季節の織り糸

冬に入る 12月3日

『冬に入る』

12月3日、初雪が降り始めた朝。冷たい空気が肌に刺さり、街全体がしんと静まり返っていた。空の色が淡い灰色に染まり、ゆっくりと舞い降りる雪がまるで時間の流れを止めてしまったかのように感じられた。その日の朝、思わずコタツに手を伸ばすと、少し湿った風が隙間風となって部屋に入り込むのがわかる。古びた家に住む人々は、こうして冬の入り口を感じ取るのだろう。

「もう、冬が来たんだな。」そう呟くと、隣に座っている母が微笑んだ。

「ああ、雪が降ると、いつも心が少し寂しくなるけれど、冬の美しさにも心が引かれるのよね。」母の言葉には、冬が持つ静けさと冷たさに対する理解と、同時にそれを愛おしく思う心が込められていた。

冬の訪れは、いつも私たちにさまざまな感情を呼び起こす。寒さがただ心を冷やすわけではなく、むしろ、その静けさの中に暖かいものを見つけることができるからだ。

「それに、冬の食べ物がまた楽しみだわ。」私はそう言いながら、窓の外に目を向けると、雪がどんどん積もっていくのが見えた。しばらくの間、空を見上げていたが、突然ふと思い立ったように言った。

「今日は鮟鱇を食べようか。冬の味覚と言えば、あのとろけるような味が忘れられない。」

母はしばらく黙っていたが、やがて頷いて言った。「鮟鱇、いいわね。冷えた体が温まるわ。」

鮟鱇の白い身を思い浮かべると、まるで雪のように透き通るその姿が浮かんでくる。冬の夜にぴったりの一品だ。

昼間は雪が降り続き、夕方になると、街がすっかり冬の顔を見せる。道を歩く人々も、厚いコートやマフラーを巻いて、雪の降る中を急ぎ足で通り過ぎていく。私は少し歩みを遅くしながら、冬紅葉の美しさに見入っていた。街の街路樹は、寒さと共に色づき、もうすぐ落ち葉になっていくだろう。しかし、その紅い葉がどこか暖かく見えるのは、冬の光がそれらを照らすからだろうか。

家に戻ると、母は鮟鱇の鍋を準備していた。部屋の中に漂う、食材の香りが暖かさを感じさせる。私は寒い空気をそのままに、雪が静かに降る窓辺に座り、母の手元を見守った。鍋の中でじっくりと煮込まれる鮟鱇の身が、白くほぐれていく様子は、冬の温もりそのものだ。

夕食後、外に目を向けると、街はすっかり夜の帳に包まれていた。道路の上に雪が積もり、家々の屋根や木々も銀色に染まって、まるで一面の銀世界が広がっているようだった。

「冬に入るって、こんなに心が落ち着くものなんですね。」私は感慨深く呟いた。母は窓の外を見つめながら答える。

「そうね、冬は厳しくて寒いけれど、その冷たさがまた温かさを際立たせるのよ。」

それからしばらく、二人で静かな時間を過ごした。外の風は強く、寒さがより一層増してきたが、家の中では暖かい火が灯り、温かな食事が私たちを迎えてくれる。冬の訪れを心から楽しんでいる自分に気づくと、ふと胸が温かくなった。

夜が更け、すっかり静まり返った世界の中で、私は母に向かって微笑みながら言った。「明日も鮟鱇を食べようか。」

母もまた、穏やかな笑顔で答えた。「もちろん。冬だからこその楽しみを、大切にしなくちゃね。」

窓の外では、雪が静かに降り続けていた。


12月3日

隙間風

初　雪

鮟　鱇

冬もみぢ

鯛　焼

冬紅葉

水涸る

冬　日

氷 

麦の芽

朽　葉

冬　木

胼

褞　袍

小六月

神　楽

銀世界

冬に入る