季節の織り糸

雪解けの恋

雪解けの恋

12月17日、冷たい風が吹き抜ける師走の朝、街は静まり返っていた。冬桜の花びらがひらひらと舞い落ち、周囲の景色を静かな色に染め上げる。藪巻きのように薄い霧が、庭の片隅に溜まっていた。冬の朝、空は高く澄み渡り、遠くの山々が青く浮かび上がる中、街の賑わいはまだ遠い。

その日、ユリシアは家の裏庭で一人、蓮根を掘っていた。手が冷たくなり、土がしっかりと手に絡みつくのを感じながら、ゆっくりと作業を進めていた。冬の空が灰色に近い色に変わり、枯れた草がひっそりと横たわっている。彼女の目の前には、冬の鵙が小さな枝に止まり、何かを狙っていた。

「こんな日は、どこにも行かない方がいいのに。」ユリシアはぽつりと呟いた。と、その時、ふいに背後から声がかけられた。

「ユリシア、君が庭で働いているのは見かけたことがあるけれど、今日は特別に寒いね。」

振り返ると、そこに立っていたのは、彼女が長い間想いを寄せていたエドワードだった。彼は高貴な家柄の青年で、いつもはユリシアのような町の者に近づくことは少なかった。しかし、今彼は彼女に微笑んでいた。

「エドワード…どうしてここに？」ユリシアは少し驚きながらも、自然と彼に視線を向けた。

「君がこんな寒い日に外で働いているとは思わなくて。」彼は少し困ったように言った。「一緒に温かい部屋でお茶でもどうだろう？」

ユリシアはその言葉に少し戸惑いながらも、うなずいた。「ありがとう、でも…あまりにも急な話で、少しだけ戸惑っているわ。」

エドワードはその戸惑いを感じ取ったのか、優しく微笑んだ。「無理にとは言わないよ。でも、少しでも君と話せる時間が持てたら嬉しい。」

その言葉に、ユリシアは胸が高鳴った。エドワードとの距離が急に近くなったような気がしたからだ。彼はあまりにも遠い存在で、彼女のような者には手が届かないと思っていた。しかし今、目の前に彼がいて、真摯な眼差しで自分を見つめている。

「じゃあ、少しだけ。」ユリシアはしばらく考えた後、決心をして答えた。

二人はゆっくりと屋敷の中に入り、暖炉の前に腰を下ろした。窓の外では、枯れた野原が広がっており、南天の実が薄く赤く色づいていた。冬の冷たさが外を包み込んでいるが、屋内の温かさが二人を包んでいる。

「今日はとても冷えるね。」ユリシアは言った。

「そうだね。でも、君が笑っていると、それが暖かさのように感じられる。」エドワードはやわらかな笑顔を見せた。

その言葉に、ユリシアは驚いたような顔をし、少し頬を赤らめた。「そ、それは…」

「君には、温かさを感じる。」エドワードは続けた。「何気ない日常の中にある美しさや温もりを、君が持っているからだと思う。」

ユリシアはその言葉を胸にしまい込んだ。彼の言葉が心に染み込み、彼の優しさが彼女を包み込むように感じた。冷たい冬の空気の中で、彼の声は温かく、彼女の中に静かな安らぎをもたらした。

しばらくの沈黙が続いた後、エドワードは立ち上がり、窓の外を見つめながら言った。「雪が降りそうだね。」

ユリシアは窓の外を見た。ほんのりと雪が舞い降り始め、白い鳥が空を滑るように飛んでいる。「本当に…雪が降るのね。」

「雪のように、静かで優雅な君に似ている。」エドワードの言葉は、彼女の心に強く響いた。彼の視線が、まるで彼女を包み込むように柔らかく、心地よい。

「エドワード…」ユリシアはついにその言葉を口にした。「私、ずっとあなたのことが好きでした。」

その言葉を聞いたエドワードは驚き、そしてやわらかな笑顔を浮かべた。「僕もだよ、ユリシア。」

二人はお互いに微笑み合い、長い間、言葉を交わさずにただ静かにその瞬間を共有した。外の寒さとは裏腹に、二人の心は温かさに満ちていた。

冬の空は、まるで二人の心のように静かに広がっていた。そして、雪は少しずつ舞い降り、屋敷の窓を飾り始めた。