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4.一人目の婚約者候補①

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とりあえず夜会に積極的に参加し婚約者候補をじっくりと観察して決めることにした。
なんのひねりもない方法だけれども他人に任せるより自分の目で確かめるほうが安心できる。


 特にあのお祖父様だけには最終判断は任せられないわ。
 絶対に判断基準が間違っている気がする…。
 くぅっ…、もっとまともな人の孫に生まれたかった…。


今更言っても仕方がないので祖父はあれでもう我慢しよう。

とりあえず祖父に似ないで自分自身はいたって普通の感覚の持ち主であること感謝だ。




今日の夜会で見定めるのは一人目の婚約者候補ゴルディ伯爵家当主ケビン様だ。25歳の若さながら伯爵家を継いでおり、見た目も金髪碧眼で麗しの王子様といった感じだ。
それに性格も至って平凡で悪い噂も聞かない。
これならば子爵家の私の婚約者候補にならなくても引く手あまたのはずだが、彼には大きなマイナスポイントがあった。

それはド貧乏である。

先々代の当主が事業に失敗をしてから困窮しており、伯爵家らしからぬ慎ましやかな生活をしているらしい。
つまり彼と結婚したら実家にもメリットはないし、そのうえ華やかな生活とは無縁になるという未来が決定されているのだ。

だから本人は美男子で性格も問題ない人だが、貴族社会では不良物件とみなされ結婚できないのだ。

だがひ孫天使を求めている祖父は優良物件と認識したのだろう。


 うーん、お祖父様は完全に顔しか見ていませんね。
 孫の苦労を考えなかったんですかね…。
 
 良心はどこにいったんですか?
 家出でもしているんですか。
 それとも行方不明ですか?
 
 あっ、捜索願いを出してもいいですか…。


きっと誰が探しても見つからないだろう。
どこかですでに朽ち果てているに違いない。
そうでなければひ孫獲得のために孫を脅しはしない。

 

お祖父様には呆れてしまうけれども、私は貧乏にはそれほど抵抗はない。
我が家だって平凡な子爵家で特に裕福ではない。

それより重要なことは婚約後にお互いに愛が芽生えて恋愛が出来るかということだ。やはり恋愛だけは諦めたくないし、愛する人と結ばれるのなら多少の困難やド貧乏も笑い飛ばせるはずだ。


つまり明るい未来の為に条件ではなくしっかりと相手を見て選ぶつもりだ。


今夜はケビン様に関するどんな些細なことも見逃すつもりはない。

 逃しませんわ、ケビン様。
 どうか私に全てを曝け出してくださいませ。



気分は獲物に狙いを定めたハンターだった。言いしれぬ高揚感から手に力が入り持っていた扇が『バキッ』と見事に折れてしまう。
母にバレたら物を粗末にしてと叱られてしまうから、こっそりと植木鉢の影に隠して紛失したことにする。


証拠がなければ大丈夫だ、疑わしき罰せずなのだから。
バレた時には…潔く兄のせいにしようと思ったところで大切なことを思い出す。

兄は今日の夜会には来ていない。
熱は下がったが『な…なんか、ふわふわと流れているような感覚がするんだ』とおかしなことを言っているので屋敷から出してもらえなかったのだ。

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