることが出来た。
なんとか全てのハイエナ嬢と挨拶が終わりバックレようとしたが、手強いハイエナ五人に捕まってしまった。
渋々テーブルに座り、どうこの場から逃げようかと考えていると、『逃がさない』とばかりのギラギラする目で五人のハイエナ達からロックオンされていた。
(怖い、怖すぎる。何を食ったらこんな肉食嬢になるんだ!)
そしてアマンハイエナとヒスイハイエナが仕掛けてきた。
俺の右隣の席をゲットしたアマンハイエナがついてもない糸くずを取るふりする。
「あら、トカタオ様髪に糸くずがついてますわ」
「優しいですね、有り難う』
(ベタベタ触るなこの痴女が!気持ち悪いんだよ、さっさと離れろ)
不必要に身体を触られて、俺は怒りで顔が赤くなるのが分かった。後少しでアマンハイエナが蹴り倒すところだったが、『これは公務、俺は王子』と心の中で繰り返し唱えて乗り切ってみせた。
そして次はヒスイハイエナが馬鹿なことをしてきた、あろうことか俺に抱き着いてきたのだ!
「トカタオ様、私なんか眩暈がします。あ~れ~」
ドッサ、ガッシ!
「ヒスイ嬢は華奢なんですね」
(ハイエナ、骨が当たって痛い!それに臭い、早くどけ)
もう俺は限界だった。無様に俺にしがみついているハイエナを殴り飛ばさなかったのが奇跡なくらいだ。俺の後ろで控えている護衛のカイに必死で『助けろ!』と目で合図を送るが気づかないふりをされた。
(約束を破るのかー。カイ、許さん!お前も同じ目に合わせるからなっ!)
「ヒスイ嬢は少し体調が悪いようだ。誰か彼女を休憩室まで運んであげてくれ。そうだな、カイにやらせよう。お前の憧れのヒスイ嬢をお姫様抱っこするチャンスだ。ヒスイ嬢構いませんか?」
「もちろんです。カイ様が私に憧れてるなんて光栄です。ぜひお願いします♪」
俺を助けなかったカイを嵌めてやった。カイがぷるぷると顔を横に振って涙目でいるが、そんなことは知らん。乳兄弟ならば苦しみも分け合って当然だ、俺の地獄を体験してみろ。
ヒスイハイエナは生贄カイを捕獲し、キャッキャウフフと休憩室に消えていった。王子の護衛を務める竜人の背中は可哀想なくらい哀愁が滲み出ていた。俺はせめてもの情けで、捕獲され去っていくカイの背中に向かってエールを送ってやった。
(カイよ、健闘を祈る)
なんとか一匹のハイエナは駆除できたが、この広い王宮庭園にはまだまだハイエナ嬢達がうじゃうじゃいる。
俺は『頼むから消えてくれ』と心の底から願いながらハイエナ嬢達を眺めていると、なぜかピンクのちびっこ竜人の生意気な姿が思い出された。
こんな時にあんなちびっこを思い出すなんて、なんか俺疲れているのか…。
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