季節の織り糸

春秋花壇

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秋の足音 10月4日

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秋の足音

秋風が吹き抜ける中、彼岸花が鮮やかな赤色を誇っていた。田んぼのあちこちに立ち並ぶ稲架(はざ)に、穂を実らせた稲がゆらりと揺れる。空には鰯雲が広がり、秋の日差しがやさしく照らしている。私は、父の作業を手伝うため、田舎の実家に帰ってきた。

「今日は菊の世話をしようか。」父が言った。秋の訪れと共に、菊の花も咲き始める。手入れを怠ると、せっかくの花がしおれてしまう。私は父と一緒に菊畑へ向かった。

「見てみろ、あの蒲の穂絮(ほぐそ)が風に舞っている。」父が指差す先には、長い茎を持つ蒲の穂が揺れていた。柔らかい絹のように見えるその穂が、秋の陽射しを浴びて光を反射している。私はその美しさに目を奪われた。

菊の世話を終えると、私たちは少し休むことにした。朝寒の中、私たちは障子を洗うことにした。古びた障子は、秋の湿気により曇ってしまっている。父と私が協力して、障子を丁寧に拭き上げる。障子越しに差し込む月明かりが、部屋を優しく照らす。

「そぞろ寒(そぞろざむ)という言葉があるだろう?秋の夜は寒いのに、心はどこか暖かい。そんな感覚を感じるんだ。」父は、温かいお茶を飲みながら言った。

「うん、わかる気がする。秋は不思議な季節だね。」私もお茶を啜りながら答えた。

その後、父は庭で竹を伐る作業に取り掛かることにした。竹は、庭の中で邪魔になっていたが、父にとっては必要な資源でもある。私は彼の傍らで見守りながら、竹を伐る音に耳を傾けた。

「昔、こうして竹を使って色々なものを作ったものだ。特に子供の頃は、竹で笛を作ったりしたな。」父は懐かしそうに語った。

「笛?聴いてみたかったな。」私は少し寂しさを感じた。昔の思い出を父が大切にしていることが、何だか愛おしかった。

その時、遠くから萩刈(はぎかり)の声が聞こえてきた。秋の終わりが近づくと、萩の花も一緒に刈り取られていく。村の子供たちが楽しそうに声を上げている。彼らは秋の収穫を手伝うのだろう。

「今の子供たちは、どんな思い出を作っているのかな。」私はふと思った。田舎の風景や、季節の移り変わりが彼らの心にどのように刻まれているのか、興味が湧いた。

「大事なのは、その時々の思い出を大切にすることだ。記憶は不思議なもので、時間と共に色あせていくが、それでも心の中に残る。」父の言葉が、秋の日差しの中で温かさを帯びて響く。

作業を終え、私たちは夕食の準備を始めた。田舎の台所には、旬の食材が揃っている。自家製の野菜や、近所で採れた新鮮な魚が並び、母が心を込めて作る料理の匂いが漂ってくる。

「お金持ちになりたいと思ったことはあるか?」父が急に尋ねた。私は少し考えた。「うーん、そんなには。お金より、こういう穏やかな日々が大切だと思う。」

父は微笑んだ。「そうだな、秋の空は広く、心を豊かにしてくれる。こうして過ごす時間が、何よりの贅沢だよ。」その言葉が、心にしみた。

秋の風が再び吹き、私たちはその瞬間の美しさを静かに感じ取った。村の人々や自然との繋がりを大切にしながら、心豊かに暮らすことの喜びを再認識した。私たちの小さな物語は、これからも秋の空の下で続いていくのだろう。


10月4日俳句季語



秋風

彼岸花



鰯雲

稲架



蒲の穂絮

秋の日

朝寒

つづれさせ



萩刈

障子洗ふ

月明

そぞろ寒



竹伐る
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