季節の織り糸

初冬の贈り物 11月17日

「初冬の贈り物」

11月17日の早朝、木枯らしが吹く中、雪見は厚手のコートを羽織り、小さな村の道を歩いていた。空には、まだ薄く残る昼の月が浮かび、どこか物寂しい雰囲気を漂わせている。道の両側には紅葉が舞い、落葉がまるで絨毯のように積もっていた。

毎年、この時期に雪見はこの村に訪れることにしている。都会で忙しなく働く日々の中、この村での静かな時間だけが、彼女にとっての癒しだった。今年もまた、この土地で「初冬の光景」に触れることができることを楽しみにしていた。

村に到着すると、まず目に入るのは、干柿が軒先に吊るされた古い農家の風景だった。茶色に変わった柿は、乾燥されて甘くなり、寒さに身を縮める村人たちにとって、冬の楽しみの一つでもある。

村の広場には、コスモスが最後の花を咲かせていた。その傍らでは、渡り鳥が鳴き声を響かせ、すでに南へと旅立つ準備をしている。秋から冬への移ろいを感じさせるこの風景に、雪見は自然と目を細めた。

途中、雪見は小さな川のほとりで、鴛鴦の夫婦が仲睦まじく泳いでいるのを見かける。水面に映る紅葉と相まって、まるで一幅の絵のような美しさだった。雪見は、ふと昔の恋人のことを思い出した。都会で忙しい生活を送るうちに、気持ちはすれ違い、自然と別れを迎えた。今は独り身だが、それでもここに来ると心が穏やかになり、過去のことも受け入れる気持ちになれる。

川を離れると、村の商店で茎漬けが売られているのを見つけた。しっかりと塩で漬け込まれた茎は、保存食として村人に親しまれている。冬眠に備えるかのように、食料を蓄えるのもこの土地ならではの習慣だと、雪見は感じる。

また、津軽から運ばれてきたというリンゴも店頭に並んでいた。丸々と太った秋果が、冬の訪れを前にして、赤く輝いている。手に取ってみると、なんとも言えない香りが漂い、思わずその甘さを想像してしまう。

夕暮れになると、村の片隅で藪鶯が一声鳴いた。雪見はその声に耳を傾け、自然の豊かさに心を寄せる。都会では感じられないこの静けさが、雪見にとって何よりの贅沢だった。

夜になると、民宿で牡蠣料理が振る舞われた。炭火で焼かれた牡蠣は、潮の香りが鼻をくすぐり、一口頬張ると濃厚な味わいが広がる。寒い冬だからこそ美味しさが際立つこの料理に、雪見は心から感謝の気持ちを抱いた。

宿の主人は雪見に、「来週には柊の花も咲くよ」と教えてくれた。村では、柊の花が咲くと冬本番がやってくるとされている。雪見はその話に微笑みながら、次回は柊の花を見に来たいと思った。

夜が更け、雪見は部屋の窓から夜空を見上げた。そこには、大きな鯨座が浮かび、静かに光を放っていた。星空を眺めながら、雪見はこの村での経験が、都会での忙しい日々を乗り越えるための力になることを感じていた。

村の静けさ、渡り鳥の声、干柿や牡蠣の味わい、そして自然の中で過ごす穏やかな時間が、雪見にとっての「心の糧」となっているのだった。


11月17日

渡り鳥

落　葉

コスモス

紅　葉

初　冬

干　柿

牡　蠣

昼の月

鴛　鴦

鳥渡る

秋　果

冬　眠

茎　漬

思　羽

藪　鶯

津　軽

柊の花

牡　蠣

鯨