季節の織り糸

秋の風 10月10日

秋の風

10月の初め、心地よい秋の風が柘榴の木々を揺らしていた。美咲は、街を歩きながら、金木犀の甘い香りに包まれた。香りは、子供の頃の思い出を呼び起こす。彼女の実家の庭には、たくさんの金木犀が植えられていた。秋になると、毎年その香りに心が和んだものだ。

「運動会、久しぶりにやるなあ。」彼女は、隣を歩く友人に言った。運動会は小学校の頃からの伝統行事だが、大人になると忙しさに追われ、いつの間にか遠ざかっていた。体育の日を前に、何年ぶりかの運動会の開催に、少しわくわくしていた。

草の絮が風に舞い上がり、ふわりと鼻先をかすめる。秋の訪れを感じさせる風景だ。彼岸花が赤く彩る道端を歩きながら、美咲は心に少しの不安を抱えていた。彼女の中にある「大人としての責任」と「子供のような自由」の間で、揺れ動く心があるのだ。

「もうすぐ、金木犀も咲き始めるし、いい季節だよね。」友人の言葉に、美咲は微笑んだ。

その瞬間、秋風が吹き抜け、彼女の髪をさらわせた。身に沁む冷たさが、彼女の心を引き締めた。ふと、何かを思い出し、彼女は立ち止まった。「運動会では、何か特別なことをしようと思う？」

「私たちも何か、やりたいことをやってみるのはどうかな？」友人の言葉に、思わず頷いた。

その夜、彼女はふと、自分が子供の頃に作った秋の装飾品を思い出した。生姜の香りが漂う温かい料理を作りながら、家族で楽しく過ごした思い出が蘇った。秋海棠の花を摘んで、リースを作ったこともあった。あの頃の無邪気さを、もう一度取り戻せたらいいのに。

翌日、運動会の日がやってきた。町内の公園では、子供たちが楽しそうに遊ぶ声が響き渡っていた。美咲は、自分が企画したブースの準備に追われていた。苦瓜の料理や、秋の雪をイメージしたデザートを作るため、彼女は一生懸命に動いた。

「これ、すごく美味しい！」と友人が言ってくれた。その言葉に、彼女の心はほっとした。運動会の準備は、すべてが思い通りに進んでいるわけではなかったが、参加者たちの笑顔を見ると、全ての苦労が報われる瞬間だった。

秋海棠の花々が周囲を華やかに飾り、心が明るくなる。断腸花とも呼ばれる彼岸花の赤が、鮮やかに映える。この日は、ただの運動会ではなく、地域の人々が一堂に集まる大切なイベントなのだ。

「これ、夕化粧のような色合いだね。」友人が言うと、美咲は頷いた。秋の夕暮れ時、空がオレンジに染まる様子を思い出す。その美しさは、何度見ても心を奪われる。

運動会が終わり、みんなが帰る頃、美咲は一人、空を見上げた。秋の夜空には、星が瞬いている。「これからも、こうやってみんなで集まって楽しめる時間を作りたいな。」そう思いながら、彼女は深い満足感に包まれた。

次の日、彼女はまた街に出た。秋の風は、彼女を新しい冒険へと誘うようだった。菩提子の葉が揺れ、温かい光が彼女の心を包み込む。「何か新しいことを始めたい。」そう感じた美咲は、次の一歩を踏み出す準備を整えた。


10月10日

柘　榴

金木犀

草の絮

秋　風

身に沁む

芒

体育の日

彼岸花

生　姜

秋の雪

金木犀

尾花蛸

棗の実

運動会

苦　瓜

秋海棠　

断腸花　

菩提子

夕化粧