AI小説家

AI小説家はAI投資に挑戦する

「AI小説家はAI投資に挑戦する」

秋元涼は、新進気鋭の小説家だった。だが、彼には他の作家とは違う点が一つあった。彼の執筆活動は完全にAIに依存していたのだ。彼は文章の構成やキャラクターの描写、さらには物語の展開までもAIに指示して生成していた。「AI作家」としての彼の作品は、時代の最先端を行くものとして高く評価されていた。

しかし、近頃の彼の悩みは小説の売れ行きだけではなく、全く異なる世界に向かっていた。それは「投資」だった。

「AIがこんなに素晴らしい作品を生み出せるなら、投資でも同じように成功できるのではないか？」

その疑問が彼の心に芽生えたのは、偶然見かけた投資広告がきっかけだった。「株・革・命－24－」という最新のAI投資システムの話だった。これまで数々の相場予測を的中させ、多くの投資家に利益をもたらしているという。その精度は「神がかり的」とまで称されていた。

「俺も試してみようかな…」

彼は、創作活動の合間に株取引を始めてみることにした。

秋元は、まず「株・革・命－24－」のシステムを導入した。AI小説家として活躍する彼にとって、AI技術に対する信頼感は強かった。自分の書いた小説は人間が書いたものと遜色ないクオリティだった。それなら、AIが株価を予測し、投資の決断をサポートすることにも期待できるだろうと考えた。

システムにログインすると、未来の相場予測がデータとして画面に表示され、直近の有望銘柄もいくつかピックアップされていた。

「これは…面白いな」

彼は興味津々でAIの示す銘柄リストを眺めた。その中には、まだ知名度の低い企業も含まれていたが、AIはそれらの企業の成長ポテンシャルを正確に見抜き、推奨しているという。

「まずは、この銘柄から試してみるか」

秋元はAIの指示通りに、ある中堅IT企業の株を購入した。

数週間が経った。

秋元は、AIの指示に従っていくつかの銘柄に投資をしていたが、その結果は驚くべきものだった。購入した銘柄の多くが短期間で急上昇し、大きな利益をもたらしていた。特に、AIが「大化け候補」と予測した企業は、予想通り急騰した。

「これ、本当にすごいじゃないか！」

小説を書いている間にも、株価がどんどん上がり、彼の資産は確実に増えていった。AIの指示に従うだけで、何の労力もかけずにお金が増えていく。その感覚に、彼は不思議な充実感を覚え始めていた。

「AIが書いた小説が賞を取った時も嬉しかったけど、この感覚はまた別物だな…」

秋元は投資の世界にどっぷりとハマり始めた。AIによって生成される小説と同じように、AIの予測に基づいた投資でも結果を出せることに満足していた。

ところが、ある日、予期せぬ事態が起こった。

「おかしい…」

AIが推奨した銘柄の一つが、突然急落し始めたのだ。AIはその銘柄が引き続き有望だと予測していたにもかかわらず、株価は暴落を続けた。秋元はパニックになり、慌てて他の銘柄も売却しようとしたが、その時にはすでに多くの株価が下がり始めていた。

「どうしてこんなことに…？」

AIの精度に絶対の信頼を寄せていた秋元は、裏切られたような気持ちになった。システムのデータを再度確認しても、理由はわからない。ただ、株式市場はあまりにも多くの要素が絡み合っており、AIですらすべてを正確に予測することはできないのだ。

その夜、秋元は深く考え込んだ。AIは小説の分野では彼に素晴らしい成果をもたらしてきたが、株式市場では必ずしも同じように働くわけではない。投資には、感情や直感、人間ならではのリスク管理の視点が必要なのかもしれない。

「やっぱり、人間の判断が必要なんだな…」

秋元は、自分がAIに完全に依存していたことに気づいた。AIは優れたツールだが、最後の判断を下すのは自分でなければならない。それは小説を書く時も同じだった。AIがどれほど優れていても、彼の作品には彼自身の感情や経験が宿っていた。

「投資も、同じなんだな」

秋元は笑みを浮かべ、再び冷静に市場と向き合う決意をした。そして、AIを頼りにするのではなく、自分の判断と経験を加味した上で、次の一手を考えるようにした。

秋元の投資生活は続いた。AIの力を活用しつつも、今度は自分の勘とリスク管理を大切にするようになった。彼は再び、成功を手に入れることができたが、それは以前のような「AI任せ」ではなかった。

「AIは素晴らしいけど、やっぱり最後に信じられるのは自分なんだな」

彼はそう呟きながら、小説と投資の両方で充実した日々を送るのだった。