へたれゲーマーだということを証明します

作業の果て

作業の果て

朝5時。みるくはいつものように、まだ暗い部屋でパソコンを起動した。机の上にはコーヒーの空き缶が転がり、夜中に食べたスナック菓子の袋が散らばっている。画面にはオンラインゲームのログイン画面が映し出され、みるくはゲームパッドを手にしてログインボタンを押した。毎日の日課のようなものだ。だが、今日は少し違った気分だった。

ゲーム内に入ると、みるくのキャラクターはすでに見慣れた場所に立っていた。まるで昨日から時間が止まっているかのように、同じ風景、同じ背景音。彼女の目標はただ一つ、レベルを上げること。単調な作業を繰り返すだけの毎日。みるくは、ゲームの中でも現実と同じような退屈さを感じていた。

「さて、今日も作業の始まりだ…」と、みるくはつぶやいた。画面の向こうでは敵がいつも通り現れて、彼女のキャラクターに襲いかかる。ボタンを押して、スキルを発動し、敵を倒す。経験値バーは少しだけ伸びたが、ほんのわずかだった。何度も何度も同じことを繰り返しているのに、レベルアップには程遠い。

「何でこんなことしてるんだろう…」みるくは、ふと虚しさを感じた。ボス戦なら、緊張感や達成感がある。新しいコンテンツに挑戦するなら、失敗してもそれが経験となり、次につなげることができる。だが、この作業感満載のレベル上げはただの苦痛にしか感じられなかった。

昨日も同じように何時間もレベル上げに励んだが、結局1レベルも上がらなかった。朝起きて、ゲームにログインしても、何も変わらない。もしかしたら、自分の時間を無駄にしているのではないかとさえ思い始めた。

「たかが作業ゲームのレベル上げで全滅なんて、やってられないよ…」みるくはため息をついた。今日は一度も勝てていない。朝からテンションがダダ下がりで、気分が落ち込むばかりだ。敵の攻撃を受けるたびに、画面の中のキャラクターが倒れる。復活するのにも時間がかかるし、その間、みるくはただ無意味に時間を浪費しているような気がした。

「本当にこのままでいいのかな…」みるくは、ゲームの画面を見つめながら考えた。この時間は、自分のためになっているのだろうか。それとも、ただの逃避に過ぎないのだろうか。

彼女はふと、友達と一緒に遊んでいた頃を思い出した。みんなで集まって、ダンジョンを攻略したり、新しい装備を手に入れたり。その時の楽しさは、今とは比べ物にならない。今は、ただ孤独に作業を続けているだけで、楽しさなんて感じる余裕もない。

「もうやめようかな…」みるくは、ついに口に出して言った。ゲームをやめるのは簡単なことだ。ログアウトボタンを押せば、すべてが終わる。それでも、なぜかその一歩を踏み出せない。毎日ログインしてしまう自分がいる。結局のところ、現実から逃げるための逃避手段としてのゲームは、まだみるくにとって必要なものだったのだ。

「でも…」彼女は再びコントローラーを握り直した。朝日が窓の外から差し込み、部屋の中を少しだけ明るくした。みるくはもう一度キャラクターを動かし、敵に立ち向かう。たとえレベルが上がらなくても、何かを達成したいという気持ちだけは消えなかった。たかが作業ゲーム、されど作業ゲーム。いつかはレベルアップできると信じて、今日もまた少しずつ前進することに決めた。

画面の中のキャラクターが再び敵に立ち向かう。スキルを使い、攻撃を繰り出す。少しずつ経験値バーが伸びていくのを見て、みるくはわずかながらも達成感を感じた。それがどれだけの意味を持つのかはわからないが、少なくとも彼女にはその瞬間が必要だった。

「明日はもっと頑張ろう」みるくは、そう自分に言い聞かせてゲームを続けた。レベルが上がる日は遠いかもしれないが、その過程で得られるものもきっとあるはずだ。たとえ小さな一歩でも、それを積み重ねていくことで、いつかは大きな成果に繋がると信じていた。

外の世界がどれだけ厳しくても、ゲームの中では自分のペースで進める。みるくは、そんな小さな幸せを噛みしめながら、またひとつ敵を倒した。そして、その度に少しずつ自分を取り戻していく気がした。朝の光が少しずつ部屋を明るく照らし始める中、みるくはもう一度自分を奮い立たせた。たとえ今日は1レベルも上がらなくても、明日はまた違う結果になるかもしれない。

みるくは、そんな希望を胸に抱きながら、ゲームの中のキャラクターとともに次の戦いへと向かっていった。現実は相変わらず厳しいが、少しでも前に進むための力を得るために。彼女は再び画面に集中し、敵に立ち向かう。たかがゲーム、されどゲーム。その中に自分の居場所を見つけることができる限り、みるくは今日もまた頑張ってみようと思った。