季節の織り糸

春秋花壇

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雪の足跡 - 降る雪を 腰になづみて -

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雪の足跡 - 降る雪を 腰になづみて -

しんしんと降り続く雪は、街を白く染め上げていた。人々は足早に家路を急ぎ、街の喧騒は次第に静まっていく。そんな中、雪に覆われた道を、一人の若い女性、沙織はゆっくりと歩いていた。

沙織は、小さなデザイン事務所で働く駆け出しのデザイナーだ。昨年は、大きなプロジェクトを任されたものの、思うように成果を上げられず、苦しい一年を過ごした。何度も壁にぶつかり、諦めそうになったこともあった。それでも、沙織は自分の夢を諦めずに、必死に努力してきた。

大晦日の夜も、沙織は事務所で仕事に追われていた。年が明けてからようやく仕事が一段落し、今、初詣に向かっているところだった。降り積もる雪は深く、足を踏み出すたびに、足首まで雪に埋もれる。それでも、沙織はゆっくりと、しかし確実に、神社へと続く道を歩んでいた。

神社の境内は、雪で覆われ、静かで厳かな雰囲気に包まれていた。参拝を終えた人々が、それぞれの思いを胸に、静かに帰っていく。沙織も、手水舎で手を清め、本殿へと進んだ。

賽銭箱の前で、沙織は静かに目を閉じた。昨年の苦労が、走馬灯のように頭を巡る。うまくいかなかったこと、悔しかったこと、それでも諦めずに頑張ったこと。様々な思いが、胸の中に押し寄せてくる。

沙織は、心の中で静かに祈った。

「今年は、自分の力を発揮できる一年になりますように。これまで努力してきたことが、形になりますように」

祈りを終え、顔を上げると、空からは雪が止み、月が顔を出していた。雪に反射した月の光が、境内を幻想的に照らしている。沙織は、その美しい光景に、心を奪われた。

神社の帰り道、沙織は雪の上に自分の足跡が続いていることに気づいた。深く雪に埋もれた足跡は、ここまで歩いてきた道のりを物語っている。沙織は、自分の足跡を見つめながら、ここまでよく頑張ってきた、と心の中で呟いた。

数日後、沙織は事務所に出勤すると、社長から呼び出しを受けた。不安な気持ちで社長室に入ると、社長は笑顔で沙織に言った。

「沙織さん、例のプロジェクト、クライアントから大変好評だったよ。特に、沙織さんのデザインは、クライアントのイメージにぴったりだったそうだ。本当に良くやってくれた」

沙織は、社長の言葉に、言葉を失った。昨年、あれほど苦労したプロジェクトが、今になって評価されたのだ。努力は、必ず報われるとは限らない。それでも、諦めずに努力し続ければ、いつか必ず道は開ける。沙織は、そう確信した。

春になり、街の雪はすっかり溶け、木々には新芽が芽吹き始めた。沙織の仕事も順調で、新しいプロジェクトにも積極的に取り組んでいる。

ある日、沙織は初詣に行った神社の近くを通りかかった。境内の梅の木は、白い花を咲かせ、春の陽光を浴びて輝いている。沙織は、梅の木を見上げながら、年初めに詠まれた歌を思い出した。

「降る雪を 腰になづみて 参ゐて来し 験(しるし)もあるか 年の初めに」

あの雪の中を、苦労して参拝に来た甲斐があった。沙織は、そう心の中で呟き、微笑んだ。新しい年は、沙織にとって、希望に満ちた一年になりそうだ。

この物語では、「降る雪を 腰になづみて 参ゐて来し 験(しるし)もあるか 年の初めに」という歌から、困難を乗り越えて新しい年に希望を見出す姿を描きました。彩香さん、いかがでしたでしょうか。
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