季節の織り糸

春秋花壇

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月見月の贈り物

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月見月の贈り物

晩秋のある夜、霧が立ち込めた山間の小さな村では、月が静かにその姿を現していた。空は深い紺色に染まり、月光が霧を透かして淡い光を放っている。村人たちはこの季節を「月見月」と呼び、豊穣を祝う祭りの準備を進めていた。

この村の中心には、古くからの伝説が残る大きな栗の木がそびえ立っている。その木の実が豊作の年には、村人たちは豊穣と幸福を祝うため、特別な祭りを催すのだった。今年も栗の実がたわわに実り、村人たちの期待は高まっていた。

主人公の美咲は、この村に住む若い女性だ。彼女は、毎年この祭りを楽しみにしている。自宅の裏庭では、色とりどりの木の実や菊の花が咲き誇り、松ぼくりが落ちていた。美咲はそれらを集めて、祭りの準備を進めることにした。彼女は、栗を使ったお菓子を作ることが得意で、毎年村人たちに喜ばれていた。

「今日は、栗の実を使ったお菓子を作ろう。」美咲は、収穫した栗を手に取り、にっこりと笑った。

晩秋の爽やかな風が彼女の髪を撫で、木々が色づく様子を見て、心が弾む。彼女は近くの山へ行き、栗の実をもっと集めることにした。足元には、紅葉した葉がカサカサと音を立て、歩くたびに心地よい響きを奏でる。霧が深く立ち込めているため、周囲の景色が幻想的に見えた。

山を登り、栗の木の下に着くと、豊作の証として多くの実が落ちているのを見つけた。美咲は嬉しそうに実を拾い、バスケットに入れていく。しばらくすると、彼女の目に入ったのは、色変わりしない松の木の姿だった。松は、常緑であることを忘れずに、変わらぬ姿で村を見守っている。

「松も素敵ね。いつもここにいてくれるから安心する。」美咲は、その松に向かって微笑んだ。

村に帰る途中、美咲は道端に落ちている紫式部の実を見つけた。彼女はその実を手に取り、宝石のように輝く色合いに感動する。「これも祭りの飾りに使えるかもしれない。」彼女は小さな計画を立て、ますます気持ちが高揚した。

家に戻り、早速栗の実を煮て、甘い香りが広がる。美咲は、飾り付けに使う木の実や菊、かぼす、酢橘なども用意した。祭りの前日、彼女は村人たちと共に、祭壇を作り上げることになっていた。

その晩、美咲は庭で一人、星空を見上げていた。月の光が優しく彼女を包み込み、心の奥に温かさを感じる。「明日はきっと素晴らしい日になるわ。」美咲は小さく呟いた。

翌日、村は祭りの準備に賑わっていた。各家から甘い香りが漂い、笑い声が響く。美咲も自分の作ったお菓子を持参し、友人たちと共に祭りを楽しむことにした。村人たちは、栗を囲んで踊り、笑い、感謝の気持ちを込めて祝った。

夜が更け、月が高く昇ると、村人たちは祭壇に集まり、祈りを捧げる。美咲は、心からの感謝の気持ちを込めて祈った。「この村がこれからも豊かでありますように。」

祭りが終わる頃、美咲は村の友人たちと一緒に栗を使ったお菓子を楽しんでいた。「来年もまた、この栗の木が実をつけてくれますように!」友人の一人が言うと、皆は笑い合った。

「そして、私たちも変わらず、この場所で集まれますように。」美咲は心からそう願い、温かな友情に包まれた。この晩秋の月見月、村の人々は共に笑い合い、温かい思い出を作ったのであった。


10月29日





木の実

爽やか

晩 秋





松ぼくり

紅 葉

酢 橘

かぼす

稲 舟

色変えぬ松

松 毬

稲 車

紫式部の実

からすみ

月見月
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