季節の織り糸

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秋の宿 10月8日

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秋の宿

10月8日、秋が深まるこの時期、空は青く高く、蘆刈の穂が風に揺れている。朝の光が柔らかく差し込み、温かい陽射しが体を包み込む。私は、早起きして山へ出かけることにした。秋風が肌に心地よく、歩くたびに風がささやくようだ。

山道を歩いていると、周囲には芒が静かに揺れている。秋の風が吹くと、穂先がきらきらと光り、まるで大自然が私を迎えているように感じる。頭上には、いわし雲が広がり、青空とのコントラストが美しい。日差しを浴びながら、私は自然に身を委ねていく。

少し歩くと、道端に破芭蕉の葉が落ちているのを見つけた。秋の風が吹くと、破れた葉がさらにそよぎ、まるで秋の日の旋律を奏でているようだ。心が安らぎ、私は自然の中でのひとときを楽しむ。

歩いていると、鹿の群れに出会った。彼らは静かに草を食んでいて、私の気配に気づくこともない。そんな彼らを見つめながら、私は自然の中での共存を感じる。彼らの動きは優雅で、まるでこの秋の日を楽しんでいるかのようだった。

その後、道を進むにつれて、秋の宿を目指す。ここは毎年、秋になると訪れる特別な場所だ。宿の周りには、きぬかつぎの花が咲き誇り、甘い香りが漂っている。宿に着くと、心がほっとする。この場所で過ごす秋の日々は、私にとってかけがえのないものだ。

宿の主人は、いつも温かく迎えてくれる。彼は昔からの友人で、私たちはこの宿で過ごす時間を心待ちにしている。「今日は寒露だね。いい秋の風が吹いてる」と主人が言うと、私は頷いた。確かに、少し肌寒さを感じるが、その中に秋の気配が濃厚に漂っている。

宿の庭には、薄荷の花が咲いている。その香りが、私を昔の思い出へと誘う。子どもの頃、この宿で遊んだ記憶がよみがえり、心が温かくなる。私は薄荷の花を手に取り、その香りを楽しむ。思い出の中で、私の心が豊かに広がっていくのを感じる。

夜になり、宿の庭に焚き火がともされ、周りには秋の星空が広がった。星々がきらめき、宇宙の中での小さな存在として、私は自分を見つめ直すことができた。主人と共に秋の味覚を楽しむ。特に、奈良の栗と鹿肉の料理が素晴らしい。私たちは食事をしながら、昔の話や夢を語り合う。笑い声が夜空に響き渡る。

「この秋が終わると、また次の季節が来るね」と主人が言った。その言葉に、私はふと考えさせられた。秋は刹那的でありながら、深い感情を呼び起こす季節だ。次の季節が来る前に、この瞬間を大切にしたいと思う。

翌朝、宿の窓から昇る太陽を眺める。秋の光が差し込み、部屋が温かくなる。私は、昨日の思い出を胸に、宿を後にすることに決めた。自然と共に過ごしたこの時間が、私の心に強く残っている。歩き始めると、杖をついていたが、心は軽やかだった。これからも、この場所に戻ってこようと心に誓う。

帰り道、道端に咲く葛の花を見つけた。美しい紫色が秋の景色に溶け込んでいる。私はその花を見つめ、自然が与えてくれる力を感じる。道を歩くたびに、心が豊かになっていくのがわかる。秋はただの季節ではなく、私の心を再生させる魔法の時期なのだ。

秋の日の光が少しずつ柔らかくなり、自然との調和を感じながら、私は歩き続けた。この瞬間が永遠に続くように願いながら、また来る秋を楽しみに、私は山を後にした。


10月8日 俳句季語

蘆刈

秋風

身に入む



破芭蕉

秋の日

きぬかつぎ

鹿

たまのお

秋の空

秋の宿

寒露

敗蓮

薄荷の花



いわし雲



葛の花 
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