ギリシャ神話

春秋花壇

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ビオラの誓い

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「ビオラの誓い」

古代ギリシャのある小さな村には、アメリアという少女が住んでいた。彼女は一族の中でもとりわけ心優しく、森や野原に咲く花々を心から愛していた。特に小さく控えめに咲く紫色の花に強く惹かれ、朝早くから花の世話をしては、その優雅な香りに包まれるのが日課だった。その花の名を、アメリアは「ビオラ」と呼んでいた。

ある春の日、アメリアは村の外れの森で一人の美しい青年と出会った。その青年は深い悲しみを背負ったような目をしており、誰とも交わらず森の奥へと消えていく姿が幾度も目撃されていた。村人たちは彼を「孤独の神」と呼び、恐れて近づかなかった。しかし、アメリアだけは違った。彼女は何か惹かれるものを感じ、青年に声をかける勇気を振り絞った。

「あなたは一人なのですか?何かお困りのことがあれば、どうか教えてください。」

青年は驚いた様子で彼女を見つめ、その後、微笑みを浮かべた。「私はアドニス。悲しみを分け合ってくれる者はいないが、あなたの優しさに感謝する。だが、私にはあなたに伝えるべき秘密がある。」

アメリアは青年の言葉に心を打たれ、彼の秘密を知りたいと思った。アドニスは静かに語り始めた。「私はゼウスに背いたことで罰を受け、永遠に愛を知ることができない運命にある。しかし、あなたのように美しい魂に出会ったことで、心が揺らいでいる。」その言葉に、アメリアの胸は締め付けられた。

その日から二人は何度も森で会うようになり、次第に惹かれ合っていった。しかし、彼らの愛は禁断のものであり、やがてゼウスの耳にも届いてしまった。ゼウスは怒り、アメリアにアドニスとの愛を断つよう命じたが、アメリアは拒んだ。

「私の心はもう、彼と共にあります。たとえ神の怒りに触れても、私の愛は変わりません。」

ゼウスはその強い意志に驚きながらも、彼女を罰することを決めた。「ならば、永久にその愛の形で大地に咲き続けよ」と叫び、アメリアの体は小さな花へと変わり、彼女が愛したビオラそのものとなった。

アドニスは愛する人が姿を消したことに絶望し、森中を探し回ったが、アメリアの姿を見つけることはできなかった。代わりに、森の奥で見慣れない紫色の花が一輪だけ咲いているのを見つけた。その花は、彼女が愛したビオラによく似ていた。彼は涙を流しながら花を抱きしめ、「これはアメリアの魂なのだろうか…」と呟いた。

それ以来、ビオラの花は愛する者に想いを伝える花とされ、春になると森や野原にひっそりと咲き誇るようになった。それは控えめでありながら、強い意志と愛の象徴となり、ギリシャの人々に大切にされるようになった。ビオラは、アメリアの魂が込められた花として、永遠に咲き続けている。

ビオラの花言葉

誠実
信頼
もの想い
私を想って
家庭の幸福
少女の恋
田園の喜び
ささやかな幸せ
慎み
純真








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