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へたれゲーマーのみるくが語る、本当の楽しさ

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「へたれゲーマーのみるくが語る、本当の楽しさ」

「もう、何これ?全然ドロップしないじゃん…」

みるくはゲームの画面を見つめ、ため息をついた。今日も彼女はオンラインゲーム『ファンタジア・ワールド』で素材集めをしていたが、欲しいアイテムは一向に手に入らない。仲間からは「また文句言ってる」と冷やかされるが、みるくにとってそれはお約束のようなものだった。

「へたれゲーマーだって自分で言ってるけど、そういうのも楽しさの一部なんだよね」と彼女は笑う。

実はみるく、自分が「へたれゲーマー」だということを隠そうとは思っていない。むしろ、自分から進んでそう言いながらゲームを楽しんでいる。なぜなら、ゲームの楽しさは上手さや勝利にあるのではなく、プレイする過程そのものにあると信じているからだ。

ある日、フレンドの一人が言った。

「みるく、どうしてそんなに文句言いながらも続けられるの?」

その問いに、みるくは少し考えた後、笑顔で答えた。

「だって、文句言うのも楽しいんだよ。ゲームって、上手くいかないことが多いけど、それを仲間と一緒に愚痴りながら笑い飛ばすのが、実は一番の醍醐味なんじゃないかな」

確かに、みるくはゲームの中でよく文句を言う。レアアイテムが手に入らない、ボスにやられてリトライばかり、仲間との連携がうまくいかず失敗する。それでも、彼女はゲームをやめることはなかった。むしろ、へたれながらも続けることにこそ、彼女のゲーマーとしての魅力があった。

「へたれゲーマーだからこそ、楽しむ余裕があるのかもね」と、みるくはいつも自分に言い聞かせている。

ある夜、いつものように素材狩りをしていた時、彼女は思いがけないメッセージを受け取った。

「みるくさん、いつも楽しそうにプレイしてますね。私も最近始めたんですけど、全然うまくいかなくて。でも、みるくさんのプレイスタイルを見て、私も少し気楽にやってみようと思いました」

このメッセージを読んだ瞬間、みるくの胸に何か温かいものが広がった。自分が「へたれゲーマー」だと公言しながらプレイすることで、誰かに良い影響を与えられるとは思ってもみなかった。

「うまくいかなくても、楽しんでればいいんだよ」

そう返信した後、みるくは自分のプレイスタイルについて改めて考えた。確かに、彼女は文句を言いがちで、何度も失敗する。だけど、その失敗があるからこそ、成功した時の喜びは何倍にも膨らむのだ。

ゲームの世界では、誰もが強いヒーローになりたがる。しかし、みるくにとっての「ヒーロー」は、強さだけではなく、失敗を受け入れ、それでも笑って続けられる人だ。自分がそうでありたいと願いながら、彼女は今日もログインボタンを押す。

「やっぱりゲームって、みんなで一緒に楽しむのが一番だよね」

みるくはフレンドリストを開き、仲間たちが集まっている場所へと向かった。そこでは、いつものように雑談が飛び交い、笑い声が聞こえる。

「みるく、また素材集め失敗したの?」と一人のフレンドがからかう。

「そうだよ!でも、だからこそ次は絶対成功するんだから!」

そう言って、みるくはゲームの画面に再び集中した。彼女にとって、へたれゲーマーであることは決して恥ずかしいことではなかった。それどころか、自分が楽しむことで周りの人たちにも楽しさを伝えることができると信じていた。

「みんな、また一緒に冒険しようね!」

その言葉に応えるように、仲間たちが集まり、次の冒険へと出発する準備を整え始めた。失敗しても、文句を言っても、それでも続けることの楽しさを知っているみるくにとって、これ以上の喜びはなかった。

「よし、次こそはレアドロップを狙うぞ!」

そう言いながら、みるくは今日も笑顔でゲームの世界へと足を踏み入れた。へたれゲーマーだからこそ、彼女の冒険はどこまでも続いていく。そして、その姿は、同じようにゲームを楽しむ全ての人に勇気と笑いを届けるのだ。

エピローグ

この物語を読んだあなたも、きっとみるくのようにゲームを楽しむことができるはずだ。うまくいかない時もあるけれど、失敗や挫折はゲームの一部。文句を言いながらも、それでも続けることで、本当の楽しさが見えてくる。

「へたれゲーマーで何が悪い!」と、みるくは今日も言うだろう。そして、あなたもその一員として、ゲームの世界に足を踏み入れてみてほしい。









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