季節の織り糸

十一月 11月1日

十一月

11月1日、霧の立ち込める朝、街はどこか静かな雰囲気に包まれていた。まりは窓から外を眺めながら、深い息をつく。吾亦紅（われもこう）の紅い花が道端に咲き始め、秋の終わりを告げている。空は灰色の雲に覆われ、まるで冬の到来を予感させるようだった。

今日は、新たな月の始まり。彼女は心を整えるために散歩に出かけることにした。薄曇りの空の下、月の光がかすかに照らし出す道を進む。秋の舞茸が食卓に並ぶ日も近い。彼女の楽しみは、この季節の食材を使った料理を作ることだ。

道すがら、柚の木が目に留まった。柚の香りは、彼女の心をほんのり温かくする。小さな実が枝に実り、優しい黄色が明るいアクセントを加えている。子供の頃、家族で柚の実を使って柚子茶を作ったことを思い出し、自然と笑みがこぼれる。

「月がきれいだね」と、彼女は思わず呟いた。月明かりに照らされた葉が、優しく揺れている。小春日和の暖かさは、冷たい風の中にも少しだけ残っているようだ。秋土用の頃、彼女は毎年、この季節に特別な思いを馳せていた。

進んで行くと、木の実が散らばっているのを見つけた。地面に落ちた新松子が、秋の収穫を象徴している。彼女はそれを手に取り、何か特別な思いを込めて眺めた。自然の恵みは、毎年変わらず彼女に微笑みかけてくれる。

道の先に鴨が泳ぐ池が見えた。水面に映る彼女の姿と、泳ぐ鴨たちの平和な様子に心が和む。彼女は、その光景に癒されながら、自然と一体になっている気持ちを抱いた。

菊人形が近くの公園に飾られていると聞いた彼女は、行ってみることにした。菊は秋の花の代表格であり、色とりどりの花々が愛らしく並ぶ様子は、毎年の楽しみだった。公園に着くと、すでに多くの人々が訪れており、賑わいを見せていた。彼女はその中に混ざり、菊の美しさに目を奪われた。

沢桔梗の青い花も、彼女の目を引いた。紫色の花びらが、周囲の色と見事に調和している。その姿に、自然の美しさとともに、生命の神秘を感じることができた。彼女は思わずその花に手を伸ばし、花びらに触れた。

しばらくすると、彼女は蔦が絡まる古い木に目を向けた。枯れた蔦が、寂しげに木に寄り添っている様子は、秋の終わりを象徴しているように思えた。それは、過ぎ去った日々の思い出を呼び起こす。彼女は、自分の人生もまた、こうした自然のサイクルと同じように続いていくのだと感じた。

「釣瓶落し」の言葉を思い出す。日は短くなり、物事が終わりに近づいていることを示す。しかし、彼女はそれを恐れず、むしろ受け入れることを決意した。山は、冬の準備を始めている。枯れた葉が舞い、冬の訪れが近づいている。

「山粧う」という言葉が頭をよぎる。自然が自身を装う様子は、彼女の心に新たな希望を与える。彼女は立ち上がり、深呼吸をした。冷たい空気が肺を満たし、心が浄化されていくのを感じる。

11月は、別れと出会いが交錯する月。彼女は新たな始まりを迎える準備をしながら、ゆっくりと歩き出した。冬が訪れる前に、彼女は自分自身を再発見し、未来へと進む力を得るのだ。自然と共に生き、彼女の心の中に温かい光を灯す。


11月1日

十一月

霧

吾亦紅

月

舞　茸

柚

月

小　春

秋土用

木の実

鴨

新松子

菊人形

十一月

沢桔梗

蔦

月

釣瓶落し

枯　蔦

山粧う