季節の織り糸

春秋花壇

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銀杏並木の約束

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『銀杏並木の約束』

第一章:秋の日差しの下で
黄金色に輝く銀杏並木の散歩道は、秋になると街の人々の憩いの場になる。静かな午後、葉がさらさらと音を立てる中、紗季(さき)は一人で歩いていた。

「何年ぶりだろう、ここに来るのは…」

この銀杏並木は、大学時代に通った場所だった。懐かしい記憶が甦る。秋の日差しの中、あの頃一緒に歩いた彼のことを思い出す。彼の名前は悠太(ゆうた)。二人はここで何度も待ち合わせをし、未来について語り合った。

しかし、卒業とともに遠距離になり、やがて自然と連絡が途絶えた。それからもう10年以上が経つ。紗季は「あの頃は若かったな」と苦笑しながら、足元に落ちた銀杏の葉を見つめた。

第二章:再会
「紗季?」

不意に声をかけられ、振り返るとそこには見覚えのある男性が立っていた。

「…悠太?」

まさかと思ったが、間違いなかった。少し日焼けした肌と穏やかな笑み、そして大学時代から変わらない眼鏡の奥の優しい目がそこにあった。

「やっぱり君だったんだ。久しぶりだね。」

「本当に久しぶり…こんなところで会うなんて。」

紗季は驚きと懐かしさで胸がいっぱいになった。

「仕事の帰り?それとも散歩?」

「散歩よ。少しだけ昔を思い出したくてね。」

悠太は頷き、しばらく沈黙した後、提案した。

「せっかくだから、一緒に歩かない?」

第三章:歩きながら語る時間
二人はゆっくりと銀杏並木を歩き始めた。悠太は地方で教師をしていること、そして秋休みで久しぶりに帰省したことを話した。

「紗季はどう?何か変わったことある?」

「私は…普通に仕事して、たまにこうして散歩したり、特に大きなことはないかな。」

お互いの近況を話しながら、二人は自然と笑顔になっていた。記憶の中の「悠太」と「紗季」に戻ったような感覚が心地よかった。

第四章:約束
銀杏並木を抜けた先には、小さな広場があった。そこで二人はベンチに腰掛け、穏やかな空気を感じていた。

「この景色、変わらないね。」

悠太が呟くと、紗季も頷いた。

「本当に。ここに来ると、なんだか時間が止まったみたい。」

ふいに悠太がポケットから小さな紙袋を取り出した。

「これ、君に渡そうと思って。」

中には、一枚の手書きのメッセージカードが入っていた。

『また会えたら、一緒に新しい思い出を作りたい』

紗季はカードを読んで顔を上げると、悠太の真剣な眼差しに気づいた。

「突然で驚かせたかな。でも、こうして偶然会えたのは運命だと思うんだ。」

紗季の心は高鳴った。彼の言葉は懐かしいだけでなく、未来への希望を感じさせた。

エピローグ
その日、銀杏並木の下で交わした約束を胸に、二人は再び連絡を取り合うようになった。

季節が巡り、春になった頃には、紗季と悠太は再びこの場所で会い、新たな一歩を踏み出していた。

黄金色の銀杏並木が、二人の思い出と再会を繋ぐ場所になったのだ。

終わり






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