季節の織り糸

一月七日

一月七日

一月七日、今日は「人日」と呼ばれる特別な日。街はまだお正月の賑わいを残し、時折、遠くから羽根つきの音が聞こえてくる。人々は初詣を済ませ、年賀状の束を何度も見返している頃だろうか。古くからの風習に従い、家々では七草粥が煮られている。

私は、実家で過ごす初めての正月を迎えていた。去年の暮れ、久しぶりに家族と過ごすことを決め、故郷の駅に降り立った時、胸に込み上げるものがあった。見慣れた風景、空気の匂い、すべてが懐かしく、子供の頃の記憶が鮮やかに蘇る。両親と過ごしたお正月は、いつも温かく、特別な時間だった。

この日、私は特に七草粥に心を寄せていた。朝早くから母と近所の八百屋へ行き、丁寧に七草を選んだ。セリの清涼な香り、ナズナの可愛らしい葉、ゴギョウの優しい緑…。一つ一つ手に取るたびに、春の息吹を感じる。七草を手際よく刻む母の手元を見ながら、それぞれの意味を教えてもらった。「セリは競り勝つ、ナズナは撫でて清める…」と。その言葉を心の中で反芻しながら、今年一年の健康を祈った。

台所からは、お粥の優しい香りが漂ってくる。湯気の中で、七草の鮮やかな緑が踊るように揺れている。「さあ、七草を入れるよ。」母の声が、穏やかな午後の日差しの中で響いた。私も手伝いながら、丁寧に七草を鍋に入れる。お椀に盛り付けられた粥は、ほのかに緑色を帯び、七草の香りが食欲をそそる。一口食べると、優しい出汁の味と七草のほのかな苦味が、疲れた胃にじんわりと染み渡る。

「今年も、無事に七草粥が食べられるね。」母がしみじみとつぶやいた。その言葉には、ささやかな日常への感謝と、家族への愛情が込められているように感じた。私も頷きながら、母の温かい手のひらを思い出す。毎年、こうして七草粥を囲み、新しい年を迎えてきた。それは、私たち家族にとって、かけがえのない時間だった。

その日の夕方、庭に出てみると、遠くに雪をまとった富士山の美しい姿が見えた。澄んだ空気の中で、夕日に照らされた山頂は、神々しいほどに輝いている。幼い頃、父と見た初日の出を思い出した。凍えるような寒さの中、二人で日の出を待ったこと、昇る太陽の力強い光に感動したこと…。あの日のように、今年も力強く生きていきたいと思った。

ふと、幼い頃に家族で見た初飛行の記憶が蘇った。初めて見る飛行機が、大きな音を立てて空に舞い上がる姿に、胸が高鳴った。父は「あれに乗って、色んなところへ行けるんだぞ」と、目を輝かせて言った。あの時のように、新しいことに挑戦する勇気を持ち続けたい。

夜になり、熱い湯船にゆっくりと浸かる。一日の疲れが、湯気と共に溶けていくようだ。目を閉じると、様々な思い出が浮かんでは消える。家族と過ごした時間、七草粥の味、富士山の雄大な姿…。今年も、そしてこれからも、この温かい気持ちを大切にしていきたい。

「今年も良い年でありますように。」湯船の中で、そっと目を閉じ、心の中でそう願った。湯気が立ち上る中、私は新しい年への希望を胸に抱き、静かに微笑んだ。明日から、また新しい一日が始まる。


1月7日

人　日

七　種

春　着

初富士

初　詣

去年今年

歌留多

初　空

獅子舞

年賀状

七種爪

七　種

粥　柱

初飛行

人　日

初富士

初　湯