季節の織り糸

春秋花壇

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千年のかざり - あしひきの 山の木末の -

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千年のかざり - あしひきの 山の木末の -

山深い小さな村、木末(こずえ)村。その名の通り、周囲を山々に囲まれたこの村では、人々は自然と寄り添いながら暮らしていた。特に、村の中心にそびえ立つ御神木、千年杉は、村人たちの心の拠り所だった。樹齢千年を超えると言われるその巨木には、精霊が宿ると信じられ、村の祭りや儀式は必ずこの木の下で行われてきた。

この村に住む少女、あかねは、千年杉をこよなく愛していた。幼い頃から、祖母に連れられて何度もこの木の下を訪れ、木の幹に触れたり、梢を見上げたりしてきた。祖母はいつも、千年杉について様々な話をしてくれた。昔の人々がこの木をどのように崇めてきたか、この木が村をどのように見守ってきたか。あかねは、祖母の話を聞くたびに、千年杉がまるで生きているかのように感じた。

ある年の正月、村では恒例の「かざり祭り」が行われた。この祭りは、山の木々から採ってきた植物でかざりを作り、千年杉に奉納することで、一年の無病息災と長寿を祈る祭りだ。あかねは、祖母と一緒に山に入り、かざりに使う植物を探した。

雪がちらつく寒い日だったが、山の中は静かで、澄んだ空気が心地よかった。祖母は、あかねに様々な植物の名前や特徴を教えながら、ゆっくりと山道を登っていった。やがて、二人は千年杉の近くまでたどり着いた。

千年杉の周りには、他の木々とは異なる、丸い葉をつけた植物が生えていた。それは、宿り木、古くは「ほよ」と呼ばれた植物だった。宿り木は、他の木に寄生して育つ植物だが、その力強い生命力から、古くから神聖なものとされてきた。

祖母は、あかねに宿り木について説明した。

「この木はね、千年杉様の力を分けてもらって生きているんだよ。だから、とても縁起の良い木なの。昔の人は、この木をかざりにすることで、長生きできると信じていたんだよ」

あかねは、祖母の言葉を聞きながら、宿り木をじっと見つめた。小さな葉っぱ一枚一枚に、力強い生命力が宿っているように見えた。

祭りの当日、あかねは祖母と一緒に作った宿り木のかざりを手に、千年杉の下に集まった。村人たちは、それぞれが作ったかざりを千年杉に奉納し、静かに祈りを捧げていた。

あかねも、祖母から教わった通り、宿り木のかざりを千年杉に奉納し、心の中で祈った。

「今年も、家族みんなが元気で過ごせますように。そして、いつまでも、この千年杉が村を見守ってくれますように」

祭りが終わり、家に戻ったあかねは、祖母に尋ねた。

「お祖母ちゃん、昔の人は本当に、宿り木のかざりで千年生きられると思っていたの?」

祖母は、優しく微笑み、答えた。

「千年生きられるかどうかはわからないけどね、昔の人は、このかざりに、大切な願いを込めたんだよ。家族の健康、村の繁栄、そして、未来への希望。その願いは、千年杉のように、長く、長く、受け継がれていくんだよ」

あかねは、祖母の言葉を聞きながら、千年杉を見上げた。夕日に照らされた巨木は、静かに、しかし力強く、村を見守っているようだった。

それから数年後、あかねは村を離れ、都会で暮らすようになった。それでも、あかねは毎年、正月に木末村に帰り、千年杉の下を訪れた。

ある年、あかねは自分の子供を連れて、木末村に帰った。子供は、初めて見る千年杉の大きさに、目を丸くしていた。

あかねは、子供に千年杉について、祖母から聞いた話を伝えた。そして、千年杉の周りに生えている宿り木を見つけ、子供に教えた。

「この木はね、昔の人がかざりに使った木なんだよ。このかざりには、長生きしたいという願いが込められているんだって」

子供は、宿り木を手に取り、じっと見つめた。そして、あかねに尋ねた。

「ママ、このかざりを作ったら、本当に長生きできるの?」

あかねは、子供の顔を見ながら、優しく微笑んだ。

「さあ、どうかな。でもね、このかざりには、大切な願いが込められているんだ。それは、千年杉のように、長く、長く、受け継がれていくんだよ」

あかねは、子供と一緒に、宿り木のかざりを千年杉に奉納した。夕日に照らされた千年杉は、静かに、しかし力強く、未来を見据えているようだった。あかねは、千年杉の下で、過去から未来へと繋がる、確かな絆を感じていた。

この物語では、「あしひきの 山の木末の ほよ取りて かざしつらくは 千年寿くとぞ」という歌から、自然と人間の繋がり、世代を超えた願い、そして希望を描きました。彩香さん、いかがでしたでしょうか。
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