へたれゲーマーだということを証明します

みるくが買うんじゃないってば

みるくが買うんじゃないってば

「またマイタウンを新調したよ！今回はトゥーンタウン！」
みるくはパソコンの前で声を上げた。彼女のキャラクターがカラフルな街の中心に立つ姿が画面に映し出されている。これで三つ目のタウンになる。丘の町、農園、そして新たなトゥーンタウン。普通ならサブキャラに持たせるものだが、みるくは自分のキャラで全てを所有することにこだわりがあった。

「サブに持たせると課金が増えるから、私は全部お嬢に投資するの！」みるくは笑いながら独り言を言った。彼女のキャラクター、お嬢はゲーム内で最も輝かしい姿を誇る。煌びやかな衣装に身を包み、いつもみるくの理想を体現していた。

ゲーム仲間のユーリはみるくの新たな購入を知り、チャットで驚きのメッセージを送ってきた。「すごいね！三つもタウン持ってるなんて普通じゃ考えられないよ。ところで、みるくが全部買ってるの？」

「違う違う、みるくが買ってるわけじゃないってば！」みるくは慌てて否定した。だが、その言葉にはどこか含みがあった。実際には、彼女のキャラクターである「お嬢」が買っているという建前なのだが、それはただの言い訳に過ぎない。実際は、みるく自身が現実のお金を費やしていることに変わりはない。

「まあ、みるくのキャラってことだからね！」ユーリは笑いをこらえながら答えた。「でも、そんなにたくさん持ってどうするの？」

みるくは少しだけ黙った後、画面の中の街並みを眺めながら答えた。「うーん、気分とか季節でタウンを変えたくなるんだよね。現実でできないことを、ゲームの中で楽しんでるだけだから。」

現実では、みるくは普通のOLで毎日のように忙しく働いていた。上司の指示に従い、同僚との協調を重視し、家庭では家事に追われる日々。そんな中で、ゲームは彼女にとって唯一の逃避場所だった。自由に自分の理想を作り上げ、好きなように時間を過ごすことができる場所。それが、みるくにとってのマイタウンだった。

「でも、リアルの自分も大事にしなきゃね。」ユーリは優しく忠告した。彼女はみるくが現実とゲームのバランスを取りきれずにいるのを見抜いていた。

みるくは少しだけため息をついた。「うん、わかってる。でも、なんかね、現実の世界って思い通りにいかないことばっかりで。ゲームの中なら、全部自分の手で作れるからさ。」

その言葉にユーリは何も言えなかった。みるくの気持ちはよくわかる。それでも、どこかで彼女が現実に向き合うことも必要だと感じていた。

「まあ、今日も金策頑張らなきゃね。お嬢のために！」みるくは気を取り直して、ゲーム内での作業に戻った。彼女のキャラクターは画面の中で生き生きと動き回り、次々とタスクをこなしていく。みるくはその姿に自分を重ねていた。

「みるくが買うんじゃない、ってば！」みるくは自分に言い聞かせるように繰り返した。現実の出費を見ないふりして、ゲーム内での「お嬢」の成長にすべてを注いでいた。彼女の中ではそれが唯一の現実逃避であり、同時に希望でもあった。

現実の課題や問題は決してなくならない。しかし、みるくにとっては「お嬢」のために頑張ることが、現実を少しでも楽に生きるための糧になっていた。彼女は今日もまた、ゲームの中で新しい冒険を始める準備をしていた。それが、彼女なりの生きる力だったのだ。