季節の織り糸

春秋花壇

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冬の陽だまり 12月20日

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冬の陽だまり

師走の忙しさに追われ、街は何かに急かされるようにざわついていた。冬の日差しは儚く、ビルの隙間からほんの少しだけ漏れ、冷たい風の中に温もりをもたらす。その光を受けて、奈々は駅前の小さなカフェに駆け込んだ。

「いらっしゃいませ」と店員の声が静かに響く。奈々は注文を済ませ、窓際の席に腰を下ろす。冬の日差しが差し込むその席は、奈々の特等席だった。湯気の立つカップを手に取ると、微かに香る葛湯の甘さが心を温めてくれる。

窓の外には葉を落とした枯茨が風に揺れている。その向こうに、一人の男性が立っていた。コートの襟を立て、火桶に手をかざしている。その姿がどこか懐かしく、奈々は思わず目を細めた。

彼――慎吾だった。
高校時代の恋人で、奈々の初恋の相手。最後に会ったのは大学を卒業した春だった。慎吾は故郷の青森に帰り、奈々は東京で就職した。それぞれの道を歩むことを選び、互いに別れを告げたままだった。

慎吾が奈々に気づき、驚いたように眉を上げた。その瞬間、奈々は心の奥で眠っていた感情が湧き上がるのを感じた。

「慎吾?」
奈々は意を決して声をかけた。

慎吾は振り返り、ゆっくりとカフェに近づいてきた。冬の冷たい空気をまといながらも、変わらない柔らかい笑顔で奈々を見つめた。

「奈々……久しぶりだな。」

二人は席に座り、暖かな飲み物を手にしながら話し始めた。別々の道を歩んできた時間を埋めるように、言葉が止まらなかった。慎吾は青森の自宅近くにある古い写真館で働いているという。今ではあまり見かけなくなった日光写真を使った作品を制作しているらしい。

「日光写真?」奈々は興味津々で聞き返した。

慎吾は懐から小さな紙片を取り出した。そこには、冬桜の花びらが淡いブルーの影となって浮かび上がっていた。

「光を当てて作るんだ。この桜は去年撮ったもの。冬に咲く花は強いよな、寒さの中でこんなに美しく咲くんだから。」

奈々はその写真を見つめながら、慎吾の言葉が自分自身の心情と重なるのを感じた。別々の道を選び、寒さの中で耐えながら歩んできた二人。しかし、その時間が二人をより強く、美しくしたような気がした。

「慎吾……写真、素敵ね。」

慎吾は少し照れたように笑い、言葉を続けた。
「奈々に会えてよかったよ。こうしてまた話せるなんて思ってもみなかった。もし時間があれば、明日一緒に写真を撮りに行かないか?南天の実が赤く映えるいい場所があるんだ。」

奈々は少し驚いたが、慎吾の誘いを断る理由などなかった。久しぶりに感じた暖かな気持ちに身を任せてみようと思った。

「いいわ。行きたい。」

二人の間に、冬の陽だまりのような柔らかな空気が流れていた。これからの季節がどれほど寒くても、慎吾の言葉と日光写真のような光が奈々の心を温めてくれる気がした。

その瞬間、外の景色にちらちらと雪が舞い始めた。まるで二人の新しい物語の幕開けを祝福するように――。


12月20日



冬の暮

葛 湯

冬の夜

冬 桜

火 桶

師 走

焚 火

冬 日



蕪 蒸

善知鳥

葱鮪鍋

南天の実

落 葉

枯 茨

日光写真
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