季節の織り糸

小春の日 11月26日

「小春の日」

11月の終わり、寒さがじわじわと体に染み込んでくる季節。しかし、今日の午後は珍しく穏やかな小春日和が広がっていた。空は淡い青色に透き通り、木々の間を抜けて、優しい陽の光が地面に降り注いでいる。小春という言葉がぴったりの一日だった。

庭の隅に植えられた石蕗の花（つわぶき）が、黄色く色づいている。薄曇りの中で咲くその花は、どこか寂しげだが、冬の訪れを前にしても力強く咲き誇っていた。その光景を見て、ふと過ぎる考えは、冬の静けさへの期待と、またその先に待つ冷徹な現実への少しの不安だった。

今日は、久しぶりに母と一緒に過ごすことにした。二学期が終わり、ようやく家に戻る時間ができたのだ。冬休みの準備として、牡丹鍋を作ることに決めていた。これは、母が冬になると必ず作ってくれる料理で、温かい鍋の中にたっぷりの野菜と豚肉が入ったその味は、子供の頃から好きでたまらなかった。

「冬薊（ふゆあざみ）」を添えて食べるのも楽しみだな、と心の中でつぶやく。薊はこの時期になると、寒さに耐えながら、少しずつ開花していく。だが、その強さが冬に生きる人々に力を与えているようで、毎年その花が咲くのを楽しみにしている自分がいる。

日が沈みかけると、空が一層深い藍色に変わり、夜の寒さが身に染みる。母が用意してくれた鍋の蓋を開けると、湯気が立ち上り、その香りが部屋中に広がる。温かな鍋を囲みながら、家族の顔を見ていると、まるであの日々に戻ったかのような安心感が心に広がっていく。

「今年も、この季節が来たね。」

母がそう言うと、私はただ頷くしかない。その言葉に込められた意味がわかるからだ。冬は厳しく、寒いけれど、それを乗り越えるためには強くならなければならない。その強さが、温かい料理や心温まる家族の絆の中で育まれていく。

ふと、外に目を向けると、残る紅葉が風に揺れているのが見える。秋の名残を感じさせるその光景に、心がほっとした。まるで冬を迎える準備を整えるかのように、色づいた葉が落ちていく。

「寒くなったね。」

私の言葉に母は静かに微笑んで答える。「そうね。冬の始まり。あったかいお茶でも入れましょうか。」

その言葉に私は嬉しさを感じた。季節の変わり目に、こんなふうにゆったりとした時間が流れることが、何よりの贅沢であり、幸せなのだと思う。

次の日、庭の隅で小鳥が飛び立つのを見つけた。冬が近づいてきたことを感じさせるその瞬間、私はもう一度心に誓う。寒さに負けず、心を温かく保つこと。家族との時間を大切にし、冬の寒さを一緒に乗り越えていこう。

その時、母がまた小さな声で言った。「明日、根深汁（ねぶかじる）を作ろうか。」根深汁は、冬にぴったりの料理で、根菜がたっぷり入った、体の芯から温まるような一品だ。私は思わず笑みを浮かべた。

「うん、楽しみにしているよ。」

そうして、冬の寒さを感じると同時に、温かな家の中で過ごす時間がどれほどありがたいものかを実感する。冬が来ても、どんなに寒くても、私たちはここで共に過ごし、支え合って生きている。それが何よりの幸せだと、改めて感じる一日だった。

外はもうすっかり夜になり、冷たい風が吹き抜ける。家の中は温かく、私は母と一緒に過ごす幸せを噛みしめながら、ゆっくりと鍋をすくっていく。冬の寒さが次第に深まる中で、私たちの絆はますます強くなっていく。

そして、夜が更ける頃、私は静かに心の中で祈った。「幸せでありますように。」


11月26日

小　春

落　葉

石蕗の花

冬　構

白　鳥

二学期

牡丹鍋

冬　薊

冬

冬　服

時　雨

コスモス

小鳥来る

根深汁

夜を寒み

冬　晴

冬林檎

残る紅葉

かりがね