季節の織り糸

十三夜

十三夜

10月18日、秋晴れの空の下、拓海は静かな森の中を歩いていた。目の前には、十三夜の月が高く輝いていた。赤のままの月明かりは、森の緑を幻想的に照らし出し、彼の心を落ち着かせた。時折、風が葉を揺らし、鵙の贄が優雅に舞う様子を眺めながら、彼はこの美しい秋の夜に感謝していた。

「今日は月がとても美しいな。」彼は心の中でつぶやいた。

彼が訪れた森には、竜胆や萩、曼珠沙華といった秋の花々が咲き誇り、色とりどりの風景を作り出していた。これらの花は、秋の深まりを感じさせる美しい存在だった。彼はその花々を目にするたびに、日々の忙しさを忘れさせてくれるように思えた。

歩きながら、拓海は灯火親しの雰囲気を感じていた。家に帰る途中、木瓜の実がまだ実をつけているのを見かけた。その鮮やかな赤色は、秋の温かさを思い出させる。

「秋湿りが感じられるな。」彼はふと思った。湿った空気は、心を柔らかくしてくれる。いつもは忙しい日常に追われている彼だが、今夜は特別な時間だった。

森を抜けると、拓海は夷講の声が聞こえてきた。地元の人々が集まり、伝統行事を行っているのだろう。秋の夜に囲まれた暖かい雰囲気が、彼を惹きつけた。彼はその場に足を運ぶことにした。

「こんばんは、拓海君！」と声をかけてくれたのは、幼なじみの由紀だった。彼女もこの場所に来ていたのだ。彼女の姿を見て、拓海の心は一層温かくなった。

「由紀さん、こんなところで会うなんて珍しいね。」

「うん、みんなで秋の味覚を楽しんでいるの。君も参加しない？」由紀は楽しそうに笑った。

彼は頷き、二人で会場に加わった。そこでは、石榴や晩菊が飾られ、さまざまな料理が並べられていた。人々はその場を囲み、笑顔を交わしている。拓海はその温かさに心が安らぐのを感じた。

「みんなで食べる秋の味覚は最高だよ。」由紀は満面の笑みを浮かべた。「これを見て、拓海君も一緒に楽しもう！」

彼女が指さしたのは、色とりどりの料理たちだった。拓海は一口ずつ味わい、旬の美味しさを噛み締めた。笑い声が響く中で、彼は由紀と共に心温まる時間を過ごしていた。

「十三夜の月を見上げながら、これからもこんな風に過ごしていけたらいいな。」由紀が言った。

「うん、ぜひそうしよう。」拓海は彼女の手を優しく握り、月の明かりを見上げた。秋の夜空に浮かぶ十三夜の月は、彼らの心に特別な思い出を刻んでいく。

その瞬間、拓海はこの美しい季節を共に過ごせる幸せを実感した。彼の心は、秋の色に染まっていった。


10月18日

十三夜

赤のまま

月

威し銃

秋　晴

鵙の贄

竜　胆

萩

芒

曼珠沙華

灯火親し

木瓜の実

秋湿り

夷　講

晩　菊

石　榴

芒

秋

十月桜