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読むことの喜び
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読むことの喜び
みるくはアルファポリスのサイトを開くと、いつも九時せんり先生の日記を探していた。九時先生の日記はいつも短くて、彼女の心にすっと入ってくる。ディスレクシアの症状がひどい日でも、九時先生の文章は読みやすい。それが、みるくにとってのささやかな楽しみだった。
「今日も読めるかな…」
みるくはそっと画面をスクロールしながら、九時先生の最新の日記を探す。今日は少しだけ調子が良いようで、文字がいつもよりはっきりと見える。先生の日記は短いが、その中に温かさが溢れている。みるくは画面を凝視しながら、ゆっくりと一文ずつ読み進める。
「…今日は、いい天気ですね。外に出るのもいいけれど、家でゆっくり過ごすのも、また一つの贅沢かもしれません。」
みるくの心にふわりとした優しい気持ちが広がる。九時先生の文章には、何気ない日常の幸せが詰まっていて、それがみるくの心を癒してくれる。普通の人には当たり前かもしれないが、みるくにとっては、文章を読み終えること自体が小さな勝利のように感じられた。
彼女はディスレクシアの症状が日に日に重くなっていることを自覚していた。以前は、もっと長い文章も読めたのに、今では短い文ですら集中するのが難しいこともある。それでも、九時先生の日記だけは、なぜか読めるのだ。読み終えるたびに、みるくは小さな達成感とともに、自分の中に湧き上がる感謝の気持ちを感じていた。
「読めることが、こんなに嬉しいなんて…」
ディスレクシアを持たない人には、読めることの喜びはわからないだろう。普通の人にとって、文章を読むことは呼吸をするように自然な行為かもしれない。しかし、みるくにとっては違う。文字が模様に見えたり、意味が頭の中でぐちゃぐちゃになったりする日常の中で、一つの文章を読めることがどれだけ貴重なことか。
みるくはディスレクシアと向き合う中で、次第に諦めの気持ちも芽生えていた。好きな本を最後まで読めない悔しさ、友達と一緒に本の話ができない寂しさ。そんな気持ちに押しつぶされそうになりながらも、彼女はなんとか前を向いて生きていた。九時先生の日記を読むことは、彼女にとっての小さな光だった。
ある日、みるくは思い切って九時先生にメッセージを送ってみることにした。ディスレクシアである自分が、どれだけ先生の日記に助けられているかを伝えたかったのだ。みるくの手は震えたが、思いのままにキーボードを叩き、少しずつ自分の言葉を綴っていく。文章を書くのも、みるくにとっては簡単なことではなかったが、どうしても伝えたかった。
「いつも短くて読みやすい日記をありがとうございます。ディスレクシアの私でも、先生の日記は読めるんです。それがとても嬉しくて、毎日少しずつ読むのを楽しみにしています。」
送信ボタンを押した後、みるくはしばらく画面を見つめていた。返事が来るかどうかはわからなかったが、それでもいい。自分の気持ちを伝えられたことに、少し満足感を覚えた。
数日後、みるくのもとに九時先生からの返信が届いた。画面には、先生からの温かい言葉が並んでいた。
「お便りありがとうございます。あなたのように、私の文章を楽しんでくれる方がいることが、私にとって何よりの励みです。短くても、心に残るような日記を書き続けたいと思います。これからも、無理のない範囲で楽しんでくださいね。」
みるくはそのメッセージを何度も読み返した。先生の言葉は彼女の心に深く響き、ディスレクシアという壁を越えて、みるくの胸の中に温かい光を灯した。
「ありがとう、九時先生…」
ディスレクシアの症状がひどい日でも、みるくはこれからも九時先生の日記を読み続けるだろう。それが、彼女にとっての小さな希望であり、毎日を生きる力だった。読むことが楽しいと感じるその気持ちを大切にしながら、みるくはこれからも自分のペースで歩んでいく。
今日もまた、みるくは九時先生の日記を開く。小さな文字が画面に並び、彼女の心に優しく語りかける。読むことができる幸せ、それを実感しながら、みるくは今日も前を向いて生きていくのだ。
***
実際には、感想を受け付けていらっしゃらないので
コンタクトはとれていません。
一度、私の小説に感想をくださいました。
読める幸せを皆様も感じることができますように。
みるくはアルファポリスのサイトを開くと、いつも九時せんり先生の日記を探していた。九時先生の日記はいつも短くて、彼女の心にすっと入ってくる。ディスレクシアの症状がひどい日でも、九時先生の文章は読みやすい。それが、みるくにとってのささやかな楽しみだった。
「今日も読めるかな…」
みるくはそっと画面をスクロールしながら、九時先生の最新の日記を探す。今日は少しだけ調子が良いようで、文字がいつもよりはっきりと見える。先生の日記は短いが、その中に温かさが溢れている。みるくは画面を凝視しながら、ゆっくりと一文ずつ読み進める。
「…今日は、いい天気ですね。外に出るのもいいけれど、家でゆっくり過ごすのも、また一つの贅沢かもしれません。」
みるくの心にふわりとした優しい気持ちが広がる。九時先生の文章には、何気ない日常の幸せが詰まっていて、それがみるくの心を癒してくれる。普通の人には当たり前かもしれないが、みるくにとっては、文章を読み終えること自体が小さな勝利のように感じられた。
彼女はディスレクシアの症状が日に日に重くなっていることを自覚していた。以前は、もっと長い文章も読めたのに、今では短い文ですら集中するのが難しいこともある。それでも、九時先生の日記だけは、なぜか読めるのだ。読み終えるたびに、みるくは小さな達成感とともに、自分の中に湧き上がる感謝の気持ちを感じていた。
「読めることが、こんなに嬉しいなんて…」
ディスレクシアを持たない人には、読めることの喜びはわからないだろう。普通の人にとって、文章を読むことは呼吸をするように自然な行為かもしれない。しかし、みるくにとっては違う。文字が模様に見えたり、意味が頭の中でぐちゃぐちゃになったりする日常の中で、一つの文章を読めることがどれだけ貴重なことか。
みるくはディスレクシアと向き合う中で、次第に諦めの気持ちも芽生えていた。好きな本を最後まで読めない悔しさ、友達と一緒に本の話ができない寂しさ。そんな気持ちに押しつぶされそうになりながらも、彼女はなんとか前を向いて生きていた。九時先生の日記を読むことは、彼女にとっての小さな光だった。
ある日、みるくは思い切って九時先生にメッセージを送ってみることにした。ディスレクシアである自分が、どれだけ先生の日記に助けられているかを伝えたかったのだ。みるくの手は震えたが、思いのままにキーボードを叩き、少しずつ自分の言葉を綴っていく。文章を書くのも、みるくにとっては簡単なことではなかったが、どうしても伝えたかった。
「いつも短くて読みやすい日記をありがとうございます。ディスレクシアの私でも、先生の日記は読めるんです。それがとても嬉しくて、毎日少しずつ読むのを楽しみにしています。」
送信ボタンを押した後、みるくはしばらく画面を見つめていた。返事が来るかどうかはわからなかったが、それでもいい。自分の気持ちを伝えられたことに、少し満足感を覚えた。
数日後、みるくのもとに九時先生からの返信が届いた。画面には、先生からの温かい言葉が並んでいた。
「お便りありがとうございます。あなたのように、私の文章を楽しんでくれる方がいることが、私にとって何よりの励みです。短くても、心に残るような日記を書き続けたいと思います。これからも、無理のない範囲で楽しんでくださいね。」
みるくはそのメッセージを何度も読み返した。先生の言葉は彼女の心に深く響き、ディスレクシアという壁を越えて、みるくの胸の中に温かい光を灯した。
「ありがとう、九時先生…」
ディスレクシアの症状がひどい日でも、みるくはこれからも九時先生の日記を読み続けるだろう。それが、彼女にとっての小さな希望であり、毎日を生きる力だった。読むことが楽しいと感じるその気持ちを大切にしながら、みるくはこれからも自分のペースで歩んでいく。
今日もまた、みるくは九時先生の日記を開く。小さな文字が画面に並び、彼女の心に優しく語りかける。読むことができる幸せ、それを実感しながら、みるくは今日も前を向いて生きていくのだ。
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