ある日愛する妻が何も告げずに家を出ていってしまった…

矢野りと

文字の大きさ
上 下
20 / 21

20.予感③

しおりを挟む
『乱道様! 私の力を感じることができますか?』
「……何となくだがな?」

 日本刀となった我路の柄を握りしめると、腕から肩にかけて纏わりつくように、蒼い炎の様なものが絡みつき、とぐろを巻いている。

 ……これが我路のエネルギーか? 

『では私を抜刀してくれますか? 力が解放されるはずです』

 我路が刀を鞘から抜刀してくれと言う。
 刀から凄い力を感じ、俺に抜刀できるのか不安になるが、右手に力を込め、思いっきり鞘から引き抜いた。

「うおっ!?」
 
 何だこれは!? 刀身が何倍にも伸びて行く。
 これは一体どう言う原理なんだ?
 抜刀した刀は、俺の身長の三倍を超える長さまで伸びた。
 なのに……なんの重さも全く感じない。

『では乱道様? 行きますよ』

「おう!」

 次の瞬間、俺の体が勝手に動く。何だこれ!?
 我路が操っているのか?
 勢いよく向かってくるドラゴンを、ひらりと飛んで交わすと、刀はドラゴンの首を捕らえる。

「えっ?」
 
 刀がカチリっと納刀された。

 次の瞬間。

 ドラゴンの首が大きな体から離れ落ち、俺の目の前にドラゴンの顔が転がる。

 ちょっと待ってくれ!? 何をやったんだ? 
 自分の体なのに、何が起こったのか理解できていない。
 ドラゴンの突進を飛んで交わしたっと思ったら、刀が鞘に戻っていた。
 
『下等生物などに、我が力を使う程もなかったですね』

 嘘だろ? コイツの力はこんなにも強いのか?

「なあああああああああああああああああ!?」

 虚しく転がるドラゴンの頭を見て絶叫する男達。
 おいおいさっきの勢いはどこに行ったんだ?

『さぁ。もう一体も殺りますか』
 
 我路がそう言うと、瞬きをする間もない時間の間に。
 もう一体のドラゴンの頭が、ゴロンっと転がった。

「ヒィヤアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 瞬殺されたトラゴンの死骸を見て
 偉そうに言っていた男達は、驚愕し大声で叫ぶ。

 なんせドラゴンが、ほんの数秒で倒されたんだ。
 そりゃそうなるわな。
 俺だって正直、我路が何をやったのか理解出来ていない。

『大した事なかったですね』

 我路がいつの間にがイケオジ姿に戻り、何事も無かったかのように微笑む。
 大した事あったぞ? お前の力がヤバすぎただけだ。

「おい? 俺をどうにかするんじゃ無かったのか? もうドラゴンはいねーぞ?」

 俺は震える男達を煽る。

 捕まえて、稲荷の事など聞かねーとな。
 
 俺は腰を抜かしている男達に向かって歩いていく。
 男達を捕まえようとした次の瞬間。

 また男達が現れた時と同じように、空気が揺れる。

「へ?……消えた?」

 さっきまで目の前にいた筈なのに、男達は姿を忽然と消した。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

必要ないと言われたので、元の日常に戻ります

黒木 楓
恋愛
 私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。  前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。  その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。  森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。  数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。  そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。

「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃
恋愛
貧乏貴族の娘、エレンは幼いころから自分で家事をして育ったため、料理が得意だった。 そのため婚約者のウィルにも手づから料理を作るのだが、彼は「おいしいけど心が籠ってない」と言い、挙句妹のシエラが作った料理を「おいしい」と好んで食べている。 それでも我慢してウィルの好みの料理を作ろうとするエレンだったがある日「料理どころか君からも愛情を感じない」と言われてしまい、もう彼の気を惹こうとするのをやめることを決意する。 ウィルはそれでもシエラがいるからと気にしなかったが、やがてシエラの料理作りをもエレンが手伝っていたからこそうまくいっていたということが分かってしまう。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます

かずきりり
恋愛
もう、うんざりだ。 そこに私の意思なんてなくて。 発狂して叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。 貴女に悪意がないのは十分理解しているが、受け取る私は不愉快で仕方なかった。 善意で施していると思っているから、いくら止めて欲しいと言っても聞き入れてもらえない。 聞き入れてもらえないなら、私の存在なんて無いも同然のようにしか思えなかった。 ————貴方たちに私の声は聞こえていますか? ------------------------------  ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

処理中です...