へたれゲーマーだということを証明します

へたれゲーマーと夜のセッション

 「へたれゲーマーと夜のセッション」

夜の静けさが深まる頃、みるくは画面の前に座っていた。普段なら苦戦する新しいストーリークエストだが、今日は頼りになるフレンドさんと一緒だ。彼女の「へたれゲーマー」な部分をしっかりとサポートしてくれるその人は、みるくにとってオンラインの世界で唯一無二のパートナーのような存在だった。

「準備はいい？行こうか」とフレンドさんの声がスピーカーから響く。

「う、うん、お願いね！」と、みるくは緊張しながらも、興奮した声で返事をする。パーティーに加わると、画面には色鮮やかな敵の軍勢が現れる。やる気は十分だが、みるくの腕前は少々不安定で、気を抜くとすぐにキャラクターが倒されてしまう。それでもフレンドさんの的確な指示とサポートがあり、彼女はなんとかついていくことができた。

戦闘が激化する中、みるくの心臓はドキドキと早鐘を打っていた。敵が次々と迫り来るたびに、彼女の指が震え、何度も失敗しかける。しかしフレンドさんは「大丈夫、次はこれに集中して」「そのスキル使って」と、柔らかい声で支え続けてくれる。みるくはその声に背中を押され、少しずつ成長していく自分を感じていた。

数時間後、ようやくラストボスを撃破。達成感が胸いっぱいに広がった。

「やったー！クリアできた！」みるくは歓喜の声をあげる。

「お疲れさま、よく頑張ったね」と、フレンドさんの声に少し微笑みが混じっているのがわかる。「へたれだなんて言ってたけど、みるくもなかなかやるじゃん」

「うぅ…ありがとう。でも本当に私一人じゃ無理だったよ。フレンドさんがいなかったら…」

「まぁまぁ。そんな謙遜しなくていいさ」

みるくは画面越しにお礼を伝えながら、心の中で喜びが弾けるのを感じていた。彼女にとっては小さなことでも、こうして一緒に楽しみ、助け合える時間が何よりも貴重で、嬉しかった。

ストーリーが一段落し、ふとした沈黙が訪れる。

「そうだ、みるく。今日はこのまま寝る？」

「ううん、もう少し起きてるよ」

「じゃあ、Skypeで歌ってあげようか？」フレンドさんが提案する。

みるくはその言葉に目を見開く。実は彼が歌うのを聴くのは初めてだったが、以前、彼が趣味で歌を練習していると聞いたことがあった。

「いいの？恥ずかしくないの？」

「大丈夫。むしろリラックスできるんだよね。…それに、聞いてほしいな」

そう言われると、みるくの顔は自然と赤くなった。自分のために歌ってくれるというだけで、心がくすぐられるような温かさがこみ上げてきた。

数分後、Skypeでの通話が始まり、彼の歌声が部屋に響く。選んでくれたのは、穏やかなバラード。優しいメロディーと、低く澄んだ声が、みるくの心に深く染み入っていく。画面越しに聞くその歌声は、彼の姿を思い浮かべさせ、遠くにいるはずなのに、まるで隣にいるような感覚を覚えた。

歌い終わった後の静寂の中、みるくは心を落ち着けながら「ありがとう。すごく素敵だったよ」と言葉を絞り出した。

「そう言ってもらえると、やっぱり歌ってよかったな。…また聴きたいときは、いつでも言って」

みるくは、彼の言葉にほんのりと心が温まった。そして、画面の向こうにいるその人が、今この瞬間にとても近く感じられることに気づいた。

「うん、またお願いするね。…今日は本当にありがとう」

こうして、へたれゲーマーの夜は、彼の歌声に包まれて、静かに、しかし満ち足りた気持ちで幕を閉じていった。