へたれゲーマーだということを証明します

ボスの前で立ち止まる

「ボスの前で立ち止まる」

深いダンジョンの奥、薄暗い石の廊下を抜けて、ボスの部屋の前までたどり着いた。そこには巨大な扉がそびえ立ち、重々しい空気が漂っていた。アルト、パーティーのリーダーである剣士は、手にした剣をぎゅっと握りしめた。共に戦ってきた仲間たちも、緊張の面持ちで彼を見つめている。だが、その顔には迷いや恐れも見え隠れしていた。

「いよいよだな、みんな。」アルトは振り返り、仲間たちに声をかけた。戦士のリオ、弓使いのリナ、そして僧侶のセラ。彼らはそれぞれが自分の役割を果たし、ここまで苦労してやってきた。だけど、今のパーティーは決して万全ではない。

「すぐはどう？」アルトがリオに尋ねた。リオは頭をかすかに振った。「もうすぐでレベルが上がるかと思ったけど、ギリギリだな。これ以上、雑魚を狩っている時間もない。」

セラも神妙な顔で答える。「ごめんね、みんな。MPがもう残ってないの。回復魔法も使えないし、もう何もできない。」

アルトはうなずいた。リナも弓を構えながら言う。「やくそうはあるけど、MPを回復するものはないわ。ボス戦に入るには、やっぱり無謀かも…。」

でも、ここまで来て立ち止まるわけにはいかない。パーティーのレベルはボス戦に挑むにはギリギリ。少しでもミスをすれば全滅は避けられない。しかし、全員がその覚悟を決めていた。

「全滅しても、ここまで来た意味がある。」アルトが言うと、他のメンバーも同意の意を込めて頷いた。全てを賭ける時が来た。

アルトは巨大な扉に手をかけ、ゆっくりと開けた。重々しい音が響き、目の前に広がったのは広大な空間。中央には鎖に繋がれた巨大なドラゴンがいた。冷たい青い目がパーティーを見下ろし、怒りと憎悪のうねりが場を包み込む。彼らがこれまで倒してきたどの敵とも異なる圧倒的な存在感がそこにあった。

「このままだと全滅するかもしれない。でも、やれるだけのことはやろう。」アルトは剣を構えた。パーティーの皆もそれぞれの武器を手に取り、戦闘態勢に入る。

リオが真っ先に飛び出し、盾を掲げてドラゴンの攻撃を防いだ。だが、圧倒的な力の前にリオの盾はすぐに砕け散り、リオは吹き飛ばされた。リナは矢を放ち続けるが、ドラゴンの硬い鱗に阻まれ、ほとんどダメージが通らない。

「くそっ、どうすれば…」アルトは必死で攻撃の隙を探すが、ドラゴンの攻撃は容赦なく襲いかかる。セラも必死に回復薬を仲間に分け与えるが、やはりMPがなければ十分な回復ができない。

戦闘は次第にパーティーの劣勢へと傾いていった。リオは倒れ、リナも矢が尽きかけていた。セラは最後の回復魔法を使い果たし、アルトは傷だらけになりながらも戦い続けていた。しかし、その目にはすでに限界が見え始めていた。

「これが…俺たちの…限界なのか？」アルトは苦しそうに言い、膝をついた。その瞬間、ドラゴンの尾が振り下ろされ、パーティー全員が吹き飛ばされた。

意識が遠のく中、アルトは微かに微笑んだ。彼はここまで戦い抜いたことを誇りに思っていた。そして、いつかまた仲間たちと共にこの場所に戻ってくることを誓った。

目を閉じる瞬間、アルトの耳には仲間たちの声が聞こえた。誰もが全力を尽くし、最後の一瞬まで戦ったのだ。そして、その努力は無駄ではないと信じていた。

画面が暗転し、「全滅」の文字が浮かび上がる。しかし、その向こうにはまだ見ぬ未来が広がっている。いつかこの壁を越えて、ドラゴンを討ち倒す日が来る。アルトと仲間たちは、それを信じて再び立ち上がるのだった。