季節の織り糸

馬市 10月28日

馬市

10月28日、霧が深く立ち込める朝。冷たい空気が頬を刺すが、気持ちは爽やかだった。色鳥が飛び交い、木の実があちこちに落ちている。秋の訪れが、自然の中に確実に根付いていることを感じる。

町の広場では、年に一度の馬市が開かれる日だ。人々の活気が広場を包み、様々な色の旗が風になびいている。馬の鳴き声と人々の声が入り交じり、まるで秋の交響曲のようだ。

「おい、あれが新しい品種の柚だ！」友人の声に振り向くと、彼が指差す先に、立派な柚の木があった。冬支度をしっかりとするために、今がその収穫時期なのだ。柚の香りが広がり、心を癒してくれる。

馬市は、ただの市ではない。地元の人々にとって、秋の収穫を祝う重要な行事だ。今年は特に豊作だったため、特産品も豊富に並んでいる。金柑や串柿、そしてひょんの実が、色とりどりのバスケットに盛られていた。

「ほら、あれを見て！」また友人が叫ぶ。馬たちが連れられて、広場の真ん中に集められている。連雀のように、馬たちが気持ちよく草を食んでいる。人々はその姿に笑みを浮かべ、賑やかに話し合いを始めた。

俺たちも馬市を楽しみに来た一人だ。近づいていくと、馬たちの目が俺たちを見つめ返してくる。その大きな瞳に、どこか懐かしさを感じた。子供の頃、祖父と一緒に馬を見に来た記憶が蘇る。

「今日はどの馬が一番人気かな？」俺は友人に尋ねる。彼は目を細めて、周囲を見渡す。「あの白い馬、すごく大きいね。きっと人気が出るよ。」友人の指差す先には、立派な白馬がいた。人々がその美しさに魅了され、群がっている。

「見てみよう！」俺たちはその白馬の元へ向かった。近づくと、馬は優雅に立ち上がり、気品を感じさせる。その背中に手を触れると、温かい感触が心に染みた。馬との触れ合いが、何か特別な思い出を蘇らせてくれる。

「どうして馬がこんなに素敵なんだろう？」俺は思わず声に出してしまった。友人も同意するように頷く。「人間の友達みたいだからじゃない？　助け合い、共に生きる存在だし。」

その言葉に深く頷く。馬は昔から人々と共に歩んできた動物だ。共に旅をし、戦い、そして豊かな自然の中で過ごす。馬の力強さや優雅さは、人間の心に深い影響を与える。

一通り馬市を楽しんだ後、俺たちは地元の特産品を買うことにした。柚の香りが漂う中、金柑や串柿を手に取る。「これ、秋の味覚を楽しむには最高だね。」友人が嬉しそうに言う。

「特に串柿は、昔からの伝統だもんね。」俺は手にした串柿を眺めながら、思い出を語り始める。「祖母が作った串柿、甘くて美味しかったな。冬になると、毎年この時期を楽しみにしていたよ。」

「懐かしいなあ。」友人も笑いながら、思い出に浸る。あの頃の無邪気さや笑顔が、今も心に残っている。過ぎ去った時間が、今でも俺たちを結びつけているのだ。

帰る途中、霧がさらに深くなり、幻想的な風景が広がった。町の中を歩くと、ふと見上げた空には色鳥が飛んでいる。秋の訪れを感じさせる光景に、自然の美しさを再確認する。

「また来年の馬市も楽しみだね。」友人が言う。「今度は、家族も連れてこよう！」彼の言葉に、心が温かくなった。人々と自然、そして馬との繋がりは、これからもずっと続いていくのだろう。

そんな思いを胸に抱きながら、秋の夕暮れに包まれた町を後にした。冬支度が始まる中で、心には暖かな思い出が残っている。この馬市での一日が、俺たちにとっての宝物となった。

完


10月28日

色　鳥

霧

木の実

爽やか

ひょんの実

柚

冬支度

連　雀

秋

釣瓶落し

金　柑

串　柿

まるめろ

冬支度

茸　狩

種　採

秋

馬　市