季節の織り糸

春秋花壇

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秋の軌跡

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秋の軌跡

10月9日、金風が街を抜け、冷たい空気が頬をなでる朝。椋鳥(むくどり)の群れが空を裂くように飛び交い、秋の深まりを告げている。いつもの公園では、運動会が開かれ、子どもたちの笑い声が響きわたる。赤や黄色に染まった芒(すすき)が風に揺れ、まるで秋の舞台装置のように、季節の移り変わりを静かに描いている。

「身に入む」―この言葉が、秋の冷気が心にまでしみわたる感覚をぴったりと表現していると感じる。秋はただ冷たいだけではなく、どこか哀愁を伴っていて、心の奥底まで静かに届く。それが、今日の金風の冷たさだ。

林檎(りんご)の木の下を歩きながら、足元の露がきらめいているのが見える。冷えた空気の中、林檎の甘い香りが微かに漂い、秋の恵みを感じさせる。遠くで鶸(ひわ)がさえずり、小さな命の温かさがかすかに胸に響く。

「草の実が、こんなに増えたんだな」とふと呟いた。ここ数年、忙しさにかまけて、秋の風景をゆっくり楽しむ時間もなかった。だが今年は違う。足を止め、草の実が光に照らされて輝く姿を見つめることができる。かつては、見過ごしていたものが、今は心にしみわたる。

ふと、公園の向こうに大きな美術展のポスターが目に入る。「秋の彩り」と銘打たれたその展示は、椎の実や破芭蕉(やればしょう)など、秋の自然を題材にした作品が多く展示されているらしい。思わず立ち寄ってみたくなった。

秋の木々が描かれた絵画の前で、思い出がよみがえる。子どもの頃、運動会で走り回った記憶、鵯(ひよどり)の鳴き声を聞きながら家路を急いだ夕暮れ、そして、甘干(かんかん)という干し柿をかじりながら、祖父母と過ごしたひととき。秋の風景は、過去と現在を繋ぐ糸のように、記憶を呼び起こす。

その時、ふいに目の前を猪(いのしし)が駆け抜けた。都会の中に現れることなどあり得ないのだが、まるで秋の精霊が化けたかのように、その姿は消えていった。現実とは思えないほどの一瞬だったが、秋の神秘がふと顔を見せたかのようだった。

「鼠花火が終わる頃には、また違う景色が見られるのかもしれない」

美術展を出て、再び公園の方へと歩き出す。空には花鶏(あとり)が旋回し、まるで秋の終わりを予感させるかのようだ。秋霖が少しずつ街を覆い、彼岸花の赤が街角に映えている。季節はゆっくりと、しかし確実に移り変わっていく。

夜が訪れ、空は深い藍色に染まる。秋の夜長を楽しむように、ベッドの脇に積んだ本を取り出し、ひとつ、またひとつとページをめくる。外の雨音が、静かに耳に入ってくる。金風と共に吹き抜けた秋の日は、やがて記憶の中に静かに溶けていく。

今日が過ぎ、明日になれば、また新たな風景が待っている。


10月9日

椋鳥

金風

身に入む



身にしむ

林檎







美術展

椎の実

甘干

鼠花火

運動会



草の実

花鶏

破芭蕉
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