季節の織り糸

冬の桜

冬の桜

12月18日。師走の冷たい風が吹き抜ける中、町の静けさを感じながら歩いていた。ユキは足元を見つめながら、冬の桜が薄いピンク色の花を少しだけ開いているのを見つけた。あまりにも儚い美しさが心に響く。今の季節には、まるで逆行しているようなその桜の花を見ていると、時の流れが何か不確かなものに思えてくる。

「こんな時期に咲くなんて、まるで私たちみたいだね。」

ユキは自分に語りかけるように呟いた。その背後で、トモヤが歩きながらユキに微笑みかけた。彼は以前から、ユキのそんなひとりごとを愛おしく感じていた。

「確かに、少し不思議な感じだな。こんな冷たい季節に、あの桜が咲いているのを見ると、何か強い気持ちが芽生える気がする。」

ユキはその言葉に少し驚いた。トモヤがそんなふうに心の中で桜を感じているとは思ってもいなかったからだ。彼が今どれほどユキのことを大切に思っているのか、改めて感じた瞬間だった。

その足元に目を向けると、菰巻きに包まれた家々が並ぶ道に沿って、雪が降り始めていた。冷たい風が肌を撫でるが、それでもトモヤとユキは何も言わずに歩き続ける。二人はもうすっかり冬の空気に包まれていた。

「初氷が張ったよ、見て。」

ユキが声を上げると、トモヤもその方向に目を向けた。薄氷が張った池の上で、子どもたちが滑りながら遊んでいる姿が見えた。彼らの笑い声が、冷えた空気に響いていた。

「今年も冬が来たな。」

トモヤはゆっくりとそう呟く。ユキはその言葉に深く頷きながら、少しだけ歩みを速めた。彼女の心の中には、トモヤとの出会いから積み重ねてきた思い出がふわりと浮かび上がった。それは、まるで一枚一枚雪が降り積もるように、ゆっくりと、でも確かに積み重なってきたものだった。

その後、ユキとトモヤは雪籠の中に入った。風雪の強さが増し、周囲はますます静かに包まれていく。雪が降り積もる音だけが耳に残る中で、二人は家の中に足を踏み入れた。

「冬耕の準備、しているか？」

トモヤが軽く尋ねると、ユキは少し考えた後、頷いた。

「はい。畑の作物は冬を越せるように手入れしておかないと、春が来ても収穫できないものね。」

二人は暖かな家の中で、冬を乗り越えるための準備を進めた。外はどんどん冷え込んでいくが、家の中では温かな温もりが二人を包み込んでいた。その中で、ユキはふと外に目を向け、吹雪の中に立つ枯れ柳を見つけた。

「枯れ柳って、なんだか冬の象徴みたいだね。」

ユキは呟いた。冷たい風がその柳の枝を揺らし、風に逆らわずにしっかりと立っているその姿に、ユキは静かな強さを感じた。

「でも、そんな風に生きるのもいいかもしれないな。」

トモヤが少し笑いながら答える。ユキはその言葉を聞いて、心の中で深く頷いた。

「うん、そうだね。」

そして、二人は外に出ると、雪の降り積もる景色に息を呑んだ。吹雪の中、冬の蝶が舞うようにふわりと飛び交っていた。その儚い姿を見て、ユキは心の中で強く思った。この冬の中でも、少しずつ暖かな日々が続いていくことを。

「今川焼、食べる？」

トモヤが提案した。その提案に、ユキは嬉しそうに笑って頷いた。

「食べたい。あったかい今川焼、最高！」

二人は手を取り合って、屋台の前に立つと、あたたかい今川焼の香りが辺りに広がった。甘いあんこが口の中でとろけるその瞬間、ユキはふと感じた。これが幸せなんだと。

その後、二人は冬の鵙の鳴き声を耳にしながら、氷の張った池のほとりを歩き続けた。冷たい空気の中で、二人の手がしっかりと絡み合っている。その繋がりが、何よりの温もりだった。

そして、冬の終わりが近づくにつれて、ユキとトモヤの関係はますます深くなり、二人で迎える春が待ち遠しくて仕方なかった。

そして、春が来る頃、二人は約束した。

「どんな季節でも、君と一緒に過ごしたい。」

その言葉がユキの心を温かく包み込み、彼女は確かに思った。この冬を越えて、もっと強くなれたことを。


12月18日

師　走

冬　桜

菰　巻

初　氷

雪　籠

冬　耕

枯　葉

冬木立

吹　雪

雪 40

枯　柳

冬の蝶

今川焼

冬の鵙

氷

白　鳥

猪　狩