季節の織り糸

猩々木の誓い 12月21日

『猩々木の誓い』

12月21日、冬至の日。中世ヨーロッパのとある村は、霜で覆われた大地と冬の雲に包まれていた。空は鉛色で、重たい冬雲が低く垂れ込め、風が冷たく吹き荒れていた。村の人々はこの時期、家の中でぬくぬくと過ごし、暖炉の火を囲んで冬を耐える日々を送っていた。外の世界は、枯れた木々と薄暗い空気の中で静寂に包まれている。

その村に住むアリスは、冷え切った手をこすりながら、広場を歩いていた。木々の枝に残る雪が白く輝き、冬の静けさの中でアリスの心はどこか寂しさを感じていた。彼女の胸に、かつて咲いていた桜の記憶がふと浮かぶ。その桜の木の下で、かつての恋人と誓いを交わした日々を思い出していた。

「アリス、寒いだろう。」と、声が響く。振り返ると、そこには彼女の幼馴染、ウィリアムが立っていた。

ウィリアムはアリスにとって、長い年月を共に過ごした唯一の存在だった。二人は幼少の頃からの友人であり、共に成長し、時折、思い出を語り合うこともあった。しかし、ウィリアムは王国の軍人として遠くに赴任しており、アリスは一人寂しく暮らす日々を送っていた。

「ウィリアム…」アリスは微笑んだ。「久しぶりね。」

ウィリアムはアリスに近づくと、暖かい手を差し出した。「寒さがひどいな。少しでも暖をとろう。」そう言って、二人は村の広場にある小さな宿屋に入った。

宿屋の中は温かく、暖炉の火がぱちぱちと音を立てて燃えていた。ウィリアムはアリスをソファに座らせると、手あぶりの前に座り、自分もその隣に腰を下ろした。

「ここの冬至南瓜は格別だ。」ウィリアムは微笑んだ。「君も食べてみるか？」

アリスは頷き、ウィリアムが作った蕪汁を一口含んだ。温かさが体に広がり、冷え切った体が少しずつ温まっていく。彼女の目はどこか遠くを見つめていたが、ウィリアムはその視線を察して、静かに言った。

「アリス、君はまだ、あの桜の木を覚えているか？」

その言葉に、アリスは一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。「もちろん。あの時、君と誓ったことを。」

あの日、二人は桜の木の下で手を取り合い、永遠に変わらぬ愛を誓った。しかし、ウィリアムが王国の命で遠くに行くことが決まり、二人の距離は一気に離れてしまった。ウィリアムは帰ってくる約束をしていたが、時が経つにつれて、その約束も忘れかけていた。

「君はずっと待っていてくれたのか？」ウィリアムは穏やかな声で尋ねた。

アリスはうなずき、少しだけ寂しそうな顔をした。「待ち続けたわ。でも、時間が経つにつれて、私の中でその約束は少しずつ薄れていった。でも、君が帰ってくると聞いて、心の奥でまた、あの時の気持ちが蘇ってきたの。」

ウィリアムはその言葉に耳を傾け、彼女の手を握った。「アリス、私は君を裏切るつもりはなかった。ただ、軍の任務が私を遠くへと連れて行っただけだ。それでも、君を思い続けていた。」彼の目は真剣で、アリスはその眼差しに心を打たれる。

外では雪の精が舞い降りるように、雪が静かに降り積もっていく。宿屋の窓から見える景色は、まるで幻想的な光景だった。

「でも、今、君がここにいる。」ウィリアムはアリスの手を強く握り、ゆっくりと立ち上がった。「寒い夜だけど、君と一緒にいられることが何よりの幸せだ。」

アリスはその言葉に胸がいっぱいになり、目を閉じた。「私も、君と一緒にいることが幸せだよ。」

二人はしばらく黙って、暖かい火を見つめていた。外の寒さも、雪の精の舞いも、二人の間には届かなかった。心の中で交わした誓いが、再び二人を一つに結びつけたような気がした。

「ウィリアム、もう一度、あの桜の木の下で誓いを交わせるかしら？」アリスは静かに尋ねた。

「もちろん。」ウィリアムは深く頷き、微笑んだ。「今度こそ、何があっても君を守ると誓うよ。」

その夜、二人は温かい飲み物を片手に、再び手を取り合って、永遠の誓いを交わした。雪の降る中で、猩々木のように赤く、美しく燃え上がる二人の愛が、冷たい冬の夜を照らしていた。


12月21日

霜

冬の雲・冬雲

冬の夕

枯　薄

寒　桜

手あぶり

冬至南瓜

雪の精

日向ぼこ

咳

蕪　汁

咳

鵠

ホット・ドリンク

冬温し

冬の雲・冬雲

猩々木