ギリシャ神話

花

オリーヴの約束

「オリーヴの約束」

オリンポスの山々に、ギリシャの豊かな自然を象徴する木々がそびえていた。特にアテナ神殿に隣接する古木のオリーヴは、神々からも人々からも神聖視されていた。そのオリーヴの木には、戦いと知恵を司る女神アテナの力が宿り、力強く枝を広げ、枝には小さな果実がたわわに実っていた。

このオリーヴの木が植えられたのは、遥か昔、ポセイドンとアテナがアテナイの守護神の座を争った時だった。ポセイドンは戦いの武器として海を呼び寄せ、地を割って激しい波を生み出した。対するアテナは、手に持った槍を地面に突き刺し、そこから一本のオリーヴの木を生えさせた。アテナは、人々が日々の糧とするものこそが真の力であると信じていたからだ。人々はこの実りある木に感謝し、アテナを守護神として敬った。オリーヴはただの植物ではなく、平和と知恵、そして人と神との絆を象徴するものとなった。

何世代も経た後、エレオノラという若い女性がアテナイの街に住んでいた。彼女は母を亡くし、ひとりでオリーヴの畑を守っていた。エレオノラの一家は代々オリーヴの栽培を行い、その木々の世話をすることを誇りとしていた。ある日、彼女が畑で実を収穫していると、空に雷が轟き渡り、突如として一人の見知らぬ男が現れた。彼の目には不思議な光が宿り、どこか神々しさを帯びていた。

「アテナが愛する者よ。私の名はペレグリノ、旅の神ヘルメスに仕えるものだ」と彼は告げた。彼はオリーヴを手に取り、エレオノラにそれを差し出した。「これは、アテナからのお告げだ。お前の愛と献身を見守っている。さあ、この実をすりつぶし、油を絞って灯火を灯すのだ。」

エレオノラはその夜、神殿に灯火を捧げ、アテナに祈りを捧げた。すると、夢の中でアテナが現れ、エレオノラに静かに語りかけた。「エレオノラよ、我が祝福を受けたオリーヴの木は、あなたの心のように揺るぎないもの。あなたの心がどんなに荒波にも屈しない限り、オリーヴは実り続けるだろう。これは私からの約束だ。」

エレオノラは目を覚ますと、自らの手で作った油を神殿に捧げた。それ以来、彼女のオリーヴ畑はかつてないほど豊かに実りを結び、村の人々もその実を分かち合い、生活が潤った。エレオノラの畑は、アテナの祝福を受けた場所として人々から崇拝され、オリーヴの木々は彼女の家族と村全体の象徴となっていった。

月日は流れ、エレオノラが長い人生を終える時、村人たちは彼女の墓のそばに一本のオリーヴの木を植えた。その木は、彼女が代々守り続けた畑を見下ろすようにして成長を続け、幾度の戦乱と干ばつにも屈することなく生き続けた。オリーヴは人々にとって、アテナとエレオノラの約束、そして平和の象徴としていつまでも尊ばれた。