季節の織り糸

春秋花壇

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季節の織り糸 9月21日

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「季節の織り糸」

9月21日、季節は秋へと移り変わりつつある。日中はまだ残暑が残るが、夜になるとひんやりとした風が肌に心地よく、秋の訪れを告げている。私はベランダから見える庭を眺めながら、いつものように深く息を吸い込んだ。

庭には赤や黄色の花が咲き乱れているが、少しずつ色あせてきているのがわかる。夏の終わりを告げるこの時期、庭の草木たちは静かにその役目を終え、次の季節へと向かう準備をしているのだ。

そんな庭を眺めながら、私はいつも思い出すことがある。ちょうどこの季節、9月21日——あの日も風が少し冷たくなり始めた頃だった。

10年前の今日、私は大切な人を失った。夫の誠一だ。彼との生活は、ちょうどこの庭のように、季節ごとに彩りを変えていった。春には一緒に庭に花を植え、夏には子どもたちとバーベキューをし、秋になると落ち葉を掃除しながら温かい飲み物を片手に過ごした。冬は寒い夜、ストーブの前で一緒に本を読む時間が何よりの幸せだった。

私たちの生活は、季節の織り糸が交わり、色とりどりの模様を作り出していた。しかし、誠一が突然病に倒れ、その糸が途切れるように彼は静かにこの世を去った。

誠一を失ってからの数年間、私はその糸をどうやって織り直せばいいのか、全く分からなくなっていた。彼がいなくなった生活は、まるで色を失った布のように感じられた。毎日が淡々と過ぎ、季節の変化すらも無意味に思えた。

だが、ある日ふと気づいた。庭の花たちは、どんなに辛いことがあっても、季節ごとに必ず咲き誇る。そして、彼らが作り出す色とりどりの風景は、毎年違うけれども、どれも美しい。そのことに気づいたとき、私は自分もまた、彼のいない生活の中で新しい織り糸を見つけなければならないと感じたのだ。

少しずつ、私は季節の移り変わりを再び楽しむようになった。最初は、ほんのわずかな変化だった。春には誠一が好きだったチューリップを植え、夏にはひまわりを見て、彼と過ごした日々を思い出す。秋になると、落ち葉を集めながら、彼がいてくれた温かさを感じた。

「あなたがいなくても、私はちゃんと前に進んでいるよ」

そう心の中で誠一に語りかけながら、私は少しずつ、自分自身の人生を織り直していった。

そして今年の9月21日、私はまたベランダに出て、庭を眺めている。あの日から10年が経ち、私はようやく新しい生活のリズムを手に入れた。子どもたちはすでに独立し、今は一人で過ごす時間が多いが、寂しさよりも穏やかさを感じることが増えた。

ふと、風に揺れる草花を見つめながら、誠一のことを思い出す。あの頃は、毎日が忙しくて、ただ一緒に過ごすことが当たり前だった。しかし、今となっては、彼と過ごした何気ない瞬間が宝物のように感じられる。

「今、何をしているのかな……」

彼がいない現実はもう受け入れたはずなのに、こうして秋の風を感じるたび、心のどこかで彼の存在を探してしまう。

そんな時、私は決まって庭の花に目を向ける。誠一が大好きだった秋の花、コスモスが今年も美しく咲いている。その薄紅色の花びらが風に揺れる様子を見ていると、自然と微笑みがこぼれる。

——季節は、繰り返しやってくる。

誠一がいなくても、私は一人で新しい季節を迎え、また新しい模様を織り上げていく。それは、私自身の人生を織り直す過程でもあり、彼と過ごした日々を大切に心に刻みながら、新しい未来を作り出す作業でもあるのだ。

時折、彼がいた頃の生活を懐かしむことはあるが、もう悲しみは少ない。彼の記憶が私を支えてくれているのだから。

夕暮れが近づき、秋の風がさらに冷たく感じられる。私は部屋に戻り、温かい紅茶を淹れて一息つく。窓の外では、コスモスが揺れ続けている。

「誠一、今日もありがとう」

心の中でそうつぶやきながら、私は彼が織ってくれた思い出の糸を、これからも自分の人生に織り込んでいく決意を新たにする。

秋が深まる9月21日、季節はまた一歩、次の段階へと進んでいく。私もまた、彼と共に歩んだ時間を胸に、新しい季節の織り糸を紡ぎ続ける。

風は静かに、そして穏やかに庭を撫で、私の心にも優しく届いてくる。
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