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13.観察準備その①
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美味しい朝食を食べ終わったララルーアは何もすることがない。兄であるマオは今日から学園に通うので日中は会う事が出来ないのだ。
虚弱体質で竜体のままのララは学園に通う事も出来ないし、竜人としては幼い部類に入るのでやるべき仕事など存在しない。
一日中ゴロゴロしていても誰にも叱られない夢のような立場なのだが、ララはそれを良しとしない。
『働かざる者食うべからず』をこの世で一番いい言葉だと教わっていたので、『ゴロゴロ』は敵なのである。
部屋にある机の引き出しをゴソゴソと探し一冊の新しいノートとペンを取り出した、それを机の上にポンと放り投げてから、ララはヨイショッと高めの椅子に器用によじ登り、机に向かって何やら書き始める。
「えーっと、タイトルは何にしようかな?」
ああでもないこうでもないと悩むララ、何度も書いては消しを繰り返していたが、暫くしてからノートの表紙にサラサラとペンを走らせる。
【トカタオ王子観察日記vol.1】
ララは王宮滞在中の仕事にトカタオの観察をすることにしたのだ。
『だって敵を知ってこそ、ドンピシャな呪いが掛けられるもん♪』かなり楽し気だ、それに観察する前から【vol.1】って書いている、どんだけ熱心に観察するつもりなんだ…。
満足したタイトルを考えられたララはノートとペンを愛用の肩掛け鞄に入れて準備を始めた。
観察というが簡単にはいかない。朝顔の観察なら間近でジロジロと見ても大丈夫だが、残念なことにトカタオは竜人なので勝手に動くし、気づいたら逃げてしまう可能性もある。---当然だ、動かず逃げず観察される人は誰もいない。
上手に観察をするには、一人でこっそりとやる必要がある。だがララルーアは専属侍女がつく有り難い待遇なので、一人にはなれない。竜王がララルーアを心配して付けた侍女なので、ドウリアも基本ララから離れる事はしないのである。
『観察のためにドウリアを撒かなくてわ!』ピンクの可愛い天使がピンクの悪だくみ小悪魔に変身する、ニヤリ。
「ドウリア、なんか眠くなっちゃった。王子の相手を朝からしたから疲れたのかも。ふぁぁ~少し寝るね」
「まぁ、大変。ララ様はお身体が弱いと聞いてます、無理はしないでくださいね」
「ありがとう。人がいると眠れないからドウリアは出て行ってくれる?」
「分かりました。隣にある侍女の控室にいますので、何かありましたらベルを鳴らしてくださいね」
ララの迫真の演技に騙されたドウリアは心配そうな表情を浮かべて部屋を後にした。優しいドウリアを騙したことにララの胸はチクッと痛んだが、『働かざる者食うべからず』という教えを胸に、仕事に取り掛かることにした。
まずはベットのなかにクッションを詰めて丸みを出し偽装工作をする。これで、ドウリアが様子を見に来てもララが寝ていると思って大丈夫なはずだ。
『私って頭いい~!』と自画自賛しているララだが、その偽装工作は40点の出来だった。
最初はたくさんクッションを詰めて、まるでララが本当に寝ているように見える膨らみを再現していた。けれども『私こんなに丸くないはず~』と見栄を張ってクッションを三個抜いてしまったのだ。
『これこれ、完璧!」といって出来上がった膨らみはララが入っているとは思えないほどほっそりとした山だった…。
---完璧な偽装工作より見栄を優先したララ、乙女心は何とも複雑なのである。
偽装工作終了、いざ出発!ララは肩掛け鞄を持って、隠し扉から外に出ようとする。
この隠し扉は部屋の改造の時に竜王が作らせたもので、『スズからのお願い』の賜物であり、竜王とララしか存在を知らない。
水槽で隠れている隠し扉に抜き足差し足で静かに近づき、こっそりと部屋から抜け出そうとする。
いざ隠し扉をくぐろうとするが、なかなか抜けられない…。
ピンクの可愛い竜体には触り心地のいいプニプニがついていて、それが邪魔をしている。この隠し扉はララ専用なので、寸法を事前に測りかなり小さく作られていた、だが子供は成長するものである、ララもしっかり育っていた…。
グイグイと力ずくで抜けようとするが、進まない…。それどころか扉とお肉がジャストフィットしている。前にも後ろにも動けなくなった。
(マズイ、ヤバイ、どうしよう!)
尻尾をビタン、ビタンと扉の枠に叩きつけるが壊れてくれない。
ララルーア絶体絶命!哀れな叫びが部屋にこだまする。
「いや~ん!誰か、助けてーーー!」
虚弱体質で竜体のままのララは学園に通う事も出来ないし、竜人としては幼い部類に入るのでやるべき仕事など存在しない。
一日中ゴロゴロしていても誰にも叱られない夢のような立場なのだが、ララはそれを良しとしない。
『働かざる者食うべからず』をこの世で一番いい言葉だと教わっていたので、『ゴロゴロ』は敵なのである。
部屋にある机の引き出しをゴソゴソと探し一冊の新しいノートとペンを取り出した、それを机の上にポンと放り投げてから、ララはヨイショッと高めの椅子に器用によじ登り、机に向かって何やら書き始める。
「えーっと、タイトルは何にしようかな?」
ああでもないこうでもないと悩むララ、何度も書いては消しを繰り返していたが、暫くしてからノートの表紙にサラサラとペンを走らせる。
【トカタオ王子観察日記vol.1】
ララは王宮滞在中の仕事にトカタオの観察をすることにしたのだ。
『だって敵を知ってこそ、ドンピシャな呪いが掛けられるもん♪』かなり楽し気だ、それに観察する前から【vol.1】って書いている、どんだけ熱心に観察するつもりなんだ…。
満足したタイトルを考えられたララはノートとペンを愛用の肩掛け鞄に入れて準備を始めた。
観察というが簡単にはいかない。朝顔の観察なら間近でジロジロと見ても大丈夫だが、残念なことにトカタオは竜人なので勝手に動くし、気づいたら逃げてしまう可能性もある。---当然だ、動かず逃げず観察される人は誰もいない。
上手に観察をするには、一人でこっそりとやる必要がある。だがララルーアは専属侍女がつく有り難い待遇なので、一人にはなれない。竜王がララルーアを心配して付けた侍女なので、ドウリアも基本ララから離れる事はしないのである。
『観察のためにドウリアを撒かなくてわ!』ピンクの可愛い天使がピンクの悪だくみ小悪魔に変身する、ニヤリ。
「ドウリア、なんか眠くなっちゃった。王子の相手を朝からしたから疲れたのかも。ふぁぁ~少し寝るね」
「まぁ、大変。ララ様はお身体が弱いと聞いてます、無理はしないでくださいね」
「ありがとう。人がいると眠れないからドウリアは出て行ってくれる?」
「分かりました。隣にある侍女の控室にいますので、何かありましたらベルを鳴らしてくださいね」
ララの迫真の演技に騙されたドウリアは心配そうな表情を浮かべて部屋を後にした。優しいドウリアを騙したことにララの胸はチクッと痛んだが、『働かざる者食うべからず』という教えを胸に、仕事に取り掛かることにした。
まずはベットのなかにクッションを詰めて丸みを出し偽装工作をする。これで、ドウリアが様子を見に来てもララが寝ていると思って大丈夫なはずだ。
『私って頭いい~!』と自画自賛しているララだが、その偽装工作は40点の出来だった。
最初はたくさんクッションを詰めて、まるでララが本当に寝ているように見える膨らみを再現していた。けれども『私こんなに丸くないはず~』と見栄を張ってクッションを三個抜いてしまったのだ。
『これこれ、完璧!」といって出来上がった膨らみはララが入っているとは思えないほどほっそりとした山だった…。
---完璧な偽装工作より見栄を優先したララ、乙女心は何とも複雑なのである。
偽装工作終了、いざ出発!ララは肩掛け鞄を持って、隠し扉から外に出ようとする。
この隠し扉は部屋の改造の時に竜王が作らせたもので、『スズからのお願い』の賜物であり、竜王とララしか存在を知らない。
水槽で隠れている隠し扉に抜き足差し足で静かに近づき、こっそりと部屋から抜け出そうとする。
いざ隠し扉をくぐろうとするが、なかなか抜けられない…。
ピンクの可愛い竜体には触り心地のいいプニプニがついていて、それが邪魔をしている。この隠し扉はララ専用なので、寸法を事前に測りかなり小さく作られていた、だが子供は成長するものである、ララもしっかり育っていた…。
グイグイと力ずくで抜けようとするが、進まない…。それどころか扉とお肉がジャストフィットしている。前にも後ろにも動けなくなった。
(マズイ、ヤバイ、どうしよう!)
尻尾をビタン、ビタンと扉の枠に叩きつけるが壊れてくれない。
ララルーア絶体絶命!哀れな叫びが部屋にこだまする。
「いや~ん!誰か、助けてーーー!」
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