季節の織り糸

雪解けの調べ ～凍える心に灯る温もり～ 1月27日

雪解けの調べ ～凍える心に灯る温もり～

中世ヨーロッパのとある山間の村、シュネーベルク。厳しい寒さが続く冬の日々、村は深い雪に覆われていた。空は重い鉛色の雲に覆われ、時折、雪催の空模様を見せていた。底冷えのする空気の中、人々は暖炉の火を囲んで過ごすのが常だった。

村の中心にある広場には、子供たちが作った大きな雪だるまが、寂しげに立っていた。その周りには、雪合戦の跡が残り、子供たちの歓声が遠い記憶のように蘇る。広場の片隅には、寒牡丹が雪の下でひっそりと蕾を膨らませていた。力強く咲くその姿は、春の訪れを待ちわびる村人たちの心の支えとなっていた。

村の入り口近くに住む老女、マルタは、小さな庭で冬菫を大切に育てていた。雪の下で健気に咲く紫色の花は、厳しい冬の中で唯一の彩りだった。庭の隅には、赤い実をつけた千両が寒空の下で鮮やかに映えている。その隣には、色とりどりの葉牡丹が寒さに負けじと葉を広げていた。

マルタは、毎年この時期になると、村の子供たちに寒餅を配るのが恒例だった。今年は雪が多く、餅をつくのも一苦労だったが、子供たちの喜ぶ顔を思い浮かべながら、一つ一つ丁寧に餅を丸めていった。餅米を蒸す湯気が、底冷えのする空気をほんのりと温めた。

その日、マルタの家には、幼い兄妹、ヨナスとエリーゼが訪ねてきた。二人はちゃんちゃんこを着て、寒さから身を縮こませていた。マルタは二人を暖かく迎え入れ、温かい部屋へと招き入れた。

「さあさあ、中に入りなさい。寒いでしょう。温かいお茶と、お餅を用意してあげるからね。」

マルタは優しく微笑みながら言った。子供たちは嬉しそうに部屋に入り、暖炉のそばに座った。マルタは温かいお茶とお餅を出し、子供たちに手渡した。熱いお茶を飲むと、体の芯から温まる気がした。餅を頬張ると、甘くて優しい味が口の中に広がり、子供たちの顔に笑顔が戻った。

「マルタおばあちゃん、このお餅、とっても美味しい！」

ヨナスは目を輝かせながら言った。エリーゼも嬉しそうに頷いた。

「そうかい、それはよかった。たくさん食べて、体を温めなさい。」

マルタは子供たちの頭を撫でながら言った。

その日の夕方、村では小さな祭りが行われた。雪催の空の下、村人たちは広場に集まり、暖炉の火を囲んだ。子供たちは雪だるまの周りを駆け回り、大人たちは温かい飲み物を飲みながら談笑していた。マルタは子供たちに寒餅を配り、大人たちには温かい飲み物を振る舞った。

祭りの終わりには、村の長老が教会に飾るための柊を採りに行くことになった。柊は冬の魔除けとして、この村では大切にされていた。長老は雪沓を履き、雪深い山へと向かった。凍てつくような寒さの中、凍り付いた月が空高く輝いていた。長老は慎重に雪を踏みしめながら進み、立派な柊の木を見つけた。枝を丁寧に切り取り、村へと持ち帰った。

教会には、立派な柊が飾られた。その緑の葉と赤い実のコントラストは、雪に覆われた村の中で、力強い生命力を感じさせた。村人たちは、柊を見て、春の訪れを心待ちにした。

祭りが終わり、人々が家路につく頃、雪が降り始めた。静かに降り積もる雪は、村を再び白く染めていった。マルタは家に戻り、暖炉の火を見つめていた。子供たちの笑顔、祭りの賑わい、そして柊の緑。今日の出来事を思い出しながら、マルタは穏やかな気持ちで眠りについた。

厳しい冬はまだ続く。しかし、村人たちの心には、温かい火が灯っていた。それは、マルタの優しさ、子供たちの笑顔、そして春を待つ力強い生命力。雪の下で蕾を膨らませる寒牡丹のように、冬菫のように、彼らは春の訪れを信じ、希望を胸に抱きながら、この冬を乗り越えていくことだろう。

この物語では、与えられた季語を自然な形で物語に組み込み、中世ヨーロッパ風の村の冬の暮らしを描きました。特に、マルタと子供たちの交流を通して、厳しい寒さの中でも温かい心の交流があることを表現しました。また、柊が魔除けとして大切にされているという風習も取り入れました。


1月27日

雪だるま

寒牡丹

雪　催

寒牡丹

雪

煮　凝

冬　菫

千　兩

葉牡丹

寒　餠

餅

白 菜

底　冷

雪だるま

ちゃんちゃんこ

柊挿す