私の大好きな騎士さま

ひなのさくらこ

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14. 初めての戯れ②

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切なげな息をもらすレオノアは、抱き上げたウィリアムの胸に頬をすり寄せ目を閉じている。膝と背中に回された腕にも感じるのか、んっ、と小さく声を上げた。

まだ大丈夫だ。この無垢な身体をこんな――長椅子の上で貪るような真似をするほど、切羽詰まってはいない。

今すぐにでも食らい尽くしたいと主張する身の内の獣を無視し、ウィリアムは半ば言い聞かせるように自答しながら長椅子へ腰を下ろす。

「…………ウィル……?」
「ん?……どうしたの?」
「……ぁ……わ、わたし……」

濡れて輝きを増した瞳。色づいた唇。ウィリアムは何か言いたげなレオノアを知りながら、たまらなくなってすかさず口づけ、ドレスの裾から手を差し込んだ。

すべすべとしたふくらはぎを撫で上げながら口内を舌で探る。上あごをこすると小さなうめき声が喉から響いてきた。重点的にそこを舐めこすり、舌を絡ませる。そうやって意識を逸らし、徐々に手を上に滑らせた。

娘らしく柔らかい内腿。それを味わっているのがこの手のひらだけとは残念だ。できることなら唇で――この舌で繰り返し舐め上げ、吸い付いて痕を残してしまいたい。

さわさわとなで、そっと揉みながら少しずつ指先を脚の付け根に這わせる。くすぐったさからか官能ゆえか、レオノアは脚を閉じてウィリアムの手を挟み、その侵入を阻んだ。合わせた唇を笑みの形にしたウィリアムは、口づけを解くと首筋に顔を埋め、舌でべろりと舐め上げた。

「あぁぁんっ!」

先日の触れ合いで、そこが性感帯だと分かっていた。悶えるレオノアを上半身で押さえつけるようにしてそれを繰り返し、合間で耳をねぶる。脚の力が抜けたのを見計らい、指先を誰も触れたことのない秘められた場所にそっと押し当てた。

「アっ!」

そこは驚くほど熱をもっている。潤いが湧き出る場所を布越しにこすれば、たたえられた潤みでつるつると滑り、最後にかわいらしく自己を主張する芽に行きついた。爪で軽く芽をいじる。指先を折り、弾くように細かく動かせば高い声を上げて背を反らせ、ピクピクと小さく痙攣した。

白い頬に涙がぽろりとこぼれる。愛しいレオノア。大切にしたい。泣かせたい。可愛がりたい。奪いたい。相反する思いはどちらも本物だ。檻を食い破ろうと暴れる獣を自覚しながらそっと指を引いた。

「レオニー」

首までピンク色に染まったレオノアが、うっすら目を開けた。

「…………ウィル……」
「ああ。とても可愛かったよ。よく頑張ったね」
「ん……いまの、何だったの……?私……」

緩慢に呟くレオノアをそっと撫でる。さざなみのような震えが走った。

「君を気持ちよくしたんだ、レオニー。初めてだったんだろう?びっくりした?」
「ん……わからないの……ウィル、どうして?どうしてあんなところに触るの……?」
「……………閨の教育を、受けていないの?」
「ねや……?」

見上げる緑の瞳を見てウィリアムは確信した。レオノアは身体が無垢なだけではない。男女の親密な触れ合いについても全くの無知なのだ。
おそらくあの王太子あたりが手をまわしていたのだろう。生々しい男女の睦みあいのあれこれなど、レオノアに知られたくなかったに違いない。愚かなことだ、レオノアは人形ではないというのに。だが一方で納得してもいた。何も知らないからこそ、レオノアは罪悪感を感じることなくウィリアムに触れさせているのだ。

王族の中で女性は母親のみ。近しい血縁にも存在しない。貴族令嬢たちとの付き合いはあるだろうが、神話の王女の生まれ変わりとして崇められるレオノアに、彼女たちが男女間の性的な接触について説明するとは思えなかった。そしてレオノアの日常生活すべてに干渉していた王太子エドワード。大切に、真綿にくるみガラスケースに入れて、生身の男どころか知識すら与えず隔離した。
美しい心と身体を持つ神話の王女。誰一人触れることを許されない、リングオーサの生ける宝石として。

その宝石が今、ウィリアムの手の中にある。染まった頬。濡れた唇。乱れたドレスの裾。露出の少ない襟元の慎ましさと、それを裏切る乳首の尖り。

誰も触れることができなかった。ウィリアムも。だがそれは既に過去のことだ。今レオノアはこんなにも扇情的な姿で自分を誘っている。ウィリアムはぺろりと唇を舐めた。

「何も知らないんだね、レオニー。私が教えてあげるよ。…………ぜんぶ」
「ウィルが……おしえてくれるの?」
「ああ。何でも教えてあげる。レオニーは頑張れる?」
「ん……がんばる……」

ウィリアムは横抱きにしていたレオノアの身体を起こすと、自分の膝の上に背を向けるように座らせ、後ろから抱きしめた。

「レオニーいいかい?閨事は夫婦の間だけの秘密なんだ。だから絶対に他の男としちゃいけない。分かるね?」
「は、い。ウィルとしか……しない」
「そうだよ。そしてお互いの身体を触るんだ。こんなふうに」
「ん……なあに……きゃっ」
「さあレオニー、言ってごらん。こうされると……どんな気持ちになる?」

ドレスの上から微かな――羽毛が触れるくらいの微かさで、左胸の尖りに触れる。もう一度。さらにもう一度。

「あっ、あっ、あん!」
「ん?どうなの?どんな気持ち?言ってくれないと分からないよ。……じゃあ反対も触ってみようか」
「きゃあっ!んんっ!うぃ、ウィル、あ、ああっ」
「分からないかな?じゃあ……これでどう?」
「あああああんっっ!!」

両手で乳首を同時にきゅっとつまむと、レオノアが大きく背を反らせる。ウィリアムは手を離し、脱力してもたれかかったレオノアの耳元で囁いた。

「どう?まだ分からない?……そうか。触り方を変えてみようね。こうすると……どうかな」
「……あぁ……ぅんんんっ……」

豊かな両の乳房をやわやわと揉む。レオノアは後頭部をウィリアムの肩に乗せて、いやいやをするように頭を振った。あえて一番感じるところを避け、下から持ち上げ、指が埋まるほど強く揉みあげる。

「は……あん……あ、あ、んんっ……」
「どんな気持ち?ちゃんと言って」
「あっ、あっ、あああ!」

きゅむ、とまた両乳首をつまんだ。背を反らせ喘ぐレオノアの唇をふさぐ。ちゅ、ちゅ、と口づけを繰り返し、開いた口に何度も舌を入れる。胸を揉み、焦らした後に一瞬だけ尖りをいじる。何度も何度も。その度に、口の中に悲鳴に似た叫びが響いた。

「はあ、はあ、んんんっ、う、ウィルっ!ああん!そ、そこっ」
「ん?どこ?……ここかな?」
「ちがう、ちがうのっ、そこじゃなくてっ」
「違う?……ああ、もしかしてこっち?」
「ああああっんんん!!!そう、そう、んんんんっ、そこっ!」
「うん、ここだね。……ここが、どうなの?教えてレオニー」
「ああっ、へん、へんになっちゃうところなの、あん、あ、そこをきゅっとされると、んんんっ」
「……そう。ここをこうすると……?」
「ああんっ!ウィル、ウィル、あんっ!あん、あ、あ!」

きゅっ、とひねるように乳首をつまみ上げた後、ふ、と手を離す。ぐったりとしたレオノアを見下ろした。真っ赤な頬。ふっくらとした濡れた唇。ドレスに浮き上がった乳首の尖り。チッと舌打ちをする。このドレスは二度と着ないよう言い聞かせなければ。自分の前以外では。

「レオニー?」
「……ん………………」
「どうかな?もう少し教えてもいい?」
「…………」
「どうする?レオニーが知りたければ教えるけど」

余裕のある口ぶりで言うが、実情は全く逆だ。その証拠にウィリアムの下半身は激しく主張し、痛みを感じるほどになっている。レオノアとの触れ合いと、悶えるレオノアのヒップがウィリアムを刺激し、その怒張は鉄をも突き破る勢いだ。今レオノアにもっと先を――秘められた熱い泉に指を差し入れ、したたりを舐めすすり、かわいらしい快感の芽にそっと歯を立てようものなら――この昂りを思い切り突き立てずにはいられないだろう。たとえ長椅子の上であっても。

「……ウィル」
「何だい、レオニー」
「あ、あのね、私……すっかり忘れていたのだけれど」
「うん?」
「…………」
「どうした?ほら、言ってごらん」
「…………触れちゃいけないって」
「……え?」
「エドワードお兄さまがこの前。……指一本、って。私、すっかり忘れちゃってたの。だから……」
「…………」
「う、ウィル?……あ、あの、ごめんなさい。せっかく教えてくれたのに」
「…………く、」
「…………?」
「くっ、は、ははははははっ。レオニー!」
「?ウィル?」
「まったく、君ときたら!こんな……はははっ!どこまで可愛いんだ!」
「どうしたの……もう、笑ってないでちゃんと答えて!」
「はあ、はあ……。いや、いいんだレオニー。私が急ぎすぎた。レッスンは少しずつにしよう。それとね、王太子殿下は大丈夫だよ。私たちのことを分かってくださったはずだから」
「そうなの?」
「ああ。殿下の腹心の部下がいただろう?騎士のフレデリック。彼が話してくれたんじゃないかな――私のことを」
「本当?よかった!私、ウィルがエド兄さまに怒られちゃうんじゃないかと心配だったの」
「ありがとうレオニー。もう大丈夫だから、またたくさんキスして抱きしめさせてくれる?」
「もちろん…………あのね、ウィル」
「ん?」

もじもじと恥ずかしそうにするレオノア。自分があと少し――ほんの、髪ひと筋のところで――純潔を失う危機を回避したと気づいていない。
かわいいレオノアから耳打ちされた言葉に、ウィリアムはほほ笑んだ。わたし、とっても素敵な気分だったの、と。

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