季節の織り糸

冬のぬくもり

「冬のぬくもり」

夜が深まり、冷え込みが一層厳しくなった。冬の夜には、布団の中で感じる温もりが格別に思える。優奈と涼は、いつものように一緒に布団に入っていた。外では風が窓を揺らし、寒さが部屋の隅にまで忍び込んでくるが、二人の間にはそんな冷たさは微塵も感じられなかった。

「今日は、特に寒いね」と涼が言った。

優奈は少しだけ体を寄せ、彼の腕にすっぽりと収まった。涼の体温が布団越しにじんわりと伝わってくる。彼の温もりは、冬の夜にまるで一枚厚い毛布を加えたかのような安心感を与えてくれた。

「こうして二人でいると、寒さも気にならなくなるね」と優奈が囁いた。

涼は優しく微笑み、彼女の髪を撫でた。彼が静かに吐息を漏らすたびに、二人の間に柔らかな空気が漂う。布団の中で感じるぬくもりに包まれながら、優奈はいつものように静かな満足感を味わっていた。

「こういう時間がずっと続けばいいのにね」と彼女がぼんやりと言った。

「そうだね。でも、だからこそ、この時間が特別に感じられるんじゃないかな」と涼が応えた。

その言葉に優奈は少し驚いた。涼は普段、あまり言葉に頼らないタイプで、思ったことを口にすることが少ないからだ。けれど、この寒い冬の夜、彼は優奈に少しだけ自分の心を開いてくれているように感じた。

優奈は布団の中で涼の手をそっと握りしめ、彼の指の温もりを感じた。その指先は少し冷たかったが、じきに二人の体温が混ざり合って、心地よい暖かさが広がっていった。

「こうしていると、なんだか何も怖くない気がする」と優奈は呟いた。

「俺もだよ。優奈がそばにいてくれるから、どんな寒さでも平気な気がする」と涼が返した。

二人は言葉を交わすたびに、心の中がさらに温かくなっていくのを感じた。寒い冬の夜、布団の中のこの時間は、二人だけの小さな世界だった。外では雪がちらちらと降り始めていたが、二人にとってはそんなことはどうでもいいことだった。

やがて優奈の目が少しずつ重くなっていき、彼女は涼の肩に頭を預けたまま、穏やかに息を整え始めた。涼はそんな彼女をじっと見つめ、そっと布団を引き寄せて、彼女の肩を包み込んだ。

「おやすみ、優奈」と、彼は静かに呟いた。

夜が更けるにつれ、二人の間には何とも言えない幸福感が満ちていた。布団の中の温もりと、互いに寄り添う安心感が、寒い冬の夜を最高に幸せな時間へと変えてくれたのだ。