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29. 最後までするのはお預けです①
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トン、と軽くノックをしてからそっと顔を出した。
「レオニー。待っていたよ」
入浴後なのだろう。髪を拭きながらウィリアムが顔を綻ばせる。白いシャツに黒の緩いパンツ。この格好は私が来ると分かっていたからかも。夜着の上にガウンを羽織っただけの自分の姿をちらりと見下ろして、もう一度ウィリアムの笑顔を見る。それだけで胸がいっぱいになって早足に近づくと、差し出された手をキュッと握った。
温かい。あの暗い道で私を温めてくれたこの手。愛しさが募り手のひらに頬を押し当てた。その体温に鼻の奥がツンと痛み、目を閉じる。
「……ありがとう」
「ん?」
「私を迎えに来てくれて」
「……君のためなら、どんなところにでも」
たとえ命を失くすことになっても。そう思っていることが伝わってくる。危険なことはやめてと言いたい気持ちとは裏腹に、もし自分がその立場になったとしたら、同じように命を懸けることは分かっていた。目を開けたらこぼれてしまいそうな涙を隠すために、シャツにしがみつく。
「ずっと、二人一緒ね?」
当然のように同意してくれると思っていたのに、ウィリアムは答えを躊躇った。不安になって顔を上げても、黙って私を見るだけで口を開かない。
「………レオニーには、どんなことがあっても生きていて欲しい」
息を飲んでウィリアムを見つめる。瞬きをしたらころりと涙のつぶが落ちた。
「どうして?どうしてそんなこと言うの?」
眉根を寄せた苦しそうな顔を見る。何を告げるか迷う顔。後悔。痛み。……後ろめたさ?
「レオニーは」
私の顔を手のひらで包むようにしながら、親指で涙を拭う。
「私がどれほど君に夢中なのか…気づいてる?」
答えを求めていない問いだ。どこか昏さを孕んだ瞳で見つめられた。私を、心と身体両方で求める瞳。カッと顔が熱を持つ。涙を拭い終わった頬は、今は乾いて上気していた。
「レオニーと初めて会ったのは、君がまだ3つの時だったね。腰まである黄金の巻き毛と、ハッとするような鮮やかな緑の瞳」
親指で私の目尻を優しく撫でる。
「一目で心を奪われた」
熱っぽく見つめられ、恥ずかしくなって俯いてしまう。
「そんな……ウィルは前もそんなこと言ってくれてたけれど……。私まだ、赤ちゃんだったのよ」
「本当だよ。年齢なんて関係ない。レオニーに会った瞬間、私の人生は決まった。その場で陛下に懇願したよ。王女殿下を娶るに足る男に必ずなるから、それまで誰にも渡さないでくれと。私が迎えに行くまで、決して誰にも………」
顎を掴まれ顔を持ち上げられる。ひと時も目を離したくないというように視線を合わせ、鼻がぶつからないよう斜めに顔が近づいたところで目を閉じた。
表面をこすり合わせるキス。もう一度。簡単に息が上がってしまう。私の下唇を食んでから、開いていた唇の内側をそっと触れ合わせた。濡れた粘膜が熱い。ウィルの舌が欲しいのに、入ってきてくれないのがじれったかった。
「……ぁ……は……」
ちゅっ、と音を立てて唇が離れる。ん……もっと……。
「…………こうやって触れることすら許されないのだと……気づいた時にはもう、遅かった。君に触れ、笑顔を向けられる喜びを知ってしまったから。罪を償うどころか重ねるだけだと分かっていて、それでも……」
また唇が重なる。ちゅ、ちゅっと可愛らしい音を立て、すぐに離れた。深いキスをしたかった私が不満顔で見上げると、ウィリアムは咎める顔をする。
「ほら、そんな可愛い顔を私に見せるだろう?だからだよレオニー。どんなに我慢しようとしても、君がそうやって……ん……私のことを好きで仕方ないみたいな顔を……するから…………」
言葉の合間にキスをしているのか、キスの合間に話しているのか分からなくなった。ピチャ、と音をさせ、ようやく舌が触れる。ぬるぬるとこすり合わせ、私の舌に歯を立ててから離れていく。あ……まだ欲しい……。脚の間がじんじんして、全身を撫でてほしくてたまらなくなる。
「許されないなんて、罪、って……どうして?わたし……ずっと前からウィルが……ウィルだけなのに」
息を途切れさせながら必死に言った。身体から力が抜けて、くにゃくにゃになっている。でも、ウィルとちゃんと話さなくちゃ……。
「…………レオニーはもし私が……君を閉じ込めて。誰にも会わせないと言ったら……どうする?」
躊躇った後の問い。またあの昏い目をしている。どうしてそんな顔をするの……?
「……だれにも?」
「そう。家族やエミリーにも」
「……………」
「怖い?私を嫌いになる?」
「…………ウィルは?」
「……え?」
「ウィルには会えるの?」
会えないことを想像しただけで悲しくなった。驚いた顔で私を見おろしていたウィリアムは、次の瞬間私を強い力で抱きすくめる。
「レオニー!」
「ん……!な、に?」
「本当に君は……ずるいよ」
「……!どうして?」
心外な言葉にムッとした。抗議したくて抱擁を逃れようとしても、ぎゅうぎゅう抱きしめる腕が離してくれない。無理やり顔を上げると…………。
「ウィル……顔、まっか………」
フイと顔を逸らし隠そうとするけれど、銀髪の間からのぞく耳まで赤い。
「だって……ああもう!」
片手で後頭部を掴まれ、胸に顔を押し付けられた。
「後悔も懺悔も……やり直したいと思っていたことは山ほどあるのに。物分かりのいい振りはもう止めた。いいかいレオニー。どんなに嫌だと言っても放してあげられないよ。生きている間はもちろん、たとえ死んだとしても」
「死んでも?」
「ああ。私が逝くときには、君も一緒に連れていく。君を誰かに託せると思っていた私が間違っていた」
「………ずっと、二人いっしょ?」
「ずっと、永遠に。今世だけじゃなく来世までも」
「………よかった…………!」
キスをしたくて、目を閉じたまま顔を上げた。
私の望みはすぐに叶えられる。唇が熱い。深いキスが欲しくて口を開ける。ため息に似た喘ぎを漏らしながら、開いた口の中で舌を絡めあった。歯をなぞった舌は、次に私の上顎を何度もこすって快感を引き出す。同じことを自分でしても何とも思わないのに、ウィリアムの舌だとこんなに気持ちいい。
夢中になっていた私は、胸を触られて初めてガウンを脱がされていたことに気づいた。今日の夜着はごく薄く柔らかい生地のもので、胸元のリボンを解けば簡単に脱げてしまう。私は焦った。
「あ……だめ」
「………どうして?……レオニー、好きだよ……」
「ん……私も……」
「じゃあ……こうしてもいい?ほら、もうこんなに硬くして……尖ってる」
「やぁん!あん!ウィル、だめ、だめなの」
「何でだめ?レオニーの気持ちいいこと、たくさんしてあげるよ」
「んんっ、あっ、そこ、そんな風にくりくりってしちゃだめぇ」
「そんなこと言って……本当にだめなの?こんなに胸を突き出して、触って欲しそうにしてるのに……ああ、もっと酷くして欲しかった?」
「ああーーーーっ!!」
両胸の一番感じるところを強くつままれる。胸から頭、そして脚の間までを何かが走った。
「……イっちゃった?」
ピクピクと全身が震えている。触られてもいないのに、あの場所が濡れて……疼いて、立っていられない。
「ん……なあに?どこに、いくの……?」
「ああ……本当に君は可愛い……」
低いウィリアムの声。耳元で囁かれてまた震えると、そのまま舌で耳殻をなぞられた。私の言葉に空気だけで笑う気配がする。
「すごく気持ちよくなることを、イく、って言うんだよ」
「……それなら私、いっちゃったのね。だって、とっても気持ちよかったもの」
「………」
ウィリアムは黙ったまま、私の膝裏に腕を回しサッと抱き上げた。
寝台に横たえられた私の上に覆いかぶさってくる。ぼんやりとしていた私は、伝えることがあったのを思い出してハッとした。
「ウィル!」
「……なに?」
「あ、だめ。脱がさないで」
「だって、脱がさないと汚れちゃうよ?まあレオニーがそう言うなら、着たままでもいいけど」
「やんっ!そんなとこ吸っちゃいや!」
右胸の先を夜着ごと吸い上げられた。口の中では舌が硬くなったそこを転がしている。
「や、ん!だめ、だめ!ウィル、本当にだめなの。やめて!」
ちゅう、と吸われた後、ようやく離れてくれた。濡れた感触でまた先が敏感になってしまう。ねだるように胸を突き出したくなるのを必死で我慢した。
「レオニー、さっきから何がだめなの?」
「だって、結婚するまで、キス以上のことはしちゃだめって」
「…………誰がそんなことを言ったの?」
「エド兄さまが……」
「…………………チッ、余計なことを………」
「え?」
「いや。……レオニー。私がギルニアに発つ前、一度だけ……君を抱いた。あんなに幸せだと思ったことはなかったのに……レオニーは違うの?」
「…………違わない。……あ、あんん!だめ!触っちゃいや!」
薄布越しに、また胸の先をつままれた。脚の先まで快感がビリビリと走る。もう!
恨めしい気持ちで頬を膨らませると、ウィリアムの方も拗ねた口調になった。
「いや?私に触られるのが嫌なの?」
「ち、違うのウィル。………だって、わたし…………」
「………………」
「私だってウィルに………抱いてほしいもの」
「それなら、」
「で、でもだめなの!本当はこの前だって………純潔、を守らなきゃいけなかったのに。エミリーからもきつくそう言われて……。それなのに私が、ウィルの気持ちを疑ったから……1回だけ抱いてもらいたい、って、そう思って……」
「………………」
「でも私、ウィルと離れていたくないの。だから今日は一緒に眠りたい。……だめ?」
眉尻を下げて目を見合わせると、ウィリアムは小さく息をついた。
「駄目なんかじゃないよ。ほら……おいで」
抱き上げられ、上掛けをめくった中に二人で収まった。肩に頭を乗せ、目の前の喉仏にちゅっとキスをする。「こら」と怒られたけど、笑顔のウィルはちっとも怖くない。上掛けの中でクスクス笑いあう。笑いながらのキスが、だんだん本当の深いものに変わっていく。駄目だと思っているのに止められない。はあ、と狭い空間で色づいた息を吐くと、そこは一層淫靡で湿った場所になった。
「レオニー」
「ん……ウィル……なに……?」
ウィリアムは両手を使って私の胸を揉んでいる。柔らかいところだけ。胸の先の硬くなったところは、私が感じすぎるから触らないんだと思う。……たぶん。
「ねえ、レオニー。エドワード殿下からは、最後までしちゃ駄目だと言われたんだよね?」
「あああんっ!」
キュ、と胸の先を捻られた。あ……きもちいい……もっとして……。
「レオニー、聞いてる?最後までしなければいいの?」
「あっ、あ、あ、んっ!んんっ!」
「レオニー、ねえ」
「ああっ、いや、そんな気持ちいいことしないで!」
「…………気持ちいい?これがそんなに?」
「ふぅんっ、はぁっ、あっ、あ、あ」
「レオニー。殿下の言うこと、聞かなきゃいけないの?黙っていたら分からないよきっと。ほら、もっと気持ちいいところを触ったって………」
「あああんんっ……!!」
脚の間の一番感じるところをつままれる。両足がピンッと伸びて痙攣した。
「はあ、ああん……っ……。私、またいっちゃった……?」
「………………そうだね。…………レオニー。殿下は最後までしたら駄目だと、そう言ったんだったね?」
脚の間をウィリアムの指がぬるぬると蠢いている。あ、中に指が……ああ……もっと動かして……。
「レオニー!答えて。エドワード殿下は、最後までしなければいいと、そう言ったんじゃない?」
「ああーーっ、うっ……ぁはあんっ!そう、そうなの。あ、最後までしちゃだめなの」
ぬちゃぬちゃと音をさせて指が出入りしている。思い出したようにあの感じるところを突かれた。その度に頭が真っ白になるような快感に襲われ、もう何も考えられない。でもエド兄さまがあんなに強く言っていたこと………んんんっ、ああ、あの感じるところをもっと、もっと触って……!
「レオノア、言うんだ。最後までしなければ、何をしてもいいんだろう?」
「あ、あ、あ、そ、そこっ!ああっ、んんぅ!はい、そ、そうなの、最後までしなければ何をしてもいいの………っ!」
「………………いい子だ、レオニー。私からは最期までしないと約束しよう」
「あ、………ふぅ……ん……ありがとう……」
ちゅく……と音を立てて指が抜かれた。はあはあと荒い息をしながらぐったりと横たわっていると、ウィリアムがシャツを脱ぎ捨てた。パンツと下着も。勢いよく飛び出したそれに驚いて、思わずじっと見てしまう。その様子を楽しそうに見たウィリアムは、口角を引き上げて言った。
「レオニー。うつぶせになってお尻をこっちに向けてごらん」
「レオニー。待っていたよ」
入浴後なのだろう。髪を拭きながらウィリアムが顔を綻ばせる。白いシャツに黒の緩いパンツ。この格好は私が来ると分かっていたからかも。夜着の上にガウンを羽織っただけの自分の姿をちらりと見下ろして、もう一度ウィリアムの笑顔を見る。それだけで胸がいっぱいになって早足に近づくと、差し出された手をキュッと握った。
温かい。あの暗い道で私を温めてくれたこの手。愛しさが募り手のひらに頬を押し当てた。その体温に鼻の奥がツンと痛み、目を閉じる。
「……ありがとう」
「ん?」
「私を迎えに来てくれて」
「……君のためなら、どんなところにでも」
たとえ命を失くすことになっても。そう思っていることが伝わってくる。危険なことはやめてと言いたい気持ちとは裏腹に、もし自分がその立場になったとしたら、同じように命を懸けることは分かっていた。目を開けたらこぼれてしまいそうな涙を隠すために、シャツにしがみつく。
「ずっと、二人一緒ね?」
当然のように同意してくれると思っていたのに、ウィリアムは答えを躊躇った。不安になって顔を上げても、黙って私を見るだけで口を開かない。
「………レオニーには、どんなことがあっても生きていて欲しい」
息を飲んでウィリアムを見つめる。瞬きをしたらころりと涙のつぶが落ちた。
「どうして?どうしてそんなこと言うの?」
眉根を寄せた苦しそうな顔を見る。何を告げるか迷う顔。後悔。痛み。……後ろめたさ?
「レオニーは」
私の顔を手のひらで包むようにしながら、親指で涙を拭う。
「私がどれほど君に夢中なのか…気づいてる?」
答えを求めていない問いだ。どこか昏さを孕んだ瞳で見つめられた。私を、心と身体両方で求める瞳。カッと顔が熱を持つ。涙を拭い終わった頬は、今は乾いて上気していた。
「レオニーと初めて会ったのは、君がまだ3つの時だったね。腰まである黄金の巻き毛と、ハッとするような鮮やかな緑の瞳」
親指で私の目尻を優しく撫でる。
「一目で心を奪われた」
熱っぽく見つめられ、恥ずかしくなって俯いてしまう。
「そんな……ウィルは前もそんなこと言ってくれてたけれど……。私まだ、赤ちゃんだったのよ」
「本当だよ。年齢なんて関係ない。レオニーに会った瞬間、私の人生は決まった。その場で陛下に懇願したよ。王女殿下を娶るに足る男に必ずなるから、それまで誰にも渡さないでくれと。私が迎えに行くまで、決して誰にも………」
顎を掴まれ顔を持ち上げられる。ひと時も目を離したくないというように視線を合わせ、鼻がぶつからないよう斜めに顔が近づいたところで目を閉じた。
表面をこすり合わせるキス。もう一度。簡単に息が上がってしまう。私の下唇を食んでから、開いていた唇の内側をそっと触れ合わせた。濡れた粘膜が熱い。ウィルの舌が欲しいのに、入ってきてくれないのがじれったかった。
「……ぁ……は……」
ちゅっ、と音を立てて唇が離れる。ん……もっと……。
「…………こうやって触れることすら許されないのだと……気づいた時にはもう、遅かった。君に触れ、笑顔を向けられる喜びを知ってしまったから。罪を償うどころか重ねるだけだと分かっていて、それでも……」
また唇が重なる。ちゅ、ちゅっと可愛らしい音を立て、すぐに離れた。深いキスをしたかった私が不満顔で見上げると、ウィリアムは咎める顔をする。
「ほら、そんな可愛い顔を私に見せるだろう?だからだよレオニー。どんなに我慢しようとしても、君がそうやって……ん……私のことを好きで仕方ないみたいな顔を……するから…………」
言葉の合間にキスをしているのか、キスの合間に話しているのか分からなくなった。ピチャ、と音をさせ、ようやく舌が触れる。ぬるぬるとこすり合わせ、私の舌に歯を立ててから離れていく。あ……まだ欲しい……。脚の間がじんじんして、全身を撫でてほしくてたまらなくなる。
「許されないなんて、罪、って……どうして?わたし……ずっと前からウィルが……ウィルだけなのに」
息を途切れさせながら必死に言った。身体から力が抜けて、くにゃくにゃになっている。でも、ウィルとちゃんと話さなくちゃ……。
「…………レオニーはもし私が……君を閉じ込めて。誰にも会わせないと言ったら……どうする?」
躊躇った後の問い。またあの昏い目をしている。どうしてそんな顔をするの……?
「……だれにも?」
「そう。家族やエミリーにも」
「……………」
「怖い?私を嫌いになる?」
「…………ウィルは?」
「……え?」
「ウィルには会えるの?」
会えないことを想像しただけで悲しくなった。驚いた顔で私を見おろしていたウィリアムは、次の瞬間私を強い力で抱きすくめる。
「レオニー!」
「ん……!な、に?」
「本当に君は……ずるいよ」
「……!どうして?」
心外な言葉にムッとした。抗議したくて抱擁を逃れようとしても、ぎゅうぎゅう抱きしめる腕が離してくれない。無理やり顔を上げると…………。
「ウィル……顔、まっか………」
フイと顔を逸らし隠そうとするけれど、銀髪の間からのぞく耳まで赤い。
「だって……ああもう!」
片手で後頭部を掴まれ、胸に顔を押し付けられた。
「後悔も懺悔も……やり直したいと思っていたことは山ほどあるのに。物分かりのいい振りはもう止めた。いいかいレオニー。どんなに嫌だと言っても放してあげられないよ。生きている間はもちろん、たとえ死んだとしても」
「死んでも?」
「ああ。私が逝くときには、君も一緒に連れていく。君を誰かに託せると思っていた私が間違っていた」
「………ずっと、二人いっしょ?」
「ずっと、永遠に。今世だけじゃなく来世までも」
「………よかった…………!」
キスをしたくて、目を閉じたまま顔を上げた。
私の望みはすぐに叶えられる。唇が熱い。深いキスが欲しくて口を開ける。ため息に似た喘ぎを漏らしながら、開いた口の中で舌を絡めあった。歯をなぞった舌は、次に私の上顎を何度もこすって快感を引き出す。同じことを自分でしても何とも思わないのに、ウィリアムの舌だとこんなに気持ちいい。
夢中になっていた私は、胸を触られて初めてガウンを脱がされていたことに気づいた。今日の夜着はごく薄く柔らかい生地のもので、胸元のリボンを解けば簡単に脱げてしまう。私は焦った。
「あ……だめ」
「………どうして?……レオニー、好きだよ……」
「ん……私も……」
「じゃあ……こうしてもいい?ほら、もうこんなに硬くして……尖ってる」
「やぁん!あん!ウィル、だめ、だめなの」
「何でだめ?レオニーの気持ちいいこと、たくさんしてあげるよ」
「んんっ、あっ、そこ、そんな風にくりくりってしちゃだめぇ」
「そんなこと言って……本当にだめなの?こんなに胸を突き出して、触って欲しそうにしてるのに……ああ、もっと酷くして欲しかった?」
「ああーーーーっ!!」
両胸の一番感じるところを強くつままれる。胸から頭、そして脚の間までを何かが走った。
「……イっちゃった?」
ピクピクと全身が震えている。触られてもいないのに、あの場所が濡れて……疼いて、立っていられない。
「ん……なあに?どこに、いくの……?」
「ああ……本当に君は可愛い……」
低いウィリアムの声。耳元で囁かれてまた震えると、そのまま舌で耳殻をなぞられた。私の言葉に空気だけで笑う気配がする。
「すごく気持ちよくなることを、イく、って言うんだよ」
「……それなら私、いっちゃったのね。だって、とっても気持ちよかったもの」
「………」
ウィリアムは黙ったまま、私の膝裏に腕を回しサッと抱き上げた。
寝台に横たえられた私の上に覆いかぶさってくる。ぼんやりとしていた私は、伝えることがあったのを思い出してハッとした。
「ウィル!」
「……なに?」
「あ、だめ。脱がさないで」
「だって、脱がさないと汚れちゃうよ?まあレオニーがそう言うなら、着たままでもいいけど」
「やんっ!そんなとこ吸っちゃいや!」
右胸の先を夜着ごと吸い上げられた。口の中では舌が硬くなったそこを転がしている。
「や、ん!だめ、だめ!ウィル、本当にだめなの。やめて!」
ちゅう、と吸われた後、ようやく離れてくれた。濡れた感触でまた先が敏感になってしまう。ねだるように胸を突き出したくなるのを必死で我慢した。
「レオニー、さっきから何がだめなの?」
「だって、結婚するまで、キス以上のことはしちゃだめって」
「…………誰がそんなことを言ったの?」
「エド兄さまが……」
「…………………チッ、余計なことを………」
「え?」
「いや。……レオニー。私がギルニアに発つ前、一度だけ……君を抱いた。あんなに幸せだと思ったことはなかったのに……レオニーは違うの?」
「…………違わない。……あ、あんん!だめ!触っちゃいや!」
薄布越しに、また胸の先をつままれた。脚の先まで快感がビリビリと走る。もう!
恨めしい気持ちで頬を膨らませると、ウィリアムの方も拗ねた口調になった。
「いや?私に触られるのが嫌なの?」
「ち、違うのウィル。………だって、わたし…………」
「………………」
「私だってウィルに………抱いてほしいもの」
「それなら、」
「で、でもだめなの!本当はこの前だって………純潔、を守らなきゃいけなかったのに。エミリーからもきつくそう言われて……。それなのに私が、ウィルの気持ちを疑ったから……1回だけ抱いてもらいたい、って、そう思って……」
「………………」
「でも私、ウィルと離れていたくないの。だから今日は一緒に眠りたい。……だめ?」
眉尻を下げて目を見合わせると、ウィリアムは小さく息をついた。
「駄目なんかじゃないよ。ほら……おいで」
抱き上げられ、上掛けをめくった中に二人で収まった。肩に頭を乗せ、目の前の喉仏にちゅっとキスをする。「こら」と怒られたけど、笑顔のウィルはちっとも怖くない。上掛けの中でクスクス笑いあう。笑いながらのキスが、だんだん本当の深いものに変わっていく。駄目だと思っているのに止められない。はあ、と狭い空間で色づいた息を吐くと、そこは一層淫靡で湿った場所になった。
「レオニー」
「ん……ウィル……なに……?」
ウィリアムは両手を使って私の胸を揉んでいる。柔らかいところだけ。胸の先の硬くなったところは、私が感じすぎるから触らないんだと思う。……たぶん。
「ねえ、レオニー。エドワード殿下からは、最後までしちゃ駄目だと言われたんだよね?」
「あああんっ!」
キュ、と胸の先を捻られた。あ……きもちいい……もっとして……。
「レオニー、聞いてる?最後までしなければいいの?」
「あっ、あ、あ、んっ!んんっ!」
「レオニー、ねえ」
「ああっ、いや、そんな気持ちいいことしないで!」
「…………気持ちいい?これがそんなに?」
「ふぅんっ、はぁっ、あっ、あ、あ」
「レオニー。殿下の言うこと、聞かなきゃいけないの?黙っていたら分からないよきっと。ほら、もっと気持ちいいところを触ったって………」
「あああんんっ……!!」
脚の間の一番感じるところをつままれる。両足がピンッと伸びて痙攣した。
「はあ、ああん……っ……。私、またいっちゃった……?」
「………………そうだね。…………レオニー。殿下は最後までしたら駄目だと、そう言ったんだったね?」
脚の間をウィリアムの指がぬるぬると蠢いている。あ、中に指が……ああ……もっと動かして……。
「レオニー!答えて。エドワード殿下は、最後までしなければいいと、そう言ったんじゃない?」
「ああーーっ、うっ……ぁはあんっ!そう、そうなの。あ、最後までしちゃだめなの」
ぬちゃぬちゃと音をさせて指が出入りしている。思い出したようにあの感じるところを突かれた。その度に頭が真っ白になるような快感に襲われ、もう何も考えられない。でもエド兄さまがあんなに強く言っていたこと………んんんっ、ああ、あの感じるところをもっと、もっと触って……!
「レオノア、言うんだ。最後までしなければ、何をしてもいいんだろう?」
「あ、あ、あ、そ、そこっ!ああっ、んんぅ!はい、そ、そうなの、最後までしなければ何をしてもいいの………っ!」
「………………いい子だ、レオニー。私からは最期までしないと約束しよう」
「あ、………ふぅ……ん……ありがとう……」
ちゅく……と音を立てて指が抜かれた。はあはあと荒い息をしながらぐったりと横たわっていると、ウィリアムがシャツを脱ぎ捨てた。パンツと下着も。勢いよく飛び出したそれに驚いて、思わずじっと見てしまう。その様子を楽しそうに見たウィリアムは、口角を引き上げて言った。
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