季節の織り糸

春秋花壇

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夏から秋へ、移り変わる季節の物語

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夏から秋へ、移り変わる季節の物語

まだ暑さが残る夏の終わり、太陽が沈む夕暮れ時、遼介はふと浜辺へ足を運んだ。空には大きな夏の雲が広がり、その向こうにうっすらと秋の気配が漂っていた。波の音が心地よく響き、遼介はその音に耳を傾けながらゆっくりと歩いていく。

砂浜の端には小さな釣り船が一艘、静かに揺れていた。その傍らには、遼介の祖父がかつて使っていた古びた釣り竿が置かれている。遼介はその竿を手に取り、海に向かって投げ入れた。狙うは太刀魚だ。太刀魚は、夏から秋にかけての季節の変わり目に、最も美味しいとされる魚だ。

海面が揺れるのをじっと見つめていると、ふいに風が涼しくなった。その風が、夏の名残を吹き飛ばし、秋の訪れを知らせているように感じた。

「涼しさが増してきたな」と、遼介は一人呟いた。

ふと視線を上げると、ヨットが一艘、遠くの水平線を滑るように進んでいた。その姿は、まるで夏の最後を告げるかのように、静かに海を横切っていく。遼介はその光景に心を奪われ、しばらくの間、見入っていた。

その帰り道、遼介は庭に立ち寄った。庭には、祖母が丹精込めて育てたさまざまな植物が植えられている。秋の蝶がふわりと飛び回り、茗荷の花がひっそりと咲いていた。祖母がよく話してくれた、「茗荷の花を見ると秋が来たと感じる」という言葉を思い出し、遼介は少し微笑んだ。

そして、庭の片隅には、貴船菊が小さく咲いていた。その純白の花びらは、秋の静かな美しさを感じさせる。遼介はその花を見つめながら、幼い頃に祖母がこの花の名前を教えてくれたことを思い出した。「この花が咲く頃には、もう秋なんだよ」と言っていた祖母の優しい声が、今でも耳に残っている。

次に、遼介の目に留まったのは、酔芙蓉の花だった。この花は、朝は白く、夕方には淡い紅色に変わる不思議な花だ。酔芙蓉は、夏の終わりから秋にかけて咲く。その変わりゆく色が、夏から秋への移ろいを象徴しているように感じた。

ふと庭の端に目をやると、夾竹桃の花が風に揺れていた。その傍らには、オクラの花が咲いている。遼介は、祖母が「オクラの花は夏の終わりを告げる」と話していたことを思い出した。夾竹桃の毒々しい美しさと、オクラの控えめな花が対照的で、遼介の心に深く印象を残した。

帰宅後、遼介は縁側に腰を下ろし、手元の桃を手に取った。祖父がよく、夏の終わりに桃を食べながら、これから来る秋を楽しみにしていたことを思い出す。遼介もその伝統に倣い、桃を口に運んだ。その甘さが、夏の最後の味わいとして口の中に広がる。

その時、草蜉蝣が縁側のそばで静かに羽を休めていた。その小さな命が、夏の終わりを告げるように、ゆっくりと息を引き取っていく姿に、遼介は心を打たれた。

ふと、遠くから聞こえる花火の音が耳に入った。夏の最後を飾る遠花火だ。その音は、夏の終わりと共に去っていく記憶を一つ一つ刻み込んでいくように感じられた。

夜になり、遼介は再び庭に出た。夜風が涼しくなり、空には美しい月が浮かんでいる。鶺鴒が、草むらの中で鳴き声を上げていた。その鳴き声が、秋の訪れを一層強く感じさせる。

遼介は、夏と秋が交わるこの時期が、いつも特別な意味を持っていることに気づいた。自然の移ろいと共に、人々の心もまた、少しずつ変わっていくのだ。祖父や祖母から教わったこの季節の美しさを、遼介はこれからも大切にしていこうと心に決めた。

そして、ふと見上げた夜空に、満天の星が輝いていた。その光は、まるで祖父母が見守ってくれているかのように、遼介の心に優しく語りかけていた。

この夏も、そしてこれから来る秋も、遼介にとって特別な季節になるだろう。

***

太刀魚



秋の蝶

空蝉

遠花火



秋来る

茗荷の花

ヨット

涼し

酔芙蓉

オクラ

鶺鴒

夾竹桃

貴船菊

夏の雲

草蜉蝣

涼風
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