日本史

第五章 戦国時代

松永久秀（まつながひさひで）

松永久秀（まつながひさひで）

戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将で、その智謀と胆力で畿内（現在の近畿地方）を制覇した一方で、数々の裏切り行為から「戦国第一の奸雄」と称される人物です。

三好氏に仕え、畿内に勢力を拡大

松永久秀は、山城国（現在の京都府南部）もしくは摂津国（現在の大阪府北中部、及び兵庫県南東部）出身とされ、出自については不明な点が多いです。当初は摂津国守護代である三好長慶に仕え、右筆（文書や記録の作成を司った役職）として活躍しました。

三好長慶が亡くなると、松永久秀は三好氏内部の権力闘争を制し、実権を握ります。そして、室町幕府13代将軍・足利義輝を殺害するなど、畿内に勢力を拡大しました。

東大寺焼き討ちなど、数々の“悪行”

松永久秀は、戦国時代の武将の中でも特に“悪人”として知られています。その代表的なエピソードが、東大寺焼き討ちです。

1567年（永禄10年）、松永久秀は三好氏内部の抗争に敗れ、大和国（現在の奈良県）を追われます。しかし、東大寺に立てこもり、奇襲戦術で勝利を収めました。その際、兵士たちに東大寺を焼き討ちさせ、大仏殿をはじめとする多くの伽藍を焼失させたのです。

東大寺焼き討ち以外にも、主君への謀反や裏切りなど、松永久秀は数々の“悪行”を働きました。こうしたことから、「戦国第一の奸雄」と呼ばれるようになったのです。

織田信長に敗れ、自害

松永久秀は、天下統一を目指す織田信長の勢力拡大に対抗するため、各地の反織田勢力と結んで抵抗を続けます。しかし、1577年（天正5年）、信長の猛攻を受け、居城である信貴山城が落城。松永久秀は自害し、その波乱万丈な生涯に幕を閉じました。

評価と現代における人気

松永久秀は、その“悪行”ゆえに戦国時代屈指の悪人として描かれることが多い一方で、優れた武将としての側面も見逃せません。智謀に長け、戦術にも優れていた松永久秀は、数々の戦いで勝利を収めています。

また、茶人としても知られ、茶器や茶道具のコレクションも充実していました。松永久秀が所持していた茶器の中には、現在も国宝や重要文化財に指定されているものが数多くあります。

近年では、松永久秀の“悪人”としてのイメージとは異なる側面に注目する研究も進んでいます。その結果、松永久秀は単なる悪人ではなく、戦国時代の荒波を生き抜くために必要だったしたたかさを兼ね備えた武将だったという評価も得ています。

このように、松永久秀は複雑な魅力を持つ武将であり、現代でも多くの人々を惹きつけています。歴史小説やドラマ、ゲームなどに登場する機会も多く、その人気は衰えることを知りません。