傀儡の王

春秋花壇

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「傀儡の王」—2

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「傀儡の王」—2

アレクシス三世はギルベルトを退ける決意をしたが、その道は険しいものだった。宮殿内の役人や貴族たちは皆、長年にわたりギルベルトに従っていた。彼らは若き王をただの象徴として見ており、王の発言や行動には関心を持っていなかった。

しかし、アレクシス三世は動いた。

まず、彼は少数ながらも信頼できる者たちを集めた。忠誠心の厚い侍従長カリン、そしてかつて父王に仕えていた老将軍ヴァレンティンだ。彼らはすでにギルベルトの横暴に気づいており、王の新たな決意に驚きつつも、心から支持を表明した。

「陛下、おそらく宮殿内でのギルベルトの影響力は絶大です。しかし、民衆の力を集めれば、彼に打ち勝つことができるでしょう」とヴァレンティンは進言した。

「その通りだ。しかし民は疲れきっている。物価の高騰、増税、失業…私は彼らの苦しみを知った。まずは彼らの信頼を取り戻さなければならない」とアレクシス三世は答えた。

王はまず、緊急の政策を打ち出した。食糧不足を解消するため、宮廷の余剰食糧を都市部の市場に回すことを決定した。また、物価の抑制を図るため、ギルベルトが推し進めていた過剰な課税を一時的に停止した。これにより、貧しい民たちに少しでも生活の余裕を取り戻させようとしたのだ。

だが、ギルベルトはすぐに反撃に出た。

「陛下、これでは財政が崩壊してしまいます。民に甘い顔を見せれば、彼らはさらなる要求をしてくるでしょう。私がここに来た目的は、国の安定を保つことです」とギルベルトは言葉巧みに王を説得しようとした。

「違う、ギルベルト。お前は民を抑えつけ、私をも操ろうとしてきた。しかし私はもう操り人形ではない。国の未来は、私の手で守る」とアレクシス三世はきっぱりと答えた。

その瞬間、宮廷内の空気は一変した。長年ギルベルトに従っていた貴族たちは動揺し始めた。だが、アレクシス三世は怯まなかった。

次に王は、自らの改革の象徴として、民衆の中に直接出向くことを決意した。彼はカリンとヴァレンティン、少数の護衛を連れ、再び宮殿を抜け出した。今回は変装ではなく、堂々と王としての姿で街へ向かったのだ。

王が市場に現れた瞬間、民衆は驚き、ざわめき始めた。彼らの多くは王が自分たちのために何かをしてくれるなど思ってもみなかったのだ。しかしアレクシス三世は、彼らの前で直接話しかけた。

「私は、皆の苦しみを見てきた。そしてそれを放置していたことを謝罪する。これからは私が、この国を守り、皆のために働くことを誓う。ギルベルトによる過酷な税制は廃止し、国の富を再び皆に分け与えるだろう」

その言葉に、民衆は沈黙した。彼らは王の言葉が本物であるかどうかを判断できなかった。しかし、王が宮殿を抜け出し、直接語りかける姿を見たことで、少しずつ信頼が芽生え始めた。

一方、ギルベルトはこの動きを危険視していた。彼は密かに反乱の準備を進め、王を再び傀儡として取り戻すか、あるいは排除するつもりであった。

数日後、宮廷でギルベルトの策謀が明るみに出た。彼が軍の一部を買収し、クーデターを計画していたのだ。それを知ったアレクシス三世は、すぐにヴァレンティンと共に対策を講じた。彼は民衆に呼びかけ、支持を得て、ギルベルトの陰謀を暴露する演説を行った。

「この国を破壊しようとした者がいる。しかし、私たちは決して屈しない。私たちの未来は、皆の手で築かれるものだ!」

その言葉に呼応するように、民衆は立ち上がり、ギルベルトの部隊に対して抗議を始めた。民衆の圧力とヴァレンティン率いる正規軍の力により、ギルベルトはついに失脚し、捕らえられた。

ギルベルトが処刑された後、アレクシス三世は正式に国を統治し始めた。彼は一貫して民衆の声に耳を傾け、経済改革を進め、国の再建に取り組んだ。かつては傀儡であった王は、今や真の統治者として、その名を歴史に刻むこととなった。

王の統治は、決して容易ではなかった。しかし彼は、民と共に歩むことの重要性を理解していた。そしてその道のりは、民の信頼と共に築かれた強い国の未来へと続いていくのだった。









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