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過去の亡霊たちのオンライン世界

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「過去の亡霊たちのオンライン世界」

オンラインゲーム「エターナル・フロンティア」は、かつてその広大な世界と深いストーリーで多くのプレイヤーを魅了していた。しかし、最近では運営の怠慢とともに、アップデートが遅れ、情報が古びてしまった世界として「過去の亡霊」と揶揄されている。

その中に、みるくもまた長年のプレイヤーとして存在していた。ログインして最初に目にするのは、もはや最新の情報とは言えない図鑑と掲示板だ。モンスターの生息地やドロップアイテム、攻略法さえも数年前から更新されておらず、プレイヤーはそれを頼りにすることができない。

「どうして、こんなにも放置されてしまったんだろう…」

みるくは、時折溜め息を漏らしながらゲームの世界を彷徨う。かつてはモンスター図鑑を参照し、戦略的に金策(ゲーム内の通貨を集めること)を行っていたが、今ではそれすらもできない。なぜなら、図鑑には明らかな間違いが多く、モンスターの出現場所やアイテムのドロップ率もすっかり変わってしまっているのに、運営は何一つ修正しない。

ある日、みるくは友人のリストを確認したが、そこには多くの名前が灰色になっていた。ログインしていないプレイヤーの数が圧倒的に多くなり、昔一緒に冒険した仲間たちも次々と姿を消していた。

「もうみんな辞めてしまったのかな…」

彼女が心の中で呟いたのは、ゲーム自体に対する不満だけではなく、かつての冒険の日々への懐かしさだった。このゲームの世界で繰り広げられる出来事は、いつもリアルの疲れた生活の中で彼女に一時の安らぎを与えていた。しかし、現実の世界でもゲームの世界でも、時が過ぎるとともに変わらなければならないものがある。だが、このゲームは変わらない。それどころか、退化しているようだった。

「今日はどうしようかな…」

そうつぶやきながらも、みるくは依然としてゲームにログインしていた。日々のクエストをこなすだけでは物足りなく、彼女は新たな装備やアイテムを手に入れようと考えていた。だが、アイテムの価格が完全に崩壊しているのが現状だった。

「これ、昔はもっと高かったはずじゃない? どうしてこんなに安くなってるの?」

彼女がゲーム内のマーケットを覗き込むと、かつて大金を払って手に入れたはずの武器や防具が、今では価値を失っていた。逆に、何の価値もないはずのゴミアイテムが、莫大な価格で取引されていることに驚かされた。金策が重要だというのに、マーケットは詐欺まがいの価格設定ばかりで、まともに稼ぐことさえ難しくなっていた。

「どうすればいいのかな…これじゃあ何もできないじゃない」

彼女の頭の中は混乱していた。何を信じて行動すれば良いのか、全てが不透明だった。インターネットで攻略情報を探しても、どれも古く、あるいは信用できない情報ばかりだ。プレイヤー同士が共有している情報も、時には嘘や誤解が含まれており、混乱に拍車をかける。

「もう、何も信じられない…」

みるくは、久しぶりにゲームの公式フォーラムを開いてみた。そこには、同じように嘆くプレイヤーたちの書き込みが並んでいた。

「運営はもうこのゲームを捨てたのか?」 「図鑑の情報が間違ってるなんて、これじゃあまともにプレイできない」 「誰か正確な金策の方法を教えてくれ!」

それらの声は、みるくの心に共鳴するものだった。しかし、それらに対する運営の反応は全くなかった。ゲームの未来がどうなるのか、運営がどれだけこの世界を気にかけているのかは、もはや誰にもわからない状況だった。

「もう、やめたほうがいいのかな…」

みるくは、ふとそんな思いが頭をよぎった。しかし、ゲームをやめるという決断は容易ではなかった。リアルの世界では、彼女は日々の忙しさやストレスに追われていた。このゲームは、そんな現実から逃れるための唯一の安らぎの場所だった。だが、その場所すらも今や彼女をストレスで押しつぶそうとしている。

その日、みるくは倉庫の整理をしようと思った。大量に溜まった不要なアイテムを売って少しでも通貨を稼ごうと考えたからだ。だが、倉庫を開いた瞬間、彼女はその混乱した状態に目を見張った。

「これ、どうやって整理すればいいの?」

そこには、イベントで手に入れたまま放置していた大量のアイテム、全く使う予定のない装備品、そして売れもしないゴミのようなアイテムが山積みになっていた。どれを捨てていいのか、どれを売るべきなのか、まったくわからない。彼女はただその画面を見つめ、ため息をついた。

「ねえ、みるく、そろそろ一緒に別のゲームでも始めない?」

突然、昔からのゲーム仲間であるユキが声をかけてきた。彼女もまた、この「エターナル・フロンティア」に長く付き合ってきた一人だが、最近では他のゲームに移行していた。

「うん…もうそろそろ限界かもしれない」

みるくは、少し考え込んだ後、そう答えた。新しいゲーム、新しい世界、新しい冒険――その選択肢が、彼女の心を少しだけ軽くした。これ以上、古びた世界に縛られる必要はないのかもしれない。新たな場所では、過去の亡霊たちに苦しめられることはないだろう。

「じゃあ、次は何にする?」

ユキの言葉に、みるくは小さく笑って応えた。

「何でもいいよ。荷物の整理がいらない場所ならね。」

彼女はようやく、過去の重荷を少しずつ手放す決意をしたのだった。









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