へたれゲーマーだということを証明します

金貨の向こう側

金貨の向こう側

みるくは、手元の小さなメモ帳を見つめながら、自分が集めた資金の額に思わずため息をついた。所持金と銀行預金を合わせて78,415,965G。少しずつ、確実に増えていくお金。しかし、その膨大な額を前に、みるくはふと自分に問いかけた。

「これだけのお金、いったい何のために集めているんだろう？」

彼女は日々、効率的な狩りやアイテムの売買を続け、貯金を増やしてきた。珍しいアイテムを手に入れるたび、それを町の商人に売り払い、さらに新たな金策に励む。自然と金額は積み上がっていったが、それに伴って彼女の胸の中にはある疑問が渦巻き始めていた。

「欲しいものがあるから金策をしてるはずなのに…、何が欲しいのか、よくわからなくなってる。」

フィールドでの狩りも、ダンジョン攻略も、みるくにとっては日常の一部となりつつあった。レアアイテムを手に入れれば、それを町で高値で売りさばく。それが終われば次の狩り場へ。そしてまた金策の日々が繰り返される。みるくは一度も「これが欲しいから」と明確な目標を持って金策をしていたわけではなかった。そう思うと、急に自分の行動が虚しく感じられた。

その日も彼女はいつものようにフィールドで魔物を狩り、ドロップアイテムを手に入れた。しかし、ふと立ち止まって振り返ったとき、頭に浮かんだのは「何のためにこれを続けているのか」という疑問だった。

「私、何がしたいんだろう？」

みるくは足を止め、周りを見渡した。広大なフィールドに広がる美しい自然。遠くに見える山々や青い空は、彼女の胸に一瞬の安らぎを与えた。しかし、その景色を眺めているうちに、彼女はさらに考え込んでしまった。

「ただ、金策のために冒険をしているだけじゃ、いつか飽きてしまうかもしれない。」

そんな不安が、みるくの胸の中で広がっていった。これまでは、ただお金を増やすことが楽しかった。レアアイテムを手に入れることが刺激的で、次々に新しい目標を掲げて冒険を楽しんでいた。しかし、その先に何か具体的な目標や夢がなければ、冒険はただの作業に成り下がってしまうのではないかという思いが浮かんできた。

「何か、もっと大きな目標が欲しいな。」

そう考えながら、みるくは町に戻ることにした。彼女の足は自然と、大きな噴水がある広場へと向かっていた。そこには、以前から彼女がたまに訪れていた場所があった。大勢の冒険者が行き交い、賑わいを見せる中で、彼女は静かにベンチに腰掛けた。

「何か、やりたいことって、あるかな…？」

しばらく考え込んでいると、隣のベンチに座っていた老人が、優しい声で話しかけてきた。

「お嬢さん、何をそんなに考え込んでおるんじゃ？」

みるくは顔を上げ、老人に向かって微笑み返した。

「ちょっと、これからどうしようか考えてて…。お金はたくさんあるんですけど、何を目指しているのかがわからなくなってきちゃって。」

老人は深く頷き、ゆっくりと語り始めた。

「お金というのは、あくまで道具じゃ。使い方を考えないと、何の意味もない。ただ増やしていくだけじゃ、虚しいもんじゃよ。」

みるくは老人の言葉を噛みしめた。確かに、ただ金額が増えていくこと自体には意味がない。何か目指すべきものが必要だ。みるくは少し頭を振り、笑顔を浮かべた。

「そうですよね。これからは、もっと自分が本当に欲しいものを考えてみようと思います。」

老人はにっこりと笑い、みるくの言葉に応えた。

「それでいい。何かを達成したいという気持ちがあれば、自然と道は開けるものじゃ。」

みるくはその言葉を胸に刻み、新たな目標を探す決意を固めた。金策を続けるだけではなく、何か自分自身が心から欲しいもの、やりたいことを見つけるために、もう一度冒険を始めようと。

「まずは、冒険をもっと楽しんでみようかな。きっと、そのうち何かが見つかるはず！」

そう言って、みるくは立ち上がり、再びフィールドへと向かった。広がる大地に、彼女の新たな冒険が待っているのだから。