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どうしようもないやつじゃないんだよ

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どうしようもないやつじゃないんだよ

リビングのテーブルには、クレヨンで描かれた無数の絵が散らばっていた。星、宇宙船、恐竜、そして見たこともない奇妙な生き物たち。直葉(すぐは)はその中心で、膝を抱えて座っていた。彼の周りには家族が集まり、母親の理沙(りさ)は深いため息をついていた。

「また学校で宿題を忘れてきたって先生から連絡があったわ」

「どうしてちゃんとできないのかしらね」父親の宏(ひろし)はそう言って、テーブルに置かれた学校からの連絡ノートを見つめていた。ページには赤い文字で「宿題を提出しませんでした」「授業中、集中できずに席を立ちました」といった注意が並んでいた。

直葉は、静かに肩をすくめた。彼にはどうして自分が他の子どもたちと違うのか、よくわからなかった。集中することが難しくて、授業中にもいつも頭の中がぐるぐると回っていた。先生の話が右耳から左耳へと抜けていく。教科書の文字は踊るように見えて、ページをめくるたびに違う世界が広がっていた。

「直葉、ちゃんと話を聞いてる?」母親の声がするたびに、彼は現実に引き戻される。だけど、次の瞬間にはまた自分の頭の中の冒険が始まるのだ。

ある日、学校から帰ってきた直葉は、部屋で静かに泣いていた。先生に「どうしていつも注意ができないの?」と叱られ、クラスメートたちの視線も冷たかった。彼は「どうしようもないやつ」と言われるたびに、自分が何か間違った存在であるように感じてしまった。

母親はそんな直葉の様子に気づき、静かに彼の部屋に入ってきた。理沙は直葉の隣に座り、優しく頭を撫でた。「ねえ、直葉。今日はどんな一日だった?」

直葉は少し考えて、ゆっくりと話し始めた。「学校でまた怒られた。みんなみたいにちゃんとできないんだ。なんで、どうしようもないやつなんだよ」

その言葉を聞いて、理沙は胸が痛んだ。何度も専門家に相談してきたが、直葉には「注意欠如多動性障害(ADHD)」の診断が下されていた。周りが見えないほど集中する瞬間があったかと思えば、急に何も手につかなくなる。それが直葉の日常だったのだ。

理沙は、部屋の棚から一冊の本を取り出して、直葉に見せた。「これはね、アルベルト・アインシュタインっていう葉の本なの」

直葉は興味津々で表紙を眺めた。「この葉、誰?」

「アインシュタインはね、すごい人だったんだよ。彼も小さい頃、学校でうまくやれなかった。先生からは変わり者だって思われてたし、授業中に話を聞かないことも多かったんだって。でもね、彼は自分の頭の中にあるアイデアを大事にして、誰も考えたことのないようなことを見つけたんだ」

「どうしようもないやつじゃなかったの?」直葉は不思議そうに尋ねた。

理沙は微笑みながら首を振った。「ううん、アインシュタインは自分の中にある光を見つけたの。普通じゃないってことは、それだけで特別なんだよ。直葉も、自分の頭の中にたくさんの宝物を持ってる。誰も見たことのない星や、宇宙船や、恐竜だっている。だから、それを大切にしていいんだ」

直葉は少し考えてから、再びクレヨンを手に取った。白い紙に大きな丸を描き、その中にたくさんの星を描き込んでいった。彼の頭の中では、もう一度冒険が始まっていた。理沙はその様子を見て、そっと彼の肩に手を置いた。

「直葉、どうしようもないやつじゃないんだよ。あなたにはあなたのやり方があるんだ。私もお父さんも、それを信じてるからね」

彼女の言葉は、まるで小さな灯りのように直葉の胸に暖かく染み渡った。自分が特別であること、自分の見つけるべき光があることを信じてみよう。理沙の言葉に励まされた直葉は、自分の世界をもっと自由に描いてみることにした。

その日から、直葉の描く絵はますます独創的になった。彼は宇宙の果てまで飛んで行き、見たこともない生き物たちを描き出す。学校ではまだまだ問題児扱いされることもあったが、それでも彼は自分の世界を信じ続けた。理沙もまた、直葉の絵を見て、彼の未来にはきっと無限の可能性があると信じていた。

直葉の中にある特別な光。それは誰も奪えない、彼自身の大切な宝物だった。大人たちがどう言おうと、彼の世界は広がり続ける。そして、いつかきっとその光が、誰かを照らす力になるだろう。そう信じて、直葉は今日もまた新しい冒険に旅立つのだった。

この物語は、ADHDを持つ子供が自分の特別な能力を見つけていく過程を描いた2000文字の小説です。彼の母親の優しい支えと、アルベルト・アインシュタインのエピソードを通じて、自分自身の特別さを信じる勇気を描いています。










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