季節の織り糸

春秋花壇

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半袖の11月

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【半袖の11月】

 11月4日、秋の深まりを感じるはずのこの日、明るい日差しの下で、悠斗は半袖のTシャツを着て、穏やかな気候を楽しんでいた。例年なら、すでに肌寒さを感じる季節だが、今年は異常な暖かさが続いていた。街中では、半袖の人々がちらほら見受けられ、まるで夏の終わりを名残惜しむかのようだった。

 悠斗は公園のベンチに腰掛け、青空を見上げる。雲一つない空に、秋の陽射しが優しく降り注いでいた。この季節にしては珍しい風景に心が弾む。公園の周りには、色とりどりの落ち葉が舞い散り、子供たちが元気に遊ぶ姿があった。そんな光景を見ながら、悠斗は少し昔のことを思い出していた。

 中学生のころ、彼はこの公園で友達と遊ぶのが大好きだった。毎年、秋の訪れと共に、みんなでかけっこをしたり、サッカーをしたりして過ごした。もちろん、長袖の季節がやってきて、冷たい風が吹くと、厚着をすることを余儀なくされた。しかし、今の暖かさは、彼に懐かしい思い出を呼び起こしていた。

「悠斗!」

 突然、背後から声が聞こえた。振り返ると、幼なじみの美咲が笑顔で手を振っていた。彼女はまるで季節を忘れたかのように、短パンと半袖のシャツを着ていた。

「美咲、久しぶり! 今日はいい天気だね。」

「ほんとだね! 今年はずっと暖かいよね。半袖で過ごせるなんて、信じられない!」

 悠斗は彼女と並んでベンチに座り、二人で空を見上げた。美咲は彼の横に寄り添い、穏やかな空気を楽しむ。

「これからどこか行かない? こんなにいい天気、もったいないよ。」

「そうだね。行き先はどこがいいかな?」

 美咲は一瞬考え込み、思いついたように笑った。

「じゃあ、アイスクリームを食べに行こうよ! ここから少し歩いたところに、新しくオープンしたお店があるの。」

「いいね! 秋にアイスクリーム、なんだか不思議だけど、確かにこの気候なら食べたくなる。」

 こうして、二人は公園を後にして、アイスクリーム店へ向かうことにした。道すがら、彼らは昔の思い出を語り合い、自然と笑顔がこぼれた。

「覚えてる? 中学生の時、アイスクリームを食べてて、私が溶けたのをこぼしちゃったこと。」

「忘れるわけないだろう! あの時、君が真っ赤になって恥ずかしがってたのが可愛かった。」

「もう、そんなこと言わないでよ!」

 楽しい会話を交わしながら、悠斗はこの瞬間を大切にしたいと思った。暖かさに包まれたこの11月、彼の心には特別な感覚が広がっていた。友人との再会や懐かしい思い出が、彼に幸せをもたらしていた。

 アイスクリーム店に到着し、彼らは好きなフレーバーを選ぶ。美咲はバニラとチョコレートのミックス、悠斗は抹茶を選んだ。二人は外のテーブルに座り、アイスクリームを頬張りながら、さらなる思い出を語り合う。

「そういえば、私たちが高校生の時にやった文化祭の劇、最高だったよね。」

「うん、あの時の役割分担がちょうどよかった。お前の演技、めちゃくちゃ面白かったし。」

「私だけじゃなくて、みんなが頑張ったからこその成功だよね。」

 アイスクリームの甘さと一緒に、青春の思い出が蘇る。悠斗は心が温かくなるのを感じながら、美咲の笑顔を見つめた。彼女も同じように、思い出を大切にしているのだろう。

 その日、日が沈むころ、二人はお互いの未来についても語り始めた。大学や仕事、夢について話し合う中で、お互いの存在がいかに大切かを改めて認識する。これからも一緒に楽しい瞬間を共有し、支え合いながら生きていこうと心に決めた。

「ねぇ、次の11月はどうなるかな?」

「わからないけど、きっとまたこんなふうに、半袖で楽しめるかもしれないね。」

 悠斗は微笑みながら頷いた。暖かい日々が続く限り、彼らはお互いに寄り添い、素晴らしい思い出を作り続けることができるだろう。そして、季節が移り変わっても、彼らの友情と愛情は決して色あせることはないと信じていた。

 そのまま夕日が沈み、温かな光が街を包み込む中で、悠斗と美咲は未来への希望を胸に、静かな時間を過ごしていた。二人にとって、この特別な11月4日は、半袖で過ごす奇跡の日として、心に刻まれることになるだろう。






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