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11.二人目と三人目の婚約者候補②
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トナは相変わらず平凡に挑戦しようとしているようで今日も高級生地を使用した目立たない無難な服装をしている。
前回あんなに駄目出しされたのに再挑戦する意気込みは悪くないと思う。
平凡には遠くまだまだだけれども、前を向いて頑張っている彼が素敵に見えてしまう。
その直後、少しだけ胸がドキドキした。
あっ…、これってあれよね?
あの有名なドキドキ。
まさか私がなるなんて…。
きっとこれが疲労による動悸というものだろう。
例の藁人形の時に徹夜で頑張ったのが良くなかったのだ。しっかりと昼寝をしてから臨むべきだった。今度やるときは健康面にも気をつけようと心に誓う。
「エミリア、また会ったな。
今日は何してるんだ?
観察かそれとも全種類の料理を制覇か?
どっちにしろ面白そうだから付き合ってやるよ」
遠慮のない物言いでも彼にはなぜか腹が立たない。
不思議と許せてしまうのだ。
きっと私も日々成長しているから心が寛大になっているんだろう。
「今日もあの観察よ。でも対象が二人で困っているの。ほとんど一緒にいるみたいなんだけど、別々に行動されたら片方が疎かになってしまうでしょう…。
どうしようかと考え中なの」
「それなら俺が一緒に手伝ってやる。別々に行動するときには二手に別れよう、それまでは一緒にいればいい。どうだ名案だろう」
確かに名案だがそれでは彼はこの夜会に参加している意味がなくなってしまう。
彼はきっと格好から推察するにきっと高位貴族の子息が下位貴族の夜会で羽根を伸ばしているんだろう。
きっとあれと同じよ!異国大百科に載っていた異国で大人気の活劇『暴れん○将軍』。
身分を隠し、非日常を味わって日頃の疲れを癒やしているんだわ。
それなら、私の手伝いなんてさせちゃ悪いわ。
もっとこの夜会で非日常を堪能させないと!
私がトナからの有り難い申し出を断わろうとする前に彼のほうが口を開いた。
「おいおい、心の声を出さなくなったのは褒めてやるけどな。思考が明後日の方に進んでいるのが丸わかりだぞ。
今度はどこまで迷走している、ちゃちゃっと話してみろ」
迷走なんてしていない、だから自信を持って彼には考えていたことを伝えた。
「なんだか鋭いんだか鈍いのか全っく分からんな、…まあいいか。
エミリア、そのなんとか将軍は知らないが、大枠は当たっている。
そして俺はこの前からお前のお陰で非日常を存分に堪能出来ているから心配無用だ」
言っている意味がわからない。
普通の子爵令嬢である私のなにが非日常なんだろうか。
本当は疑問を放置は良くないけど、この際仕方がない。
対象の二人の観察が今は最優先事項だ。
だから彼の申し出にお礼を伝え、一緒に観察を始めることにした。
「トナ、ちょっと待ってね」
私が素早く柱の陰に行って必要な物を用意しようとするとなぜか全力で止められた。そして彼は懐から二人分のメモ用紙と鉛筆を黙って取り出し差し出してくる。
「有り難う。良く分かったわね、これが必要だって。凄いわ、……本当に私サトラレじゃないの?」
「違う、ある意味サトラレなんかより上をいっているな…」
またまたトナの言っている意味が分からない。
きっと高位貴族のみが使う独特な言い回しなんだろう。それならば下位貴族の私には縁がないものだろうから聞き流すことにする。
こうしてトナという協力者を得て婚約者候補達の見定めを開始したのである。
前回あんなに駄目出しされたのに再挑戦する意気込みは悪くないと思う。
平凡には遠くまだまだだけれども、前を向いて頑張っている彼が素敵に見えてしまう。
その直後、少しだけ胸がドキドキした。
あっ…、これってあれよね?
あの有名なドキドキ。
まさか私がなるなんて…。
きっとこれが疲労による動悸というものだろう。
例の藁人形の時に徹夜で頑張ったのが良くなかったのだ。しっかりと昼寝をしてから臨むべきだった。今度やるときは健康面にも気をつけようと心に誓う。
「エミリア、また会ったな。
今日は何してるんだ?
観察かそれとも全種類の料理を制覇か?
どっちにしろ面白そうだから付き合ってやるよ」
遠慮のない物言いでも彼にはなぜか腹が立たない。
不思議と許せてしまうのだ。
きっと私も日々成長しているから心が寛大になっているんだろう。
「今日もあの観察よ。でも対象が二人で困っているの。ほとんど一緒にいるみたいなんだけど、別々に行動されたら片方が疎かになってしまうでしょう…。
どうしようかと考え中なの」
「それなら俺が一緒に手伝ってやる。別々に行動するときには二手に別れよう、それまでは一緒にいればいい。どうだ名案だろう」
確かに名案だがそれでは彼はこの夜会に参加している意味がなくなってしまう。
彼はきっと格好から推察するにきっと高位貴族の子息が下位貴族の夜会で羽根を伸ばしているんだろう。
きっとあれと同じよ!異国大百科に載っていた異国で大人気の活劇『暴れん○将軍』。
身分を隠し、非日常を味わって日頃の疲れを癒やしているんだわ。
それなら、私の手伝いなんてさせちゃ悪いわ。
もっとこの夜会で非日常を堪能させないと!
私がトナからの有り難い申し出を断わろうとする前に彼のほうが口を開いた。
「おいおい、心の声を出さなくなったのは褒めてやるけどな。思考が明後日の方に進んでいるのが丸わかりだぞ。
今度はどこまで迷走している、ちゃちゃっと話してみろ」
迷走なんてしていない、だから自信を持って彼には考えていたことを伝えた。
「なんだか鋭いんだか鈍いのか全っく分からんな、…まあいいか。
エミリア、そのなんとか将軍は知らないが、大枠は当たっている。
そして俺はこの前からお前のお陰で非日常を存分に堪能出来ているから心配無用だ」
言っている意味がわからない。
普通の子爵令嬢である私のなにが非日常なんだろうか。
本当は疑問を放置は良くないけど、この際仕方がない。
対象の二人の観察が今は最優先事項だ。
だから彼の申し出にお礼を伝え、一緒に観察を始めることにした。
「トナ、ちょっと待ってね」
私が素早く柱の陰に行って必要な物を用意しようとするとなぜか全力で止められた。そして彼は懐から二人分のメモ用紙と鉛筆を黙って取り出し差し出してくる。
「有り難う。良く分かったわね、これが必要だって。凄いわ、……本当に私サトラレじゃないの?」
「違う、ある意味サトラレなんかより上をいっているな…」
またまたトナの言っている意味が分からない。
きっと高位貴族のみが使う独特な言い回しなんだろう。それならば下位貴族の私には縁がないものだろうから聞き流すことにする。
こうしてトナという協力者を得て婚約者候補達の見定めを開始したのである。
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