季節の織り糸

末枯（すえがれ）の祈り 11月12日

「末枯（すえがれ）の祈り」

冷たい風が木々を揺らし、季節は秋から冬へと静かに移り変わろうとしていた。11月12日、村の少年タケルは、家の庭に立つ一本の古い大木を見上げていた。木はすっかり葉を落とし、末枯れた枝が風にさらされている。その姿は、まるで一つの命が尽きかけているかのような哀愁に満ちていた。

その木は「末枯れの神木」として村に長年の間親しまれてきたものだ。年老いた祖父からは「この木は村の守り神」と教えられ、タケルも幼い頃から毎年この季節には木の周りで祈りを捧げるのが習わしとなっていた。しかし今年はその神木が危機に瀕していた。病害が進み、木の幹は黒ずみ、樹皮が剥がれ落ちるようになってしまったのだ。

「タケルよ、この木もそろそろ限界かもしれん。木の命は尽きようとしている」

祖父の声は悲しげだった。タケルも祖父も、この木が枯れることに心を痛めていた。村の人々も同じ思いで、みな木の最後の姿を心に刻もうとしていた。

タケルはある日、何か自分にできることがないかと村の周りを歩いていた。そんなとき、彼は川沿いに「八手の花」が咲いているのを見つけた。白い小さな花が、冬の訪れを告げるように凛と咲き誇っていた。それを見て、タケルの心に一つの考えが浮かんだ。

「この八手の花を神木の根元に供えたら、神木も元気になるかもしれない」

思いついたらすぐに行動するタケルは、八手の花を摘んで神木の根元に供えた。冬来る冷たい風が吹く中、タケルはじっと手を合わせ、木が再び元気を取り戻すよう祈り続けた。その夜、彼は「鯨の夢」を見た。深い海の中、巨大な鯨が悠然と泳ぐ姿が現れ、まるで木が息を吹き返す象徴のように感じられた。

翌朝、霧が立ちこめる村の中、タケルはまた木を見上げに行った。神木の枝には変わらず末枯れの姿があったが、タケルの心には確かに何か温かなものが宿っていた。それは、彼が木に捧げた祈りがどこかで届いたという感覚だった。

それから数日が過ぎ、村の人々はタケルの行動を知ると、それぞれが紅葉や散紅葉、そして竹馬に乗ってやってきた子どもたちまでもが、木にささやかな祈りを捧げるようになった。

末枯れた木の周りには、湯冷めの寒さが忍び寄っても、たくさんの人の心が集まり、静かに祈りを捧げる場が作られた。それはいつしか、「末枯れの祈り」として村の人々に深く根付くようになった。

そしてある日、村の空に荒星が輝く夜、タケルが木のもとを訪れると、なんと、末枯れた枝先に小さな新芽が芽吹いているのを見つけた。


11月12日

末　枯

牡　蠣

散紅葉

紅　葉

紅葉川

大　根

障　子

冬来る

秋の月

湯冷め

口　切

露

鯨

切　干

荒　星

霧

八手の花

愁　思

末　枯

竹　馬